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後悔
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見せたのは、平助から借りた写真の一枚、有紀の物であった。女優の写真の中に混ざっていたのを、ついで。といった振りで借りて来た。
「けど、なんか似てるな。姉妹みたいだ。けど、蕗ちゃんは姉妹いないもんな。
それにこの女、女優じゃないよな。美人だけど写真撮られ慣れてない。もしかして……」
太がにやりと笑った。
「洋史の……」
敢えて返事はしなかったが、洋史の顔色は饒舌だったらしい。
「お前等女の好みまで同じかよ」
「顔を好きになったわけじゃありませんよ」
「そうか。でも、美人だよな」
「それは否定しませんが……」
「洋史も面白いな」
太はからかうように、洋史を真っ直ぐ見つめる。
「直通は面白かったのですか?」
太は、洋史も。と言った。洋史と比較する対象は、直通だろう。
「あぁ、面白い奴だったよ。だから誰からも好かれたよ。それこそ、女子供にもな」
女子供……直通の姿が、傷だらけの体が、他人を驚かせていただろうことは想像できる。しかし、直通は愛されていたのだ。誰からも……。
どうしてだろう。と思う。あんなに仲が良かったのにどうして、洋史は直通を知らないのだろう。と。
十七の年から直通が失踪するまでの三年間、近くに住んでいながら二人は一度も会わなかった。最初は何度か足を運んだが頑なに拒まれ、いつしか諦めが心を支配し、洋史は心から思い出さえも追い出そうとした。
疲れてしまったのだ。心配することに……。
どうしてあの時諦めてしまったのかと、後悔が満ちる。直通の無言の悲鳴に気付けたなら……。と。
「後悔すんなよ。直通が言ってたよ。お前と距離ができたのは自分が悪いんだって。
生きていたら、仲直りできたろうにな……」
仕方のないことなのだろう。人間は後悔を友に生きていくしかないのだ。
「直通の為に出来ることを、今はするしかありません……」
「でも、無理すんな。迂闊なことして、周りに迷惑かけることになるかもしれないなら、諦めることも必要だぜ」
理解しているが、今の洋史には諦め切れずにいた。
「けど、なんか似てるな。姉妹みたいだ。けど、蕗ちゃんは姉妹いないもんな。
それにこの女、女優じゃないよな。美人だけど写真撮られ慣れてない。もしかして……」
太がにやりと笑った。
「洋史の……」
敢えて返事はしなかったが、洋史の顔色は饒舌だったらしい。
「お前等女の好みまで同じかよ」
「顔を好きになったわけじゃありませんよ」
「そうか。でも、美人だよな」
「それは否定しませんが……」
「洋史も面白いな」
太はからかうように、洋史を真っ直ぐ見つめる。
「直通は面白かったのですか?」
太は、洋史も。と言った。洋史と比較する対象は、直通だろう。
「あぁ、面白い奴だったよ。だから誰からも好かれたよ。それこそ、女子供にもな」
女子供……直通の姿が、傷だらけの体が、他人を驚かせていただろうことは想像できる。しかし、直通は愛されていたのだ。誰からも……。
どうしてだろう。と思う。あんなに仲が良かったのにどうして、洋史は直通を知らないのだろう。と。
十七の年から直通が失踪するまでの三年間、近くに住んでいながら二人は一度も会わなかった。最初は何度か足を運んだが頑なに拒まれ、いつしか諦めが心を支配し、洋史は心から思い出さえも追い出そうとした。
疲れてしまったのだ。心配することに……。
どうしてあの時諦めてしまったのかと、後悔が満ちる。直通の無言の悲鳴に気付けたなら……。と。
「後悔すんなよ。直通が言ってたよ。お前と距離ができたのは自分が悪いんだって。
生きていたら、仲直りできたろうにな……」
仕方のないことなのだろう。人間は後悔を友に生きていくしかないのだ。
「直通の為に出来ることを、今はするしかありません……」
「でも、無理すんな。迂闊なことして、周りに迷惑かけることになるかもしれないなら、諦めることも必要だぜ」
理解しているが、今の洋史には諦め切れずにいた。
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