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第3章 本意吐露

【名声籍甚】

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 やっぱり率直な感想を書いた方がいいよな…
まずはかわいい、ってことを主張するか、

そしてプレイについては
優しさの中に潜む情熱的な攻め、的なニュアンスで。

こんな感じで書いた俺の口コミが投稿されると
すぐに注目記事としてピックアップされた。

そしてこの口コミ記事にも
沙理奈からのお礼メッセージが届いた。

その中には当日のエピソードに加え

「私の出演予定のも楽しみにしてます」

そう書かれていた。

アレ…とは帰り際に話した
沙理奈が登場するであろう小説のことだと推測した。

 そしてこの日から再び
小説サイトのページビューが増え始めた。

例えいくら“ビジネス”であったとして
ここまでしてくれるだろうか?

好きとか愛情とかの部分とはまた違う、
彼女の優しさを感じた。

しかし驚くべきことに彼女がチェックしていたのは
この小説サイトに留まらなかったことを
後に知ることになる。

初めて沙理奈に会ってから10日ばかりが過ぎたが
未だ小説サイトの閲覧数は増えている

「かなり読んでくれてるんだよ…な?」

これは一度本人に確認するために
直接話を聞かなければ…

そう考えるようになった。

実際、沙理奈はお礼メッセージの中で

“感想も伝えたいし”

そう記していた。

 それならば…と思った3月の初頭のこと
ふとある項目が目に入った。

このサイトにはいわゆるDMのような
本人同士のみでやり取りできるチャットのような
トークルームがあることに気づいた。

そこで沙理奈を"お気に入り"に登録すると
即座に沙理奈からこのトークルームをフォローされた。

相互フォローとなればここで
個人間でのやり取りが可能となる、
これを活用しない手はない…

そう思った俺はおっかなびっくりで
メッセージを送ってみた。

すると数時間後のこと、丁寧な長文で
二回に分けて沙理奈から返信が届いた。

俺のことを覚えていてくれているか、
まずそれが気になって質問したのだが

"もちろん誰だかわかりますよー"と

あの穏やかな人柄をそのまま文字にしたような
優しい文体に心が和んだ。

“またあの技を拝める日が来るなんて夢のようです”

と、例の“悟りの技”の印象はあまりにも大きかったようで
その話題にも触れてくれていたし

小説ネタのために色んな女の子を転々とするのだと
思っていたことも明かしてくれた。


初めて来店してから約10日が経過した頃、
この日から俺と沙理奈とのトークが始まった。

このような経緯を経て

俺と沙理奈との"期間と場所限定"の交遊関係、
曖昧で愚直で純朴なのにどこか卑猥で妖艶…

そしてなまめかしい不思議な繋がりが
幕を開けたのだった。
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