18 / 52
Vol. Ⅴ 年の差Fantasy
【たまにはこんな自分を】
しおりを挟む
これは初めてお店で会計をしてもらった
その時からずっと思っていたこと…
だがそんなことをなかなかお願い出来るはずもなく
2度目に見かけた時、そして今日も同様に
ずっと考えていたことだった。
「あのミヤさん…」
「なぁに?」
「マスク…外したとこ見たいんですけど」
俺は勇気を振り絞ってこうお願いした。
例のウイルスが世に蔓延してからと言うもの
業界はどれだけマスク販売でひと山当てた?ってくらい
仕事中も移動中も、それこそ外出時は食事の時以外
誰も彼もマスクを外した姿を見たことがない
それはある種、あまりにも異様な光景に見えた
なので俺が初めてミヤさんと会った時も
それは例外ではなかった。
そしてミヤさんからの返事は
まるで想像していなかった言葉だった
「ダーメ!」
「え…何でです?」
「全然かわいくないよ、それに…」
「・・・」
「見たらショーちゃん、ガッカリするかも」
ミヤさんは自嘲気味に笑いながら俺を見た。
ようやく少しだけ話せるようになったのに
未だ素顔はベールに包まれたまま。
これもまたこのご時世ならではの功罪なのだろうか?
“マスク美人”なんて言葉も生まれた
イメージはどんどん膨らむが実際に見た時のギャップ
ミヤさんがそんなことを気にしているなんて
少し意外に感じた。
「え?そんなわけないじゃない…じゃないですか」
「あははショーちゃん“じゃない”多すぎ」
「え…?あっ!肝心なところで噛んでしまった」
「あはははは」
まだ笑い続けていた京だったが
ふと我に返ったようにこう言った。
「ねぇ、ちょっと歩かない?」
「あ…はい」
「屋上の駐車場に車、停めてんだ、そこまで一緒に」
そして京はおもむろに自販機の前に立つと
「ショーちゃんコーヒーでいい?」
「え…あ、俺、出しますよ」
「いいからいいから」
「あ…炭酸がいいっす」
「やっぱ、若いよね」
そう言ってミルクティーのボタン押した京は
小銭を俺に手渡した
指と指がそっと触れる、
それだけで俺は体の芯が熱くなるような
そんな不思議な感覚に陥った。
「こっちだよー!」
少し先を歩いていた京が俺に手招きをした。
駐車場まで一緒で帰りを見送るなんて
まるで…カップルじゃないか
帰り際に手を振って“またね”なんて言ったりして…
そんな俺の妄想がどんどん膨らむ時間すら与えないくらい
この後の京の一言は衝撃だった。
「助手席、乗って」
ー え!えぇぇぇぇぇ~!
車内でミヤさんと二人きり…いいのか、俺?
「の、乗っていいんですかぁ?」
「うん、ちょっと走りながらお話しよ」
目の前に停車している濃い紫色の軽自動車のドアを開ける
ー うわ…いい匂いがする、うちの車とは大違いだ
これが“女子”ってやつなのか…
たじろぐ俺を気にすることもなく
京は車のエンジンをかけて軽くアクセルをふかした
と、同時にカーステからは当然のように
てっちりの曲が流れ始めた。
「時間大丈夫なんです?」
「うん、5時までに行かなきゃいけないとこあるけど全然大丈夫だよ」
車は走り出した、ここは俺とミヤさんだけの世界
まさかこんな展開になるなんて誰が予想しただろうか?
「ど、どこか行くんですか?」
「あ、駐車場で話してたらほら、人目も気になるでしょ、若い男の子誘惑してる、と疑われたら…あははは」
本当に見た目と違って豪快な笑い声だな、ミヤさんは
「た、確かに…でも俺は全然」
「風紀とか割りと厳しくてね、この会社…ほらあたし一応レジチーフだから」
「チ、チーフ?ミヤさん、エラい人なんですね!」
「全然!ただ昇進試験受かっただけ、だもん」
「それがスゴいんすよ」
走っている間も信号待ちの時も
会話が途切れることはなかった
人見知りな俺にしてはがんばってるぞ!
この時ばかりは自分で自分を褒めてあげたかった。
その時からずっと思っていたこと…
だがそんなことをなかなかお願い出来るはずもなく
2度目に見かけた時、そして今日も同様に
ずっと考えていたことだった。
「あのミヤさん…」
「なぁに?」
「マスク…外したとこ見たいんですけど」
俺は勇気を振り絞ってこうお願いした。
例のウイルスが世に蔓延してからと言うもの
業界はどれだけマスク販売でひと山当てた?ってくらい
仕事中も移動中も、それこそ外出時は食事の時以外
誰も彼もマスクを外した姿を見たことがない
それはある種、あまりにも異様な光景に見えた
なので俺が初めてミヤさんと会った時も
それは例外ではなかった。
そしてミヤさんからの返事は
まるで想像していなかった言葉だった
「ダーメ!」
「え…何でです?」
「全然かわいくないよ、それに…」
「・・・」
「見たらショーちゃん、ガッカリするかも」
ミヤさんは自嘲気味に笑いながら俺を見た。
ようやく少しだけ話せるようになったのに
未だ素顔はベールに包まれたまま。
これもまたこのご時世ならではの功罪なのだろうか?
“マスク美人”なんて言葉も生まれた
イメージはどんどん膨らむが実際に見た時のギャップ
ミヤさんがそんなことを気にしているなんて
少し意外に感じた。
「え?そんなわけないじゃない…じゃないですか」
「あははショーちゃん“じゃない”多すぎ」
「え…?あっ!肝心なところで噛んでしまった」
「あはははは」
まだ笑い続けていた京だったが
ふと我に返ったようにこう言った。
「ねぇ、ちょっと歩かない?」
「あ…はい」
「屋上の駐車場に車、停めてんだ、そこまで一緒に」
そして京はおもむろに自販機の前に立つと
「ショーちゃんコーヒーでいい?」
「え…あ、俺、出しますよ」
「いいからいいから」
「あ…炭酸がいいっす」
「やっぱ、若いよね」
そう言ってミルクティーのボタン押した京は
小銭を俺に手渡した
指と指がそっと触れる、
それだけで俺は体の芯が熱くなるような
そんな不思議な感覚に陥った。
「こっちだよー!」
少し先を歩いていた京が俺に手招きをした。
駐車場まで一緒で帰りを見送るなんて
まるで…カップルじゃないか
帰り際に手を振って“またね”なんて言ったりして…
そんな俺の妄想がどんどん膨らむ時間すら与えないくらい
この後の京の一言は衝撃だった。
「助手席、乗って」
ー え!えぇぇぇぇぇ~!
車内でミヤさんと二人きり…いいのか、俺?
「の、乗っていいんですかぁ?」
「うん、ちょっと走りながらお話しよ」
目の前に停車している濃い紫色の軽自動車のドアを開ける
ー うわ…いい匂いがする、うちの車とは大違いだ
これが“女子”ってやつなのか…
たじろぐ俺を気にすることもなく
京は車のエンジンをかけて軽くアクセルをふかした
と、同時にカーステからは当然のように
てっちりの曲が流れ始めた。
「時間大丈夫なんです?」
「うん、5時までに行かなきゃいけないとこあるけど全然大丈夫だよ」
車は走り出した、ここは俺とミヤさんだけの世界
まさかこんな展開になるなんて誰が予想しただろうか?
「ど、どこか行くんですか?」
「あ、駐車場で話してたらほら、人目も気になるでしょ、若い男の子誘惑してる、と疑われたら…あははは」
本当に見た目と違って豪快な笑い声だな、ミヤさんは
「た、確かに…でも俺は全然」
「風紀とか割りと厳しくてね、この会社…ほらあたし一応レジチーフだから」
「チ、チーフ?ミヤさん、エラい人なんですね!」
「全然!ただ昇進試験受かっただけ、だもん」
「それがスゴいんすよ」
走っている間も信号待ちの時も
会話が途切れることはなかった
人見知りな俺にしてはがんばってるぞ!
この時ばかりは自分で自分を褒めてあげたかった。
1
あなたにおすすめの小説
僕《わたし》は誰でしょう
紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※表紙イラスト=ミカスケ様
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
その出会い、運命につき。
あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる