神様、僕は恋をしました

みつ光男

文字の大きさ
21 / 52
Vol.Ⅵ ただいま絶賛恋愛中

【距離感】

しおりを挟む
 初対面から再会の時の思い出話を
俺とミヤさんは猫に囲まれながら楽しく話している。

「だよねー!あたしあの場所に誰もいなかったから"どうしようー"ってテンパっちゃったもん」

「実はですね…あん時ほんとは」

「ショーちゃん!また喋り方丁寧語になってるー!」

「あ、そうだった、これやめるんだったね」

あれから1週間、翔成と京は約束通り
猫カフェに来ていた。

「え?本気で帰ってる途中だったの?」

「さすがに1時間待って来なかったら帰るよ」

 あの日、運命の糸が切れそうなところで
ギリギリ繋がった“ミヤさんとショーちゃん”の
曖昧な関係

これまで気まぐれに送られていた京からの返信が
この日を境にマメに届くようになり

幾つかの言葉のやり取りを繰り返す中
京のある一言がきっかけで
まだ少し開いていた距離が急速に縮まった。

“仲良くなったんだからもう敬語や丁寧語はやめようね”

それでも翔成はなかなかその癖が抜けなかった
年上で目上の人にはどうしても丁寧な口調になってしまう

それでもいつしか2人のやり取りから
堅さやぎこちなさが消えSNSを通じてであれば
自然な口調で言葉を交わせるまでになった。

 そこで始めたのが約束していた猫カフェの件
時間や待ち合わせ場所などを綿密に計画し

互いの意思や希望を尊重しながら
当日に向けてプランを練り続けた。

たった1日、たがが数時間のための計画かも知れないが
“共同作業”で時間を費やしたことは

心の距離を縮めるには十分すぎるほど
会えない時間を有効に活用出来た。

 そして迎えた当日、2人は猫に囲まれ
出会った日から今日までのことを振り返っていた。

「何かここの猫ちゃんたちみんな、ショーちゃんとこに行ってる!」

「猫にはモテるんで…」

「何か悔しいー!あたしのとこ全然来ないよ」

「多分よもぎ…あ、うちの猫の名前、の匂いとか残ってるのかも」

「ショーちゃん家の猫ちゃん“よもぎ”ちゃんって名前なの?あははは、何でその名前に?」

「あ、澪が…妹なんだけど、よもぎ苦手なんで猫の名前にしたら克服できるかな、って」

「そもそもよもぎが好きな人って…いるの?」

実にくだらない…それでいてとても大切な会話は
まだまだ終わる気配がない。

 しかしこんなに楽しい時間を過ごしながらも
翔成にはひとつ、気になることがあった。

ミヤさんの中で俺って一体
どんな位置に存在してるんだろうか?

会話をするようになってまだ10日前後
彼氏でも恋人でもない…なのに

こんなに毎日やり取りをしてこうして会っている
ミヤさんにとって俺との関係性は一体…?

「あれ?どうしたの浮かない顔して」

きょとんとした顔で京はそう尋ねた

さすが、大人の女性だけあってふとした表情で
俺の内面まで見透かされているのだろうか?

「あ…何か、こんなに楽しくていいのかな、的な…これ、悩みって言うのかな?」

「疑ってる?もしかして」

「あ、いや、そう言うのじゃないんだけど」

「あたし、誰にでもこんなにすぐ仲良くなれないんだよね」

「そ、そうなんだ」

「ほら、あたしたちカップルってわけじゃないけどショーちゃんって何か…」

「何か…?」

「特別なんだよね、何て言うか…家族みたいな」  

「それは俺も思ってます」

 確かに恋人と言うにはまだほど遠い、
でも友達、で片付けてしまうだけの軽い感じでもない

親しくなるまでの時間が短かかったのに
随分前から知っていたような気もする。

「今は難しく考えなくていいんじゃない?」

「そ、そう…」

「・・・ですね?」

眉を潜めながら俺を見るミヤさん

「あ、そ、そうだね」

「はい、よろしい」

猫に囲まれながら俺はこれからのことを考えていた

すっかりはぐらかされた感もあったが
もしかしたらミヤさんも同じ想いだったのかも知れない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

処理中です...