長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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草履 十三

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 隼人は自分の軽率さに気付き、項垂れた。

「ごめん」

「どういたしまして。

 他ではなさらない方が良いでしょうね。そういう趣味があると思われるでしょうから」

 一瞬であろうとも、疑われていたのかと、内心冷や汗をかく。

「気をつけるよ」

 心臓が、戸惑いで強く鳴る。今ならば手を当てなくとも、どこにあるかがわかるだろう。軽率な行動を反省しつつ、再び本に向かう。

 今度こそは一頁から順を追って読んだが、解剖図の頁以外は、丁寧に扱われていたように見える。あるいは持ち主に、興味を持たれていなかったのだろうか。

 気がつけば雨は上がり、台風一過の清々しい青空が広がっていた。


 六時に起き出したとたんに、なにやら張り切って飛び出して行った勇一郎が帰って来たのは、九時近くだった。やはり上機嫌で、今にも大笑いを始めそうな勢いだ。

「眞島侯爵を訪ねて来た」

 勇一郎の言葉に、飛び上がったのは圭であった。眞島侯爵といえば、圭を買おうとしていたらしい、かの、放蕩華族である。

「よく会えたな。行いの良くない人だけに、新聞記者なんて蛇蝎だかつの如く嫌っているんじゃないか?」

「その点は考えているさ。

 麻上圭一が失踪しています。って、あの帳面を持って行ってやったんだ」

 圭は、呆れたとばかりに額に手を当て、疲れたような目で、勇一郎を見ている。

「いやぁ、面白かったな。

 生家を出て以来、圭ちゃんの足取りが掴めていない。ってんで、母方の親戚が探しているんだって言ったら、あの子の父親とは親しくしていたから、力になってやりたかったけど、母親が亡くなった頃自分は東京を離れていたから。とか言い出すんだからな。

 まぁ、東京を離れていたのは調べて知ってるけど、聞かれてもないのに喋ると、言い訳がましいって分からないのかな?」

「どういうきっかけで、帳面をお見せになったのですか?」

「圭ちゃんを探しているうちに、こんな物が手に入った。名前が隣合わせて書かれているからには、よほど親しいと思って参りました。ってね。

 当然、誰が持っていたか聞かれたから、ある、食べ物屋の親父が、腹を空かせた子供に飯を食わせたら、金が無いから代わりにって置いていったんだって言っておいた」

「確かに、お腹を空かしてはいましたけれどね」

「今頃、山科に抗議の電話でもしているんじゃないのか?」 
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