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Vol. Ⅷ 神の戯れ その2
【吉凶こもごも】
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いつしか雨もあがり
車道の水しぶきが夕陽に反射する午後6時
ミヤさんは立ち去った女性に気づくことなく
呆然とその場に立ち尽くしていた。
「ミヤさん、ミヤさん!大丈夫?」
「あ…!ショーちゃん、あのね…そんなつもりじゃなかったんだけど」
「大丈夫」
「ショーちゃんのこと、誰かに隠したりとか後ろめたいとかそんなのじゃなくて…」
「わかってる、さっきの人は近所の知り合いの人、なんだよね?色々事情はあるから」
「怒ってない?」
「全然、ほら、大丈夫だよ…それより」
・・・そう、それより
ミヤさんが俺のことを従弟と言って誤魔化した
そんなことは何でもなかった、俺が気になっていたのは…
“あかねちゃん”って誰のこと?
「あ、あのさ、また改めて色んなこと話したいから…」
「うん、わかったよ」
「気になること、色々あると思うけど…」
「それはまたいつか、でいいよ」
「ありがと、ショーちゃん、じゃあ今から…場所変えて…」
「いいよミヤさん無理しなくても…忙しいのに時間作ってくれたんだよね?だから…今日は」
「ごめん…ほんとにごめんね…じゃあ帰ろっか?」
「うん、また次に行く楽しみに取っとくよ」
ようやく気を取り直して歩き始めたミヤさんの背中は
やはりどこか落胆の色を感じた。
正直このまま帰るのはどこかすっきりしないが
無理して気丈に振る舞わせるのも本意ではない。
しかしやはり帰り道はどこか重い雰囲気で
これまで無意識に弾んでいた会話も途切れがちになり
何とも言えない空気が続いたが
それも俺の家に着いたことで何とか途切れた。
「じゃあまたね、今日もありがとう」
「ミヤさん、気を付けて帰ってね」
ようやく笑顔のミヤさんを見ることが出来たが
その表情にはどこか陰が感じられた。
「あれ?早かったね、晩ご飯いらないと思ってまだ準備してないよ」
「あ、いいよ、母さん、とりあえずお腹減ってないから」
「あれ?どこ行くのー?」
「ちょっとやることあるから…」
上の空のやり取りが終わると俺は部屋に駆け込んだ。
「はぁ、難しい年頃なんだろっかねえ?」
小さくため息をつく母親の言葉は
今の俺の耳には入らなかった。
ドアを閉めると俺は早速ポケットからスマホを取り出し
入力もおぼつかないまま送信ボタンを押した。
「今日は楽しかったです、また行きたいな」
しばらくすると…
「うん!あたしも楽しかったよ、またね」
いつもと寸分変わらない文面で
ミヤさんから返信が届いた。
ここで俺は仕掛けていたある秘策を実行した
そう、また次回短いスパンで会えるための作戦を…
「ミヤさん、俺、車に傘忘れたからまた次回よろしくね」
だが、この後すぐに既読になったにも関わらず
ミヤさんから返信が届くことはなかった
1日が過ぎ2日が過ぎ、気づけばあの日から1週間
ここ最近毎日LAINでやり取りを続けていた俺たちの通信は
こうして途絶えてしまった。
― やっぱり気にしてんだ、色々と…
もうこれで終わっちゃうのかな?
この数ヶ月間すごく楽しかったけど
もうそれもなくなってしまうのかな?
俺とミヤさんの物語はここで終わるのだろうか…
藁にもすがる思いで連絡を入れた先は…
今更ながら快人だった
「どした?お前こないだ見かけたぞぉ!あんな美人とドライブ…ってか?」
「あ、もうそれも終わりかも知んないんだよね」
「何っ?何かやらかしたのか?まさかお前…無理やり押し倒したり…とか」
「んな訳ねぇだろ!実は…」
俺の話を聞いた快人は静かにこう言った
「悪いけど諦めろ、そりゃもう戻れないよ」
「そんなあっさり言うなよ」
「明日、話聞いてやるよ、時間あるか?」
「うん、夕方なら大丈夫…あ!ちょっと待って」
会話の途中、ふと通知音が聞こえた気がして
スマホの画面を確認すると
そこには…“みやこ”の名前が
― ショーちゃん、明日会えない?
通知の時点で全文がわかるほどの短い文章だったが
確かにミヤさんからだ
これが吉報か悲報かは別として
やっとミヤさんから連絡が届いた。
「すまん、快人…やっぱ明日は…」
「おぅ!連絡来たのか、よかったじゃねえか」
毎回毎回、快人には悪いと思っているが
あいつと話していると何故か問題が解決する
直接何かしてくれてるわけじゃないのだが
何か不思議な力を持っているのかも知れない。
「快人、ありがとな」
「お!幸運を祈る」
慌てて通話を終えた俺は早速こう返信した。
― 全然大丈夫!ミヤさん何時にします?
車道の水しぶきが夕陽に反射する午後6時
ミヤさんは立ち去った女性に気づくことなく
呆然とその場に立ち尽くしていた。
「ミヤさん、ミヤさん!大丈夫?」
「あ…!ショーちゃん、あのね…そんなつもりじゃなかったんだけど」
「大丈夫」
「ショーちゃんのこと、誰かに隠したりとか後ろめたいとかそんなのじゃなくて…」
「わかってる、さっきの人は近所の知り合いの人、なんだよね?色々事情はあるから」
「怒ってない?」
「全然、ほら、大丈夫だよ…それより」
・・・そう、それより
ミヤさんが俺のことを従弟と言って誤魔化した
そんなことは何でもなかった、俺が気になっていたのは…
“あかねちゃん”って誰のこと?
「あ、あのさ、また改めて色んなこと話したいから…」
「うん、わかったよ」
「気になること、色々あると思うけど…」
「それはまたいつか、でいいよ」
「ありがと、ショーちゃん、じゃあ今から…場所変えて…」
「いいよミヤさん無理しなくても…忙しいのに時間作ってくれたんだよね?だから…今日は」
「ごめん…ほんとにごめんね…じゃあ帰ろっか?」
「うん、また次に行く楽しみに取っとくよ」
ようやく気を取り直して歩き始めたミヤさんの背中は
やはりどこか落胆の色を感じた。
正直このまま帰るのはどこかすっきりしないが
無理して気丈に振る舞わせるのも本意ではない。
しかしやはり帰り道はどこか重い雰囲気で
これまで無意識に弾んでいた会話も途切れがちになり
何とも言えない空気が続いたが
それも俺の家に着いたことで何とか途切れた。
「じゃあまたね、今日もありがとう」
「ミヤさん、気を付けて帰ってね」
ようやく笑顔のミヤさんを見ることが出来たが
その表情にはどこか陰が感じられた。
「あれ?早かったね、晩ご飯いらないと思ってまだ準備してないよ」
「あ、いいよ、母さん、とりあえずお腹減ってないから」
「あれ?どこ行くのー?」
「ちょっとやることあるから…」
上の空のやり取りが終わると俺は部屋に駆け込んだ。
「はぁ、難しい年頃なんだろっかねえ?」
小さくため息をつく母親の言葉は
今の俺の耳には入らなかった。
ドアを閉めると俺は早速ポケットからスマホを取り出し
入力もおぼつかないまま送信ボタンを押した。
「今日は楽しかったです、また行きたいな」
しばらくすると…
「うん!あたしも楽しかったよ、またね」
いつもと寸分変わらない文面で
ミヤさんから返信が届いた。
ここで俺は仕掛けていたある秘策を実行した
そう、また次回短いスパンで会えるための作戦を…
「ミヤさん、俺、車に傘忘れたからまた次回よろしくね」
だが、この後すぐに既読になったにも関わらず
ミヤさんから返信が届くことはなかった
1日が過ぎ2日が過ぎ、気づけばあの日から1週間
ここ最近毎日LAINでやり取りを続けていた俺たちの通信は
こうして途絶えてしまった。
― やっぱり気にしてんだ、色々と…
もうこれで終わっちゃうのかな?
この数ヶ月間すごく楽しかったけど
もうそれもなくなってしまうのかな?
俺とミヤさんの物語はここで終わるのだろうか…
藁にもすがる思いで連絡を入れた先は…
今更ながら快人だった
「どした?お前こないだ見かけたぞぉ!あんな美人とドライブ…ってか?」
「あ、もうそれも終わりかも知んないんだよね」
「何っ?何かやらかしたのか?まさかお前…無理やり押し倒したり…とか」
「んな訳ねぇだろ!実は…」
俺の話を聞いた快人は静かにこう言った
「悪いけど諦めろ、そりゃもう戻れないよ」
「そんなあっさり言うなよ」
「明日、話聞いてやるよ、時間あるか?」
「うん、夕方なら大丈夫…あ!ちょっと待って」
会話の途中、ふと通知音が聞こえた気がして
スマホの画面を確認すると
そこには…“みやこ”の名前が
― ショーちゃん、明日会えない?
通知の時点で全文がわかるほどの短い文章だったが
確かにミヤさんからだ
これが吉報か悲報かは別として
やっとミヤさんから連絡が届いた。
「すまん、快人…やっぱ明日は…」
「おぅ!連絡来たのか、よかったじゃねえか」
毎回毎回、快人には悪いと思っているが
あいつと話していると何故か問題が解決する
直接何かしてくれてるわけじゃないのだが
何か不思議な力を持っているのかも知れない。
「快人、ありがとな」
「お!幸運を祈る」
慌てて通話を終えた俺は早速こう返信した。
― 全然大丈夫!ミヤさん何時にします?
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