長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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煙草 

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 「安原元帥の醜聞が見つからなかったから、醜聞を作り出すのは止めて、今度は事件を起こすことにしたのですか?」

「そうですわ。

 安原元帥の側に毒を仕込んだ寒天を食べさせて、廣中大将を犯人に仕立て上げるつもりでしたの」

「一つよろしいかね?」

 遠慮がちな言葉とは裏腹に、堂々とした響く声で、元帥は百合子に声を掛ける。

「どうして貴女はそのような恰好をしているのだろうか。どうやら偽物ではないようだが」

「お借りしましたの、この制服の持ち主に。

 本当は、皆が苦しみ始めたら、廣中大将の仕業だと叫ぶ予定だったのですけれど、邪魔をされてしまいました」

「持ち主は、素直に渡しましたかな?」

「おひとりでいらっしゃる時に、刺激のある液体を霧状にして、顔に掛けさせて頂きました。そうして、苦しんでいる隙に、眠くなるお薬を嗅がせて、手足を縛って」

「情けない」

 初めて、元帥は感情的な声を出した。

「大日本帝国の軍人ともあろう者が」

「隠しておりますので、助けに行かれるなら……」

「必要無い! 自力でどうにかできぬなら、そのままでいさせればよい。自業自得だ」

  確かに、軍人である以上油断したは通じない。相手が大人しそうな少女だったとしても、隙を見せてはいけないのものだろう。

「後でしっかりと説教をしておかねばならぬな。

 ところで、先ほど毒と仰ったが、簡単に手に入るものではありますまい。一体どこから、どのような毒を手に入れたのであろうか?」

 二人は戸惑うような様子を見せた。

「毒と言えば毒ですが、誰にでも手に入れられる物です」

 勇一郎が助け舟を出した。

 二人は隠すつもりはあるまい。が、毒の入手法。などと言われたなら、毒で良かったのかしら? と考え始めてしまうのは仕方がなかった。

「そんな危険な物が出回っているのかね?」

「煙草ですよ、元帥。煙草を水に漬けておけば、有毒な物質を手軽に抽出することができます。

 ただ、匂いや刺激があるので、珈琲の匂いや苦みで誤魔化そうとしたのでしょう」

「なるほど。

 しかしどうして、貴方方はあの珈琲寒天にそんな細工がなされているとご存じだったのだろうか?」

 私が。と、加奈子が口を開いた。

「睦月会にいらした長瀬さんと麻上さんを実験に利用したのです」
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