殺された人形

岡倉弘毅

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狂気 二

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 「平助、あんた何を言ってんだい?」

「三月、お前も手伝ってくれるだろう? 生きた有紀は、お前の物にはなりはしない」

 洋史の驚愕に満ちた目が、ゆっくりと驚きを失っていった。

「永遠の美しさ……」

「そうだ。芸術家なら分かるだろう?

 お前の恋人の美しさを、永遠に失わずにいられるんだ。これ以上の喜びはあるまい。

 そら、首を絞めるなりして、息の根を止めろ。抵抗するなら俺達が押さえつけてやるから」

 洋史はその面から表情を消すと、平助に顔を向けた。

「お願いします……」

 洋史の視線は、有紀の首の辺りに注がれていた。なにを考えているのか、その表情からは分からない。

 男四人に囲まれていれば、逃げようはあるまい。覚悟を決めてしまった方が良いのかも知れないが、死後、平助の玩具にされるのは気に食わない。

 いっそ、顔に大きな傷を作ってやろうかと、凶器になり得る物を探す。

 洋燈の硝子を割るのが一番良かろうが、取りに行くまでに捕まるに違いない。

 その時有紀は、襟帯留めを思い出した。先の尖った二寸ほどの細い金属は、顔に傷を付けるくらいならできるだろう。
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