長瀬萬請負 其の二 祈れる乙女達

真実 二

　「自尊心の高かった私が、百合子様を追いかけて、ご機嫌を取って、誰よりも一番近くにいたくて、必死だった。

　だから、私を一番愛していると言われた時は、天にも昇る気持ちだったわ。毎日が楽しくて楽しくて、お休みの日が辛くて。

　でもすぐに、周りの人に嫉妬するようになってしまったの。百合子様は、美しい少女に私の前で興味を示すのですもの。私、悔しくて悔しくて。

　そうしたら用務員が、嫌いな人間がいるなら、自分がどこかにやってあげましょう。って、言ったの。どこにやるの?　って聞いたら、貴女は知らない方が良い。って。

　いけないと思ったの。酷い目に遭わされるかもって。でも、百合子様を独り占めしたくて、とうとう誘惑に負けてしまった。

　どこに送られたかは知らなくても、いけないことだと理解しながら用務員に命じていました。警察に連れて行って下さい。全てを告白します」

　園子の頬には、赤みが少しだけ戻っていた。

「警察にはその内。今は待って欲しい。

　ところで、百合子さんから何か聞いていない?　叔母さんの話とか」

　園子は唇を強く閉じた。

「聞いているのだね?　教えて欲しい」

「今、百合子さんは行方知れずになっている。探してはいるが、まだ見つかっていないんだ。

　実を言うとね、美しい少女と親しくして君に嫉妬させていたのは、百合子さんの策略だったらしいのだよ。君に罪の意識を植え付ける為に」

「嘘よ。なぜそんなことをする必要があったの?」

「百合子さんの親友が、破産をして遊郭に売られた。その破産の原因が、富山家にあると思い込んだのだよ。

　同じ土俵で相撲を取れば、どちらかが勝ち、どちらかが負ける。その結果破産しても、誰の責任でもない。

　しかし、彼女は許せなかった。

　自分から親友を奪ったと、富山男爵を恨んだ。自分と同じように、大事な者を奪ってやろうと考えたのだろう」

　園子の目から、涙が溢れた。

「私、百合子様に騙されていたの?　本当は愛されていなかったのかしら?」

　園子にとっては、百合子の愛情の真偽の方が大事だったらしい。隼人は自分の迂闊さを反省しつつも、続けるしかなかった。

「園子さん、教えて欲しい。百合子さんは叔母さんのことをなんと言っていた?」

　涙を袖口で拭いながら、園子は徐に唇を開いた。