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Vol. Ⅸ 雨降って…
【本当の話】
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ショーちゃん…実はあの日より前から
あたし、いつかショーちゃんに話さなきゃいけないって
抱え込んでたことがあったんだ
でもそれが原因でショーちゃんとの関係が壊れたらって
それを考えるとなかなか言い出せなくて
ズルズルとあの日まで先延ばしにしてたら蕗田さん…
あのおばちゃんに会ってあんな感じになったんだけど
あたし、決して軽い気持ちで
ショーちゃんと関わってたわけじゃなくて
ほら何て言うかさ、ショーちゃんの気持ち
わかってたからこんなあたしでも本当にいいのかな?
なんて考える時もあったんだよ
「いえいえ、俺は“こんなあたし”なんて思ってないよ」
「うん!それは本当にうれしいよ」
―でね、ショーちゃんが気にしてる女の子
あかねちゃん…って言うか
「茜音はね…」
「うん」
「茜音は…あたしの…娘の名前、なんだ」
「え…!」
「あたし、小学生の子供がいるの…」
「っ…!」
声を大にして驚きたかった、
でも本当に驚いた時って…声が出ないんだな
図らずともこの時それを実感した。
「え…ちょっと待ってミヤさん…ってことは、つまり…ミヤさんは既婚者で…その…俺と会うのって…世に言う…」
「あ!あ!ちょっともしかして…それ、大いなる勘違いよショーちゃん」
「・・・?」
「あたしシングルマザーだから、ね」
「そ、そう言うこと…あ、それ以上深くは聞かない方がいいよね」
ぎこちない会話に楔を打ち込むかのように
ミヤさんはこう言った。
「あたし、今日は全部包み隠さず話すつもり!」
それならば俺も心して聞かなければ。
―あたしね、結婚してたんだ
で、子供も生まれてごくごくフツーの家庭を
築いてる…途中だったの
そう、あの日まではね。
3年前の8月…だった
“行ってきます”って仕事で家を出た主人が
帰って来なかったの
「え…それって失踪した、とか?」
「うぅん、夜になって連絡が来たの、小川さん…あ、あたしの結婚してた時の苗字ね」
「うん…」
「小川さん、ご主人が交通事故で…病院に搬送されました、って」
―でね、病院に行ったらもう冷たくなってたの
朝元気に出てったはずなのに…
「辛かったですね…ミヤさんもう無理に話さなくても…」
そう言った俺を手で制しながら
「大丈夫、だから聞いてショーちゃん」
で、翌日現場に行ったら
まだ車のブレーキの痕跡とかあってさ
何か、もう悼たまれなくなるんだけど
それから毎日そこにお花と水を供えに行ってたんだ
そしたらそこにいつも現れるの…
「え?旦那さんの…ゆ、幽霊とか?」
「じゃないけど、毎回毎回同じ猫がね、いつもあたしの隣に来てちょこんと座るの」
― 主人の事故は自損だったんだけど
もしかしたらこの猫を避けようとして
何かにぶつかったのかな?って
もしかしたら輪廻みたいな繋がりで
生まれ変わるにはまだ早いにしても
何かを伝えようとしてるんじゃないかな?
って思うようになって…
「もしかして…その猫くんって?」
「そう!今うちにいる“ラッキー!”なの」
不思議な話を聞かされたせいか
ミヤさんが結婚していて更には母親だったと言う事実が
そこまで衝撃的に感じなかった。
それよりもこんな重い話を
勇気をもって俺に伝えようとしたミヤさんの決心に
感動を覚えた。
普段のミヤさんからはそんな悲壮感は伺えないが
そんなにも辛い過去を抱えていたこと、
そしてそれを今日伝えてくれたのは
やはり少なからず俺に対する想いもあるのだろう
2人の関係性は終わるどころかここから始まるのでは、
そんな予感すらさせるほどの告白だった。
あたし、いつかショーちゃんに話さなきゃいけないって
抱え込んでたことがあったんだ
でもそれが原因でショーちゃんとの関係が壊れたらって
それを考えるとなかなか言い出せなくて
ズルズルとあの日まで先延ばしにしてたら蕗田さん…
あのおばちゃんに会ってあんな感じになったんだけど
あたし、決して軽い気持ちで
ショーちゃんと関わってたわけじゃなくて
ほら何て言うかさ、ショーちゃんの気持ち
わかってたからこんなあたしでも本当にいいのかな?
なんて考える時もあったんだよ
「いえいえ、俺は“こんなあたし”なんて思ってないよ」
「うん!それは本当にうれしいよ」
―でね、ショーちゃんが気にしてる女の子
あかねちゃん…って言うか
「茜音はね…」
「うん」
「茜音は…あたしの…娘の名前、なんだ」
「え…!」
「あたし、小学生の子供がいるの…」
「っ…!」
声を大にして驚きたかった、
でも本当に驚いた時って…声が出ないんだな
図らずともこの時それを実感した。
「え…ちょっと待ってミヤさん…ってことは、つまり…ミヤさんは既婚者で…その…俺と会うのって…世に言う…」
「あ!あ!ちょっともしかして…それ、大いなる勘違いよショーちゃん」
「・・・?」
「あたしシングルマザーだから、ね」
「そ、そう言うこと…あ、それ以上深くは聞かない方がいいよね」
ぎこちない会話に楔を打ち込むかのように
ミヤさんはこう言った。
「あたし、今日は全部包み隠さず話すつもり!」
それならば俺も心して聞かなければ。
―あたしね、結婚してたんだ
で、子供も生まれてごくごくフツーの家庭を
築いてる…途中だったの
そう、あの日まではね。
3年前の8月…だった
“行ってきます”って仕事で家を出た主人が
帰って来なかったの
「え…それって失踪した、とか?」
「うぅん、夜になって連絡が来たの、小川さん…あ、あたしの結婚してた時の苗字ね」
「うん…」
「小川さん、ご主人が交通事故で…病院に搬送されました、って」
―でね、病院に行ったらもう冷たくなってたの
朝元気に出てったはずなのに…
「辛かったですね…ミヤさんもう無理に話さなくても…」
そう言った俺を手で制しながら
「大丈夫、だから聞いてショーちゃん」
で、翌日現場に行ったら
まだ車のブレーキの痕跡とかあってさ
何か、もう悼たまれなくなるんだけど
それから毎日そこにお花と水を供えに行ってたんだ
そしたらそこにいつも現れるの…
「え?旦那さんの…ゆ、幽霊とか?」
「じゃないけど、毎回毎回同じ猫がね、いつもあたしの隣に来てちょこんと座るの」
― 主人の事故は自損だったんだけど
もしかしたらこの猫を避けようとして
何かにぶつかったのかな?って
もしかしたら輪廻みたいな繋がりで
生まれ変わるにはまだ早いにしても
何かを伝えようとしてるんじゃないかな?
って思うようになって…
「もしかして…その猫くんって?」
「そう!今うちにいる“ラッキー!”なの」
不思議な話を聞かされたせいか
ミヤさんが結婚していて更には母親だったと言う事実が
そこまで衝撃的に感じなかった。
それよりもこんな重い話を
勇気をもって俺に伝えようとしたミヤさんの決心に
感動を覚えた。
普段のミヤさんからはそんな悲壮感は伺えないが
そんなにも辛い過去を抱えていたこと、
そしてそれを今日伝えてくれたのは
やはり少なからず俺に対する想いもあるのだろう
2人の関係性は終わるどころかここから始まるのでは、
そんな予感すらさせるほどの告白だった。
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