僕の彼女はアイツの親友

みつ光男

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Act 46. 正義の味方じゃないヒーロー

【共有すること】

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「さてと…そろそろ始めるか」

 恐らく甲斐はこれまで仲間ですら絶対的に支配する
専制政治的な体制を敷いてきたのだろう、

その証拠に僕のように全くひるまない相手には
かなりの苛立ちを示している。

「とここんバカにしやがって…ちょっとは昔、名の知れた奴か知らんが、タダで済むとは思ってないだろうな」

僕はそんな甲斐の言葉を無視するように

「煌子ー、聞こえてるかー?もうちょっと待ってろー!すぐにそっち行くからなー!!」

「テメェ、ふざけてんのか!」

「あ、そうだった、忘れてた」


堪忍袋の緒が切れた甲斐がコウへ向けて
殴りかかってきた。

「オラァァァ!」

甲斐の渾身の一撃はコウの顔面をとらえ
コウはそのまま後ろへと吹き飛ばされた。



「タカムラー!!!」

煌子の悲痛な叫び声が聞こえた。

「もう!よそ見してるからそんなことに…」

煌子の言葉を遮って
甲斐は吐き出すようにコウを罵る。

「何だ、やっぱり口だけ野郎じゃねえか、散々コケにしやがって。こんなもんで済むと思うなよ」

甲斐が再びゆっくりとコウに向かって歩を進めた

その時・・・
横たわったままのコウが叫んだ。

「煌子…!」


「何だこいつ?まだ意識があんのか?」

甲斐はいぶかしげに立ち止まった。


「煌子ー!聞こえてるかー?」


 コウの声は少し離れている煌子に
確かに届いていた。

「何よ!タカムラ、さっさと立ち上がって
あんなヤツ、ブッ倒してよ、早く!」


「煌子!お前の苦しみや痛みはこんなもんだったか?」

「え?」

「もっと辛かったのか?痛かったのか?」

「はーっ?何言ってんの!バカじゃないのこんな時に!!」

「どうなんだ!!煌子!」

「今のあんたより…マシよ!バカじゃないの!」

煌子の瞳から止め処なく涙が溢れる。
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