1 / 29
プロローグ
始まりはここから
しおりを挟む
「僕が恐ろしくないのか?」
「はい?」
「え?」
女性はコバルトグリーンの瞳を何度は瞬きをして、首を僅かに傾げた。拍子に一纏めにした緩くウェーブがかったベージュの髪が揺れる。
この人は何を言っているんだろう。
質問の意味が分からないといった表情で女性は男性を見つめた。
一方男性も男性で女性の反応に、嘘だろ、といった表情で鮮やか青紫の瞳を丸くして見返す。
その二人の間で一人の小柄な女性が、真っ直ぐな黒髪からのぞく赤い瞳で遠い目をしていた。
「それは……過去に何か大きな闇を抱えている訳ありのキャラクター、という流行りのものでしょうか」
「は……?」
コバルトグリーンの瞳の女性の質問に男性は口をぽかん、と開ける。先ほどまで男性は寝ていたことにより、白い髪に寝癖がついてる。それがとても間抜けに見える。
「あ、私はソフィア。貴方は?」
コバルトグリーンの瞳の女性――ソフィアは人の良さそうな笑みを浮かべて自己紹介をした。
さっきまで男性が緊迫した空気を醸し出したなんて全く気にしていない。
だが男性はソフィアの質問に、唖然としていた表情から打って変わって、勝気な笑みを携えながら手のひらをそっと胸元に添えた。
さぁ慄くがいい! と言わんばかりの自信で高らかに宣言する。
「僕の名前はゲラルド。ゲラルド・ヴァインセンだ」
一言一句、誰でも聞き取りやすいようにゆっくりと男性――ゲラルドは自己紹介をする。
ソフィアは「ゲラルド」と呟き、ハッと表情を変える。
それを見て、ゲラルドは今度こそ! ともう一度言おうとした。僕が恐ろしくないのか、と。
だがそれはまるで名案を思い付いた、といった笑顔を向けてきたソフィアによって遮られた。
「長いからルドーにしましょう。よろしく、ルドー」
手を差し伸べて握手を求めてくるソフィアにゲラルドは真顔になった。そして思う。
この女、正気なのか、と。
ゲラルドは唇をひくつかせながらも、その握手に紳士的に応じた。
現在もてる、ありったけの魔力を込めて。敵意はない。だが圧倒的な魔力に驚くだろう、という算段だ。
今度こそ! と何故こんなにも必死になっているのか分からないが、必死になってしまっているゲラルドは勝ちたいという気持ちが勝った。ちなみに勝負はしていない。
ソフィアとゲラルドの手が重なる。
「ルドー、起きてすぐで申し訳ないのだけど、暮らすところがないなら私と一緒に暮らさない? 衣食住に関して保証はする。貴方はその稀有な体質で私と協力してほしいの」
ぽんぽんと話を一人で進めるソフィアは気付いていない。表情を無くしているゲラルドに。
なぜこんなにもゲラルドが自分の目、耳を疑うような衝撃を受けているかというと理由があった。
ソフィアが仲良しよろしくで握手をしている男。それは国々を震撼させた存在であった。
ゲラルド・ヴァインセン。デルドルフ帝国国王。魔王。
それが彼の肩書きで、誰もが恐れる存在。
だが今もしっかりとゲラルドの手を握っているソフィアは、恐れのおの字もない。むしろ真剣な眼差しでゲラルドを見つめていた。
「私は魔法薬師になりたいの。そのために貴方の力が必要なの」
固まるゲラルドを気にする事なく、ソフィアはしっかりと瞳を見つめて手を握りしめて伝える。
ソフィアはソフィアで自分の願望のために必死なのだ。きっとこんなチャンスは二度とない、と。
だから相手が何か魅力に感じそうなことを列挙していった。
「魔法薬師として第一人者にソフィア・コネリーとゲラルド・ヴァインセンって名前が載るの。素敵じゃない?」
その言葉を聞いて、ゲラルドは固まっていた表情から驚愕の色に変わった。
「……は? ソフィア・コネリー? コネリー!?」
ゲラルドはソフィアのファミリーネームを聞いて、声をあげる。ソフィアはゲラルドの反応に「あぁそういえば」と、慣れたように言葉を返した。
「エルリック・コネリーの姉です。よろしくね」
僕が何をしたっていうんだ。
ふふ、と笑うソフィアにゲラルドは強く思った。後悔にも近い感情だ。
エルリック・コネリー。その名前はゲラルド・ヴァインセンと同等に有名である。
何故ならば、エルリックという男は魔王を倒したことにより勇者となったのだから。
ソフィア・コネリー。彼女は勇者の姉である。
どういういきさつでこの二人が出会ってしまったのかというと、それは数日を遡る。
「はい?」
「え?」
女性はコバルトグリーンの瞳を何度は瞬きをして、首を僅かに傾げた。拍子に一纏めにした緩くウェーブがかったベージュの髪が揺れる。
この人は何を言っているんだろう。
質問の意味が分からないといった表情で女性は男性を見つめた。
一方男性も男性で女性の反応に、嘘だろ、といった表情で鮮やか青紫の瞳を丸くして見返す。
その二人の間で一人の小柄な女性が、真っ直ぐな黒髪からのぞく赤い瞳で遠い目をしていた。
「それは……過去に何か大きな闇を抱えている訳ありのキャラクター、という流行りのものでしょうか」
「は……?」
コバルトグリーンの瞳の女性の質問に男性は口をぽかん、と開ける。先ほどまで男性は寝ていたことにより、白い髪に寝癖がついてる。それがとても間抜けに見える。
「あ、私はソフィア。貴方は?」
コバルトグリーンの瞳の女性――ソフィアは人の良さそうな笑みを浮かべて自己紹介をした。
さっきまで男性が緊迫した空気を醸し出したなんて全く気にしていない。
だが男性はソフィアの質問に、唖然としていた表情から打って変わって、勝気な笑みを携えながら手のひらをそっと胸元に添えた。
さぁ慄くがいい! と言わんばかりの自信で高らかに宣言する。
「僕の名前はゲラルド。ゲラルド・ヴァインセンだ」
一言一句、誰でも聞き取りやすいようにゆっくりと男性――ゲラルドは自己紹介をする。
ソフィアは「ゲラルド」と呟き、ハッと表情を変える。
それを見て、ゲラルドは今度こそ! ともう一度言おうとした。僕が恐ろしくないのか、と。
だがそれはまるで名案を思い付いた、といった笑顔を向けてきたソフィアによって遮られた。
「長いからルドーにしましょう。よろしく、ルドー」
手を差し伸べて握手を求めてくるソフィアにゲラルドは真顔になった。そして思う。
この女、正気なのか、と。
ゲラルドは唇をひくつかせながらも、その握手に紳士的に応じた。
現在もてる、ありったけの魔力を込めて。敵意はない。だが圧倒的な魔力に驚くだろう、という算段だ。
今度こそ! と何故こんなにも必死になっているのか分からないが、必死になってしまっているゲラルドは勝ちたいという気持ちが勝った。ちなみに勝負はしていない。
ソフィアとゲラルドの手が重なる。
「ルドー、起きてすぐで申し訳ないのだけど、暮らすところがないなら私と一緒に暮らさない? 衣食住に関して保証はする。貴方はその稀有な体質で私と協力してほしいの」
ぽんぽんと話を一人で進めるソフィアは気付いていない。表情を無くしているゲラルドに。
なぜこんなにもゲラルドが自分の目、耳を疑うような衝撃を受けているかというと理由があった。
ソフィアが仲良しよろしくで握手をしている男。それは国々を震撼させた存在であった。
ゲラルド・ヴァインセン。デルドルフ帝国国王。魔王。
それが彼の肩書きで、誰もが恐れる存在。
だが今もしっかりとゲラルドの手を握っているソフィアは、恐れのおの字もない。むしろ真剣な眼差しでゲラルドを見つめていた。
「私は魔法薬師になりたいの。そのために貴方の力が必要なの」
固まるゲラルドを気にする事なく、ソフィアはしっかりと瞳を見つめて手を握りしめて伝える。
ソフィアはソフィアで自分の願望のために必死なのだ。きっとこんなチャンスは二度とない、と。
だから相手が何か魅力に感じそうなことを列挙していった。
「魔法薬師として第一人者にソフィア・コネリーとゲラルド・ヴァインセンって名前が載るの。素敵じゃない?」
その言葉を聞いて、ゲラルドは固まっていた表情から驚愕の色に変わった。
「……は? ソフィア・コネリー? コネリー!?」
ゲラルドはソフィアのファミリーネームを聞いて、声をあげる。ソフィアはゲラルドの反応に「あぁそういえば」と、慣れたように言葉を返した。
「エルリック・コネリーの姉です。よろしくね」
僕が何をしたっていうんだ。
ふふ、と笑うソフィアにゲラルドは強く思った。後悔にも近い感情だ。
エルリック・コネリー。その名前はゲラルド・ヴァインセンと同等に有名である。
何故ならば、エルリックという男は魔王を倒したことにより勇者となったのだから。
ソフィア・コネリー。彼女は勇者の姉である。
どういういきさつでこの二人が出会ってしまったのかというと、それは数日を遡る。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。
佐藤 美奈
ファンタジー
田舎の貧しい村で育った6人の幼馴染は、都会に出て冒険者になってパーティーを組んだ。国王陛下にも多大な功績を認められ、勇者と呼ばれるにふさわしいと称えられた。
華やかな光を浴び、6人の人生は輝かしい未来だけが約束されたに思われた。そんなある日、パーティーメンバーのレベッカという女性だけが、「無能で役立たず」と言われて一方的に不当にクビを宣告されてしまう。恋愛感情は、ほんの少しあったかも。
リーダーのアルスや仲間だと思って信頼していた幼馴染たちに裏切られて、レベッカは怒りや悔しさよりもやり切れない気持ちで、胸が苦しく悲しみの声をあげて泣いた――
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる