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第3章 本意吐露

【一大決心】

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 午後2時半過ぎに帰宅した俺は
心地よい疲労感に包まれながら自室のベッドの上で
天井を見上げながらふと思い出した。

確か…沙理奈はあの時…

“お礼のメッセージを書くから読んでね”

そんなこと言ってたな。

沙理奈の印象が色々と強すぎて
店名の記憶すらおろそかになっていたが

何とか検索して辿り着き
沙理奈のプロフィール画像を発見した。

名前は沙理奈、身長165センチ、28歳…
うん、この娘で間違いないな…

本当だ、ここで初めてプロフ画像を見たが
年齢は本人の申告通り実年齢より若く書かれている。


そしてその下にあるブログ的なコーナーに

"ありがとうございました"

そんなタイトルで早速
俺に向けたメッセージが更新されていた。

つい数10分前の出来事を思い出しながら
そこに目を通すと

「天然のお兄様」

そんな文言から始まる沙理奈からの
お礼のメッセージが

そこには体を拭かずに震えていた天然行動や
例の"悟りプレイ"の話題に加えて

"教えてくれたやつ全部チェックするね"

の言葉で締められていた。

嘘だろ?

まさか本当に
チェックしてくれるつもりなのだろうか?

それともやはり"次"のためのビジネスなのか?

もうそんなのどちらでもいい、
それが正直な気持ちだった。

小説の続編のストーリーに行き詰まり
悩んでいた俺にとって

沙理奈と出会えたことこそがこの日最大の
ハッピーサプライズ

その先がどうなろうとこの出会いは揺るがない、
物語はもう始まっている

ただ彼女との出会いに感謝する思いが溢れていた。

 そしてこの沙理奈からのお礼メッセージを
見たことを何とかして伝えたかったのだが

このページにいわゆる"いいね"をするには
サイトを登録しないといけない。

そこまでやっていいものか?

深入りしてレイナの時のような切なさを
また体験してもいいのか?

そんな思いが俺の次の行動を抑制していたが
その壁は思わぬ形で崩されることになった。

久しぶりに別の意味で体力を使い、
この後疲れ果て泥のように眠り

深夜に目覚めた俺は
いつもの習慣で小説サイトのページを開いた、

更新した物語たちのページビューを確認するためだ。

そしてこの時、異変に気づいた、
完結している普段はあまり読まれない作品も含め
幾つかの小説がそれなりに読まれている…

その時、

"全部チェックするね"

そんな沙理奈の言葉を思い出した。

「まさか、ほんとに読んでくれてる…ってこと?」

いても立ってもいられなくなった俺は
再び沙理奈からのお礼メッセージを確認した

そして…例え“ビジネス”だとしても

これは彼女の気持ちに応えなきゃ…
そんな思いに駆られた。

その翌日、俺は思い立って
沙理奈が掲載されているサイトへ登録を済ませ

"いいね"をした。

SNSで統一して使っているハンドルネームは
さすがにここでは使えないと判断して

少し文字った別のクレジットで使用する名前
そう作詞作曲の時に使う別の名で。

"いいね"はしたものの何か物足りない
そこで俺は彼女の口コミを書こうと決めた。

口コミとはグルメサイトにあるような
料理やお店への評価のこと。

曲がりなりにも俺は文章でほんの少しの
副収入を得ている、

趣向を凝らした文面で人気が上がり
沙理奈のお得意様が増えるならお安い御用だ、

そう思った。
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