上 下
9 / 68
第2章 その比率は6:4なり

【画竜点名】

しおりを挟む
 俺がその舌先を軽く吸うと
彼女は拒むことなくそれを受け入れ

柔らかなその感触を確かめるように唇を貪り合い
互いに執拗なまでにねっとりと舌を絡め合う。

口の中を行き交う温かな唾液の感覚のせいだろうか?

これまでのコミカルな雰囲気は掻き消され
ようやく二人の男女が淫らに求め合う、

そんな本来の姿がベッドの真向かいにある
鏡越しに映し出されていた。

「んんぅ…」

 ふと互いの唇と唇が離れた時、
微かな吐息と共に彼女がニコっと微笑む。

― か、かわいい、やっぱりかわいいな

思わず声に出した。

「そう?うれしい…キツネみたいって言われるかと思った」

「俺はね、本当に猫目の女の子、めちゃめちゃ好きなんだよ、歴代彼女とか推しはみんなそう」

「そうなんだ!よかった、私、猫目で」

「ほんと、そうだね、俺もありがとうって感じ」

 彼女は体を起こして騎乗位のような体勢で
俺にまたがっている、

体を起こした彼女の胸元が視界に入った時
俺は思わず息を飲んだ。

「これ?小さいよねぇ…」

自分の胸を指差す彼女の次の言葉を待つことなく
俺はその小さな胸の膨らみを掌に乗せ
もう片方の手は乳首の先を軽くつまんだ。

「あ…」

彼女の口から再び甘い吐息が洩れる。

「俺はこれくらいが一番好きだな」

「ほんとにぃ?大きいのが目の前にあったらそっちに顔、うずめちゃうんでしょ?きっと」

「そんなことないって…ほら」

「ホントに?こんなので…いいの?」

「うん、だってほら…」

 俺は彼女の胸にそっと顔を近づけ
舌で転がすように目の前の柔らかな乳首を
音を立てながら吸い、時には軽く歯を立てる。

「あ…あ、気持ち…いい」

「わかってくれた?だから、ホントに好きなんだって」

「うん…あ、あ!…いい…」

この雰囲気だ、やはりお店に来たんだから
この雰囲気を体感しなくちゃ…

しかし、この娘、ホントにいい娘だな
何て言うかスレてない…

まるで本当に一般の女の子との
初めての行為の時みたいだ。

風俗嬢特有の独特なムーブや発声もないし
テクニックだけじゃない何か特別な感覚、

またこの娘に会いに来よう…と、

なると…

その時、愛撫を続けながら俺はあることを思い出した。

「あのさ…」

「なぁに?あ…あ!」

「まだ、名前、聞いてなかったよね?」

 もうプレイも後半戦に入ろうかと言うのに
俺は彼女の名前すら知らなかった。

沙理奈さりな…沙理奈って言うの」

「そっか、さりなちゃん…さりなちゃんかぁ…あ!」

いつしか攻守交代で攻めの体勢に入っていた彼女の口撃に
思わず声が出る。

「どうしたのぉ?」

「いや、何かすげぇ気持ちよくって…」

「でも私、まだね…入って3ヶ月くらいなの」

「そ、そうなんだ」

道理で…瑞々しく感じるわけだ、
に、しても穏やかなのに上手い…

 過去に体感してきた女の子みたいに
力技でフィニッシュに持ち込もうするでもなく

本当に優しい心持ちのまま快感を与えてくれる。

何度か通って小説の題材やネタを探すか…
そう考えていたが

まさか初回でこんな自然体の
"大物ルーキー"と対峙することになるとは。
しおりを挟む

処理中です...