長瀬萬請負 其の二 祈れる乙女達

恋心 二

　その通りである。

　隼人がなるべく関わらせないようにしているのもあるが、圭は一切、宗一郎に自分の感情を伝えようとはしない。

　嫌いと言えば嫌いなのだろう。

　とにかく宗一郎は相手を慮らない。圭が話をする気が無いと言ったところで、引こうともしない。だから、話をしても無駄なのはわかっているのだろう。

　尊敬できる相手だったはずだ。友人として付き合っていけると思っていただろう。

　つまりは、宗一郎が圭の気持ちを理解できたなら、感情を抑えて友情を育んでいくなり、少しずつ距離を置いて、離れていくなりできたはずなのだ。

　今の宗一郎は自分の気持ちだけが大事で、それに答えてくれない圭が、不誠実に思えているのだろう。だから、隼人の感情をも逆撫でしてしまうのだ。

「そろそろ面倒になってきたから、この事件が解決したなら、お父上に相談しに行こうと思う」

　勇一郎が手を叩いて笑う。

「伝家の宝刀を抜く前に、一応通達はしてやれよ」

　わかった。と答えはしたが、それによって宗一郎が姿を見せなくなったなら、それはそれで腹が立つのだと、隼人は自覚していた。