殺された人形

岡倉弘毅

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居心地

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 この先どう進むか分からぬ捜査を、誰も口にはしない。元々、失って悲しい相手どころか、いなくなって清々した程であるから、悲しみは誰も持ってはいない。

 しかし、誰が犯人かは分からない、容疑者になるか分からない状況だけに、気持ち穏やかではないものの、だからこそ、今は幸せに浸っていたかった。



 翌朝、有紀と共に家を出て、洋史は学校に向かった。もしかしたら刑事が現れるかも知れず、事件の様子を知る為にもサボるわけにはいかなかった。

 幸い今日は授業は午前中だけで、慌てる必要もなくカフェには行けるだろう。

 考えてみれば昨日、学校に行ったのは、偶然とはいえ運が良かった。行彦達には学校に行くと言って出ているからには、刑事から、津川洋史の居所が分からない等と知られては、全てを話さなければならなくなってしまう。

 今はまだ、何もわかっていないに等しいから、どう話せばよいのかも分からない。

 森本は今、何を考えているのだろう。

 ふと、情熱に憑かれた紳士を思い出す。女が自ら、アカだと告白しながらも諦めきれず、熱に浮かされた目を向けて、彼女のことが分かったら。と、情報の提供を乞うた。

 本当に森本は、彼女の為に全てを捨てられるのだろうか? 捨てられるのだとしたら洋史は、知り得たことを教えるべきなのだろうか?

 いっそ、知らぬ振りをして、森本に、そしてその家族に平穏な生活を送らせてあげるべきなのではないだろうかとも考える。

 誰に、何を、どう話すかで、相手の人生を変えてしまうかもしれぬ責任を、今更ながら感じていた。



 どうやら事件は学内に知られているようだった。誰も何も言わないが、誰もが余所余所しく、元々親しくない人間は、今にも指差しそうな勢いで洋史を凝視している。

 そこに、事情を知りたい学長が呼び出したものだから、噂は確信に変わったも同然だった。
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