殺された人形

岡倉弘毅

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告白 二

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 「これは、見事なまでの即答ですね」

 洋史の顔に、笑みが戻る。

「きっぱり言っちまうと、洋史って生き物に興味があるんだよ」

「津川さんが生き物なら、僕はなんなんだろう」

「あんたは稚児だろう? あたしの機嫌を損ねたりしたら、後が怖いよ」

 子供に対するように笑って見せると、一瞬だけ嬉しそうな表情を見せた後、また頬が膨れた。

「僕って、有紀さんの弟みたいなものなんですか?」

「なんだい? あにさんになりたいのかい?」

「茶化さないでよ。僕は有紀さんのこと、本当は……」

 有紀は大きな音を立てて、カップを小卓に置いた。

 いつにない乱暴さに、三月や洋史はもちろん、周りの知り合い、初対面の全てが目を丸くしている。

「洋史、帰るよ」

 勢い余ったとは言え、おそらく、三月にとっては一世一代の決心だったに違いない。大きな目には今まで見たことのないような、真剣な光が宿っているのが確認できた。

 意地悪で告白の邪魔をしたのではない。そこまで意地悪ではないつもりだ。では、なぜこんな乱暴な真似をしたか。自分でも理解しかねるが、怖かったのだ。

 三月が、いや、男が自分を女として見ている。その事実が怖かったのだ。

 小銭入れから代金を取り出した時、指先が震えているのに気が付いた。

(何がそんなに怖いんだ? 三月なんざまだ、子供じゃないか)

 この恐怖は決して、生娘が男に対して持つ類いの恐怖ではないと、それだけは理解できている。

「有紀さん……」

「じゃぁな。又明後日」

 振り返りもせず、店の扉を押した。

 必要以上に洋史が勘定に時間を掛けているのは、三月を宥めているからだろう。有紀は気付きながらも、先に外に出た。

 三月はまだ子供だ。どこからどう見ても。うっかりすれば女の子よりも可愛らしいほどに。

 しかし、すぐに大人になってしまう。男になってしまう。

 なぜ、こんな気持ちになるのか。有紀をネンネ扱いしたモガの友達もいた。

 それならば話は早い。初心うぶな女なら当然持ち合わせている、恥じらいと葛藤。白い椿のように、穢れなく可憐な乙女ならば、当たり前の話。

 沈丁花の気怠い香りに、有紀は一瞬だけ眩暈を覚えた。

 大丈夫。と、心のどこかで声がする。

 この花は大丈夫。

(なにが大丈夫なんだ?)
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