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待ち合わせ
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一旦下宿に戻ると、用意してあった荷物を持ち、有紀と約束しているカフェに向かった。既に有紀は到着しており、珈琲を飲みながら楽譜を読んでいた。
洋史を見つけて、笑みを見せる。それだけのことが、どうしようもなく幸せだと思った。
「待たせてごめんなさい」
「さほど待ってないよ」
楽譜を布袋に仕舞いながら、けどさ。と、小さな声。
「結構いいもんだね、待つってのは」
白い頬をほんのり赤く染める様子が可愛らしい。
髪を長く伸ばしていながら、初対面の頃の洋史は、有紀を男の子だと思い込んでいた。中性的な顔のせいもあったろうし、女にしては低い声もあっただろう。女にしては丈も高い。
もしも有紀を女の子だと気付いていたなら、再会した際声を掛けたりはしなかっただろう。
恋をすることもなく、結婚を決心することもなく。もしかしたら直通と自分を混同したまま一生を終えたかもしれない。
やはり。と、考える。やはり有紀は僕の女神なのだ。と。
席に着き、珈琲を頼むと有紀を見る。確かに、改めて見るとレストランで見た蕗子らしき女と似てはいないが、カフェに入って有紀を見つけた瞬間、ほんの一瞬だけ、蕗子に見えた。
「なんだい?」
有紀の照れたような表情に、洋史は我に戻った。
「あ、ごめんなさい。
あの、こんなこと聞いて良いのかわかりませんが、有紀の本当のお父さんは何方なのかご存知?」
太は、蕗子には姉妹がいないと言っていた。父親がいないとも。有紀との共通点は、父親の存在の無さである。
「知らないんだ。聞き辛いってのもあるが、本音を言えば興味がない」
実の母親はどうやら、有紀を手放した事を悲しんでいるらしい。しかし、父親の存在は一向に見えない。
もしかしたら有紀という娘が存在することさえ知らないのかもと考えると、真実を知る必要性はないだろう。
何より、誰よりも近い場所に、有紀を大事に思ってくれる父親がいるのだから、生きているのか死んでいるのか、自分を知っているのかいないのか分からぬ実の父親など探す必要もあるまい。
「そうですね、あんなに素敵なお父さんがいるのだから」
洋史の言葉に、有紀が嬉しそうに笑った。
洋史を見つけて、笑みを見せる。それだけのことが、どうしようもなく幸せだと思った。
「待たせてごめんなさい」
「さほど待ってないよ」
楽譜を布袋に仕舞いながら、けどさ。と、小さな声。
「結構いいもんだね、待つってのは」
白い頬をほんのり赤く染める様子が可愛らしい。
髪を長く伸ばしていながら、初対面の頃の洋史は、有紀を男の子だと思い込んでいた。中性的な顔のせいもあったろうし、女にしては低い声もあっただろう。女にしては丈も高い。
もしも有紀を女の子だと気付いていたなら、再会した際声を掛けたりはしなかっただろう。
恋をすることもなく、結婚を決心することもなく。もしかしたら直通と自分を混同したまま一生を終えたかもしれない。
やはり。と、考える。やはり有紀は僕の女神なのだ。と。
席に着き、珈琲を頼むと有紀を見る。確かに、改めて見るとレストランで見た蕗子らしき女と似てはいないが、カフェに入って有紀を見つけた瞬間、ほんの一瞬だけ、蕗子に見えた。
「なんだい?」
有紀の照れたような表情に、洋史は我に戻った。
「あ、ごめんなさい。
あの、こんなこと聞いて良いのかわかりませんが、有紀の本当のお父さんは何方なのかご存知?」
太は、蕗子には姉妹がいないと言っていた。父親がいないとも。有紀との共通点は、父親の存在の無さである。
「知らないんだ。聞き辛いってのもあるが、本音を言えば興味がない」
実の母親はどうやら、有紀を手放した事を悲しんでいるらしい。しかし、父親の存在は一向に見えない。
もしかしたら有紀という娘が存在することさえ知らないのかもと考えると、真実を知る必要性はないだろう。
何より、誰よりも近い場所に、有紀を大事に思ってくれる父親がいるのだから、生きているのか死んでいるのか、自分を知っているのかいないのか分からぬ実の父親など探す必要もあるまい。
「そうですね、あんなに素敵なお父さんがいるのだから」
洋史の言葉に、有紀が嬉しそうに笑った。
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