かたつむり

みつ光男

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#3. かたつむり

【たったひとつの理由は…】

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 奇跡なんてひとつもなかった、
そこにあったのは紛れもない真実だけ。

志帆はいつでも自然体でその日が来るのを待っていて
きっと僕だけが“奇跡”なんて言葉を信じて
憧れを抱いていただけなのだろう。

コンビニの駐車場まで歩きながら
僕は今世紀最大限の勇気を振り絞って

手を繋ごうとした・・・

その瞬間

「いてててて!」

志帆に思い切りつねられた。

「ちょっと原田くん!かたつむり持った手で
触んないでよ!」

「こっちの手じゃないって!」

「どっちでも同じ!」

「じゃ手、洗ってくるよ」

「私も一緒に行く」

「何でだよ!」

「そんなの…言えるわけないでしょ!」

「じゃ、手、洗ったら…」

さっきまでの表情からは想像もつかないような
満面の笑みで志帆は大きく頷いた。


 志帆にとっては怒ることも笑顔になるのもその理由は…
そのたったひとつの理由は好きだから、
なのかも知れない。

自分の想いに気づけてよかった・・・

もしも互いの思いがすれ違ったまま
交わることがなければ

きっと僕は…かたつむりみたいに
ずっと殻に閉じ籠ったままで

無駄に悪戯ばかり仕掛けて志帆を怒らせるだけで
学園生活を終えていたことだろう。

 今、始まったばかりの僕と志帆との物語は
この先まだまだ長くなりそうだ、

急がなくていい、そう、まるでかたつむりの歩みのように
ゆっくりと僕たちの紡ぐ恋の歩幅に合わせて
一歩ずつ進んでゆけばいいのだから。

「ちょっと、原田くん!」

志帆の声がする

互いに無言で差し出した2つの手が繋がった時
僕の想いは君の心にまた一歩近づけたんだ…
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