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Vol. Ⅸ 雨降って…
【ここから始まる物語】
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しばらくお互いの体を寄せ合ったまま時間が過ぎた
その時俺はあることを思い出した。
「ミヤさんが夕方5時で帰る理由…わかったかも」
「ほんと?」
温かい体温を感じながら耳元でミヤさんの声が響く。
「放課後教室…じゃない?俺も親が共働きだったから5時まで小学校にいたなぁって」
「そうなの、茜音もその施設にお願いして…あたしが昼間働いてるから…」
「つまり夕方5時はお迎えの時間、ってわけだ」
「そうなの!正解…でね、ショーちゃん」
「何?」
「そろそろ…離れる…?」
さっきからミヤさんと抱き合ってたままだったことを
すっかり忘れていた。
突然の出来事にかなり舞い上がっていた、
確かにこれまでも二人はもう
付き合ってるんじゃないかと思う時があった
だが今日に関しては付き合う前提で
ミヤさんから“真実”を告白された
これはもうお互いが魅かれ合っている
証拠といえるだろう。
これでようやく“夕方5時の疑惑”も晴れたし
今までになかった身体の触れ合いも生まれた
後は“未来”に向けて共に歩むだけだ。
しかし…気になるのは
「娘さん…俺のこと…受け入れてくれるかな?」
「大丈夫だよ、ショーちゃんなら」
「お父さんの記憶って…」
「あんまりないかもね、まだ小さかったし」
まだ俺が“新しい父親”なんて言うのはおこがましいが
将来のことを考えるとそこは大事な問題だ
「こんなこと聞いてもいいかわからないけど…」
「なぁに?何でも聞いていいよ」
― 旦那さんってどんな人だったのかな?
なんてやっぱり聞けない…
「いや、やっぱやめとくよ」
「気になるんでしょ?どんな人だったか、って」
今日もミヤさんは全てお見通しだった。
―本当に…大丈夫?ってくらい気を遣う人だったな
そう言うとこショーちゃんと似てるかも。
「そうなんだ…優しい人だったんだね」
「そう!でもねショーちゃんだって…」
ほら、CD作ってくれた時ケースに入れてくれて
1枚ずつ曲名つけてくれてたじゃない?
あれ見た時、思い出しちゃったもん
何かショーちゃんって
似てるんだよね…
「あ、これは言わない方がいいかぁ」
ーだから家族みたいに感じたのかな、なんて…
「いや、全然うれしいっすよ、“似てるなぁ”って思われたら」
「そうなの、何か重なっちゃってね…切ないようなうれしいような…」
お互いからとめどなく溢れ出す言葉のせいで
なかなか帰ることにならなかったが
「じゃ、お話の続きは…」
「また今度」
「そ、受験終わるまで会わないってわけじゃないから」
「渇、入れてもらわなきゃ、しっかり勉強しなさい!って」
「あたし、怒るの苦手だよ」
名残惜しい気持ちを抑えながら
俺は助手席のドアに手を掛けた。
「じゃまたLAINするね」
「うん、帰ったら茜音に話すね、ショーちゃんのこと」
「俺もおかんに話すよ」
ふとスマホの時計を確認すると通知が届いた
"翔成、ご飯食べないのー?"
母親からだった。
俺とミヤさんの恋愛は長い長い助走期間を経て
ようやく始まろうとしていた。
ミヤさんのことを伝えた家族のリアクションは
予想通りだった
母親に至っては
「娘が1人増えるみたいでうれしいじゃない」
茜音ちゃんのことをそう言って歓迎してくれた。
「娘ってより孫、じゃね?」
「失礼ね!孫はあんたたちで作りなさいよ!」
「つ、作るって…」
俺はそんな茜音ちゃんと対面を果たし
10歳年の離れた妹のような存在ながら
初対面の日から“ショーちゃん”と呼ばれ
ミヤさんも呆れるほどの人懐っこさに安心した。
こうして後は俺が無事に大学受験で
第一希望に合格さえすれば万事丸く収まる
そんな段階にまで発展していた。
そんな夏休みが終わり9月、10月と時は流れ
俺は死に物狂いで勉強に没頭した。
「翔成、お前ヤバくね?今回の模試めっちゃ成績いいじゃねえか」
「まあな、愛の力ってやつだ」
「お前、そんなこと言うようになったんだな」
「まあ、快斗のおかげでもあるからな」
「的外れなアドバイスばっか、だったけどな」
「いや、話を聞いてくれるってだけで救われてた」
「そっか、で、オレのことなんだけどさ…」
「マイカのこと?まだ何もアクション起こしてないんだろ」
「何とか…繋いでくれよ、関係をさ」
「がんばれ」
「ひでぇな、オレはあんなに親身になったのに」
「まあ当たって砕けろ、だな」
「砕けちゃ意味ないだろ!」
表向きは相変わらず素っ気なくしているが
快斗には感謝している…つもりだ。
そんな折り、ある情報が飛び込んできた
何と、てっちりが現在アルバムの制作中で
12月に最新アルバムをリリース
それに伴うツアーが始まるらしく
何と我が町でもライブの開催が決まった。
「ほんと?あたし行きたい!ショーちゃんの合格祝い兼ねて一緒に行こうよ」
ようやく始まりかけた2人の“青洋ラブストーリー”は
大きな局面を迎えようとしていた。
その時俺はあることを思い出した。
「ミヤさんが夕方5時で帰る理由…わかったかも」
「ほんと?」
温かい体温を感じながら耳元でミヤさんの声が響く。
「放課後教室…じゃない?俺も親が共働きだったから5時まで小学校にいたなぁって」
「そうなの、茜音もその施設にお願いして…あたしが昼間働いてるから…」
「つまり夕方5時はお迎えの時間、ってわけだ」
「そうなの!正解…でね、ショーちゃん」
「何?」
「そろそろ…離れる…?」
さっきからミヤさんと抱き合ってたままだったことを
すっかり忘れていた。
突然の出来事にかなり舞い上がっていた、
確かにこれまでも二人はもう
付き合ってるんじゃないかと思う時があった
だが今日に関しては付き合う前提で
ミヤさんから“真実”を告白された
これはもうお互いが魅かれ合っている
証拠といえるだろう。
これでようやく“夕方5時の疑惑”も晴れたし
今までになかった身体の触れ合いも生まれた
後は“未来”に向けて共に歩むだけだ。
しかし…気になるのは
「娘さん…俺のこと…受け入れてくれるかな?」
「大丈夫だよ、ショーちゃんなら」
「お父さんの記憶って…」
「あんまりないかもね、まだ小さかったし」
まだ俺が“新しい父親”なんて言うのはおこがましいが
将来のことを考えるとそこは大事な問題だ
「こんなこと聞いてもいいかわからないけど…」
「なぁに?何でも聞いていいよ」
― 旦那さんってどんな人だったのかな?
なんてやっぱり聞けない…
「いや、やっぱやめとくよ」
「気になるんでしょ?どんな人だったか、って」
今日もミヤさんは全てお見通しだった。
―本当に…大丈夫?ってくらい気を遣う人だったな
そう言うとこショーちゃんと似てるかも。
「そうなんだ…優しい人だったんだね」
「そう!でもねショーちゃんだって…」
ほら、CD作ってくれた時ケースに入れてくれて
1枚ずつ曲名つけてくれてたじゃない?
あれ見た時、思い出しちゃったもん
何かショーちゃんって
似てるんだよね…
「あ、これは言わない方がいいかぁ」
ーだから家族みたいに感じたのかな、なんて…
「いや、全然うれしいっすよ、“似てるなぁ”って思われたら」
「そうなの、何か重なっちゃってね…切ないようなうれしいような…」
お互いからとめどなく溢れ出す言葉のせいで
なかなか帰ることにならなかったが
「じゃ、お話の続きは…」
「また今度」
「そ、受験終わるまで会わないってわけじゃないから」
「渇、入れてもらわなきゃ、しっかり勉強しなさい!って」
「あたし、怒るの苦手だよ」
名残惜しい気持ちを抑えながら
俺は助手席のドアに手を掛けた。
「じゃまたLAINするね」
「うん、帰ったら茜音に話すね、ショーちゃんのこと」
「俺もおかんに話すよ」
ふとスマホの時計を確認すると通知が届いた
"翔成、ご飯食べないのー?"
母親からだった。
俺とミヤさんの恋愛は長い長い助走期間を経て
ようやく始まろうとしていた。
ミヤさんのことを伝えた家族のリアクションは
予想通りだった
母親に至っては
「娘が1人増えるみたいでうれしいじゃない」
茜音ちゃんのことをそう言って歓迎してくれた。
「娘ってより孫、じゃね?」
「失礼ね!孫はあんたたちで作りなさいよ!」
「つ、作るって…」
俺はそんな茜音ちゃんと対面を果たし
10歳年の離れた妹のような存在ながら
初対面の日から“ショーちゃん”と呼ばれ
ミヤさんも呆れるほどの人懐っこさに安心した。
こうして後は俺が無事に大学受験で
第一希望に合格さえすれば万事丸く収まる
そんな段階にまで発展していた。
そんな夏休みが終わり9月、10月と時は流れ
俺は死に物狂いで勉強に没頭した。
「翔成、お前ヤバくね?今回の模試めっちゃ成績いいじゃねえか」
「まあな、愛の力ってやつだ」
「お前、そんなこと言うようになったんだな」
「まあ、快斗のおかげでもあるからな」
「的外れなアドバイスばっか、だったけどな」
「いや、話を聞いてくれるってだけで救われてた」
「そっか、で、オレのことなんだけどさ…」
「マイカのこと?まだ何もアクション起こしてないんだろ」
「何とか…繋いでくれよ、関係をさ」
「がんばれ」
「ひでぇな、オレはあんなに親身になったのに」
「まあ当たって砕けろ、だな」
「砕けちゃ意味ないだろ!」
表向きは相変わらず素っ気なくしているが
快斗には感謝している…つもりだ。
そんな折り、ある情報が飛び込んできた
何と、てっちりが現在アルバムの制作中で
12月に最新アルバムをリリース
それに伴うツアーが始まるらしく
何と我が町でもライブの開催が決まった。
「ほんと?あたし行きたい!ショーちゃんの合格祝い兼ねて一緒に行こうよ」
ようやく始まりかけた2人の“青洋ラブストーリー”は
大きな局面を迎えようとしていた。
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