長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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富山

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 富山は正子の顔を見ると、慌てた様子で白い封筒を、頭を下げながら差し出した。

「亡くなられたのは高子さんだったと伺いました。

 今、皆さんにお香典を返して回っておいでのようですが、受け取りませんよ。高子さんの供養に使って下さいな」

 既にあちらこちらから話を聞いていたらしい正子は、先手を打つと、特別な客や祝い事に使う大食堂に入るよう、皆を促した。

「用意してたの?」

 皆が入った後でこそりと正子に問う。

「元帥からお電話を頂いたのよ。

 慌てて用意をしたから、珈琲くらいしか用意できなくて」

 正子に押し込まれて、隼人も座った。

 奥の席に男四人、入り口側に百合子、芙由子、加奈子。

「お話しの間は出ておりますわ。ごゆっくりどうぞ」

 珈琲を配ると、正子は気を利かせて出て行った。

 目の前では三人が緊張の面持ちで座っている。百合子と加奈子の顔色の悪さは、離れていてさえ分かる。それでも毅然とした態度で存在した。

「お久しぶりですな、百合子姫」

 地獄に落とされた餓鬼のような顔をくしゃりと、歪めたとしか表現できぬ様子で笑った。

「お久しぶりで……」

 緊張の為に声も出なくなって、可哀想ではあるが、庇えばいいというわけではない。百合子も加奈子も今、責められる覚悟をしているのであろうから、隼人と圭は黙っておくしかない。

「元帥から話を聞きました。

 お友達の事は、姫さんの気持ちも分からんでもないが、こちらも仕事でしたからな。悪く思わんで下さいよ」

 富山の声はまだ、力が無かった。

 どれだけ涙を流したのだろうか、高子を思ってどれほど叫んだのだろうか、ほとんど空気を吐いているだけのような声を、静かな部屋で身動ぎもせずに聞いていた。

「ただ、あの婿さんと手を組んだのは、今となっては間違いだったと考えております。

 私は小さな商店を営む実家の手伝いの為に、ろくに小学校も通っていません。貧しさを理由に、同級生に馬鹿にされたもんですよ。

 持ち前の負けん気で、寝るのも惜しんで勉強して、小さかった商店を会社にして、成功したら今度は成金と蔑まれ、社会の為にと頑張って寄付をし、貢献が認められて爵位を得ると今度は、身分の亡者と呼ばれるようになりました。

 私にとっては勲章のようなものですが、子供に取っては迷惑以外のなにものでもございますまい」
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