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第7章 嘘だろ?

【吐露成就】

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 2月に出会い、3月から始めたトーク
これまで合計4回の逢瀬を重ねた後

しばらく会えない日々が始まり

さりーとオンラインのみで
やり取りを始める毎日がスタートした。

しかしそこにお互い悲壮感は全くなかった、
翌日早速届いたさりーからの返信には

帰り際に話した“別の女の子ネタ”に関して
少し言及されていた。

“私、結構気にするタイプだから報告してほしいタイプ”
“でも単推し派と聞いてホッとしたのは内緒”

やっぱりあの発言についてはさりーも色々
思うところがあったようだ、

それをクリアに出来た分、
今回の“告白”は図らずとも正解だったのかな?

そんな風に捉えることにした。

ー知れば知るほどに光々と似たところがあると
しみじみ思うさりーでした


そんな言葉を読むに連れ
俺とさりーは今世ではようやく会えたが

もしかしたら遠い昔、そう前世や前々世でも
何かしらの形で出会い、

再びこの時代、この世界でようやく再会したのでは?
そう思うほどに通じるものがあった。

 趣味嗜好においても考え方においても
どことなく過去のどこかで関わりがあったのでは?

そう思うくらい不思議な一致点が多い。

そしていつものようにふたりで
次回のためのクイズを出し合っている時

初対面で話題に出たウォーキング・デッドの
好きなキャラ当てクイズを提案した時のことだった

ーキター!

と、これまでにないくらい
さりーのテンションが上がった。

他にも俺の書くWeb小説がバズった話や
今月半ばに控えた俺のライブ遠征の話題

更にはそこでのお土産についても盛り上がる。

もう本当に友達同士のやり取りとしか思えない
文面を見る度にさりーの存在は日々大きくなる。

そんな思いを正直に伝えると

“何もしてないのにそんなに感謝されると照れるわ”


そんな言葉でまた俺の気持ちを心地よく揺さぶる

ー 会えない間はさりーの出勤時間に合わせてヌクから

…などと言う冗談交じりの下ネタにも
文章の中で爆笑しながら

“出勤の度に光々のこと思い出すね、ヌイてるかな?って”

臨機応変な会話で心を和ませてくれた。

 そしてこの頃から俺たちだけの間でしか通じない
そんな挨拶、やり取りが始まった。

その言葉は“アリベデルチ”

イタリア語で「さよなら、またね」の意味だが
この常套句は以前も話題に出た女子プロレス団体

スターダムの看板選手の一人である
ジュリア選手の決め言葉だった。

さりーはこのジュリア選手についてもしっかり検索して

“女の子やのにカッコよすぎる!惚れる!”

本当に俺が話題に出した内容は全て調べて
関心を示してくれた。

その健気な優しさに俺は魅かれつつあるのを
自分でも気付いていた、

それでも俺は
「仲の良い友達がひとり増えてうれしい」

こんな感情を抱くくらいで

それが恋愛的な心情に発展することはない、と
心の中では思っていた。

どちらかと言うと同性の親友のような感覚

それでも体の交じわりがあるからには
やはりそれはそれだけではない、、

 実際には心の何処かで特別な感情を抱きつつあり
それを打ち消すために
わざと友達を装うようなやり取りを続けている?

正直、そんな感情も否めないではないし

ビジネスであるとは言えお互いが裸で向き合い
毎日のようにトークで趣味嗜好の話題で盛り上がる

それはカップルのやり取りと言っても
過言ではないのだから。

しかし、その線引きを
どこでしようと考えることはしなかった

お互いがしっかり距離感を保っている、
そんな自信もあったし

交遊と恋慕の狭間で心を揺らし
二つの感情を戦わせる時間すら勿体ない。

男女にありがちな様々な葛藤に
悩んだり思いを巡らせることすら
忘れてしまうほど二人はこの状況を楽しんでいた。 
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