かたつむり

みつ光男

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#3. かたつむり

【急がなくていい】

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 あの雨の日、僕の髪をなぞった
志帆の細い指先と僕の小指が繋がった。

「ねえ」

「何?」

「これから…ゆっくりと」


ー もっと原田くんのこと、好きになるね

「いいでしょ?」

「そ、そうだね…そうしてくれると…うれしい…って言うか…」


― だから原田くんも素直になりなよ、

志帆は僕にそう告げるとポンポン、と軽く肩を叩いた。

「え?」

「好きなんでしょ?」

「何が…だよ?」

「私のこと」

「あ、当たり前だ!」

「いつから?」

「…あん時だよ」

「いつ?」

「ち、駐輪場で…」

「えー?聞こえないよ」

「駐輪場で志帆ちゃん驚かせた時から…」

「時から?」

「好きになったんだよ!」

「素直でよろしい」

「あ、あぁ、よろしくな!」

志帆は何も言わず笑顔で頷いた。

「志帆ちゃんはいつから?」

「知ーらない」

「何だよ、俺には言わせといて」

「…知ってるくせに」



ー 同じだよ、原田くんと…



 そう、これからお互いを知りながら
ゆっくり歩んでいけばいい

このかたつむりのように…

例えその歩幅が少しずつでも僕たち二人なら…
きっと大丈夫だろう。

「帰ろっか」

「うん」

いつしか二人の気持ちが
同じベクトルを描き始めていたことに気付いたのは

きっとあの日・・・


あの日のどしゃ降りの駐輪場。

「心配しないで」

「え?何を?」

「キライになったり…しないから」

「わ…わかった」

「かたつむりも…」

「え?」

「好きになろっかなー?原田くんのことみたいに」

「ぜひ!」

「ふふふ」

"キミのことが好きです"

お互いそんなこといちいち口にしなくてもわかってた、

そう、わかってたはずなのに…

かたつむりに感謝だな。
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