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第1章 取材と言う名の潜入捜査

【懊悩煩悶】

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あぁ、どうすればいいんだろう?
このままじゃまた、
行き詰まったまま何も書けないな…


 1年前に別サイトで完結した拙作Web小説「レイナ」
連載当初からそれなりに手応えを感じていたが

完結するや否や、凄まじいペースで読まれ
多い日には1日2,500ページの閲覧、

あれよあれよと自身の最大人気作となった。

バズるってこう言うこと?

学園もののラブコメやホラーもどきの作品など
それまで細々と連載を続け、

それなりに読まれる機会も増えて
それで満足していたのは確かだ。

しかし、ここまで爆発的に読まれたとなると
次の一手を打ってもいいんじゃないか?

そう、小説の収入化だ。

 しかしこれまで無料提供していた作品を
有料化させることには若干の抵抗がある

ならば読まれるだけで収入が発生する
もうひとつ別のサイトで新たに「レイナ」を連載しよう

書き足したり修正を加えたりしながら…

そんな構想を描いていた矢先、
ありがたいことに各方面から色んな声を頂いた。

― 続編はまだですか?
― まだ続くんですよね?

確かに「レイナ」のエンディングは
少し訳ありな雰囲気のまま幕を閉じ

含みのあるラストシーンは正に
いかにもTo be continued …なニュアンスだった。

しかも別の短編とリンクするような箇所もあり
様々な伏線を張っていた…かのように思わせた。

 が、実際はそこまで深く構想を練っていた訳ではなく
また続きを書けたら面白いな、くらいの
軽い気持ちで完結させて自己満足していた。

今だから話せるが「レイナ」はとある風俗店での
実体験を基に脚色を織り交ぜて執筆した作品だ、

自身の書いた物語は体験をベースに
書いたものが多いのだが

当然ながら"現実"は小説のように
ドラマチックに進行するはずがない、

途中からオリジナルストーリーへと
展開していくものの
構成や展開がなかなか上手くいかないのが現実。

 実際、過去作の学園ものラブコメを執筆していた時は
当時高校生だった息子や
その友人たちに聞き込みを敢行したり

高校の参観日や運動会などの行事に積極的に参加して
"学生のリアル"を体感することで完結にこぎつけた。

そして例に漏れず「レイナ」執筆中の数年前も
ストーリーの進行に行き詰まり

しばらく休載することがあった。


「行くしかないか…」


 今を遡ること3年前、まだ例のウイルスが
大きな顔をして蔓延る頃、私は人目を忍んで
「レイナ」の舞台となったお店に足を運んだ。

アラフィフ世代の俺が"その手のお店"に行くことに
抵抗があったわけではない

そうでもしないと現状を打破できない
自分への歯がゆさと
この時期に"情報収集"に行かなければいけない
もどかしさと恐怖心が原因だった。

そしてその体験の結果を生かし苦心に苦心を重ね

更には当時実際に起こった悲しい事件を
アンチテーゼ的に重ねることで

新たな展開を生み出すことに成功して
無事「レイナ」は昨年完結したと言うわけだ。


「そこまでして書くのか?」

周りからすればそんな好奇の言葉を
投げ掛けられても当然だが

俺は執筆に関してはまだまだ未熟者である、
そうでもしないと駄目だと思っているし

またそうやって物語を書き上げてきた。


 そして完結から1年が過ぎた頃、満を持して
手掛け始めた「レイナ」続編…

どうしてもアイデアが浮かばない

まず、レイナに続く新たなヒロインの構想すら
具体的に浮かんでこない。

朧気おぼろげながら描いていた構想を何人かに伝え
反応を伺ったが

それはどれも芳しくないものだった。

続編を同じ路線で行くか、それとも思い切ってホラーに?

いやいやヒューマンドラマ系でいくか…

どれもパッとしない、
頭を抱える日々が続き制作は頓挫していた。
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