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大賢者、生き返る1
しおりを挟む「んぅ……うん?」
ぱち。
目を開くと、あたりは闇。
あれ、俺何してたっけな……。
そんなことを考えながら、身を起こそうとするが、
「痛ってぇ!」
頭をガンっとなにかにぶつけてしまった。
は?俺、どういう状態だ、これ。
起き上がろうとしたら、そこは天井。それならば、と横に移動しようとしても、そこは壁。そこまで来て、はたと気づく。
(あれ、もしかして俺、なんか変な箱の中に閉じ込められちゃってたりする!?)
どうしよう、と手でグッと天井(?)を押すしてみるが、ビクともしない。
いや、これ俺詰んでね?とりあえず、ここから早く出ないとこの狭い空間、隙間もなさそうだし息できなくなって死ぬだろ。酸素大事。などと考えながら頑張って俺の全ての力を手に込める。両膝も使って、何がなんでもこじ開けてやる!うぉぉおぉぉ~!と、奮闘した結果。
パカ!
「よっしゃァァァァァ!」
俺を閉じ込めていた、箱の蓋が空いたのだ。よし、でかした俺。
さあて、俺を捉えたやつは誰だ、出てこいこんちくしょー!と叫びながら、ドン!と蓋をおしのけ、箱の中に立った。が───
「誰もいねぇぇぇ!!てかここどこぉぉぉ!」
辺りを見回すと、俺の背後の、少し階段を上がったところにでん!とでっかい女神像が鎮座しているのがわかる。綺麗な造形のお顔で、優しく微笑んでいる。うわ、お美しい───じゃ、なくて!
窓を見てみると、天使とかが描かれている綺麗なステンドグラスが飾られており、月の光に照らされてキラキラと光っている。素敵。壁には、多分絵画?らしきものが飾ってある。(暗くてよく見えない。)俺の入っていた箱をみると、見にくいが、蓋には十字架が。そして、俺の入れられてた箱の中にはたくさんの色あせてしまった花?っぽいやつが放り込まれていた。
俺がなぜこんなところに入っていたのかは分からないが、周りの様子を見るに、ここは神殿なのだろう。おい、誘拐犯、なぜ攫う場所を神殿にしたのだ。阿呆か。そしてよく分からん箱に放り込んで放置するな!息ができなくて死んじまうだろっ!もう。
とりあえず、まだ犯人が近くにいるかもしれないので、出口を探すことにする。
そして、歩いてみて気づいた。なんか足、冷たい。それもそのはず、靴を履いていないからだ。
そして、なんだか体もうすら寒い。俺の体を見てみると………………うん、裸だなぁ!俺、裸だよ!え?なんで?俺、布1枚もまとってないよ!せめて布切れ1枚でもいいからくれ!大事なところがもろ見えだっつーの!くっそ、誘拐犯め、俺を辱める気だったな!?許さねー!
困ったことに、こんな状態では外に出ることが出来ない。もし、この丸出しフルチン状態で外に出ようものなら、1発で不審者扱いをされて、一生、俺は変態野郎というレッテルを貼られることだろう。
仕方がない。誘拐犯も、何故か近くにはいないようだし、とりあえずなにか羽織れるものがないか探してみるか。
神殿内を、歩き回ってみて感じるが、ここはだいぶこじんまりとした神殿らしい。幸いなことに、奥の方にある窓に少し埃の被ったカーテンがかかっていたため、それを今は拝借し、体にまきつけている。このカーテン、重いぜ……。
すぐにこの神殿を出ていこう、と考えたが、なんだかあのでっかい女神像に目がいってしまう。よし、お祈りだけでもしておこうかなっと。
重いカーテンをずりずり引きづりながら、女神像の元へと続く階段を登る。それにしても、俺、これまでの記憶がなんにもないのは、なんなのだろうか。俺の名前すら、思い出せない───が、まあ、いずれ思い出すだろ!と、気楽に考え、女神像の前で手を組んだ。あれ、なんかこの祈りかたは、自然と体が覚えてるなぁ、なんて、ちょっとニンマリしてしまった。
(女神様……崇高なる女神様よ!)
(我が名は女神、アルナートス。願いを持つものよ、その願いを聞き入れ………………って、あなた、大賢者アルバート!?)
うん?なんか、俺の女神像への祈りに、返事が帰ってきたような……まあ、気のせいだろ。祈りを続ける。
(俺が、一生涯幸せに暮らせますように!ああ、あと、この国に安寧がもたらされますように!)
(ちょ、ふっ、あなた!アルバートでしょ?ふふ、無視しないでちょうだい!しかも、何よその祈り、取ってつけたように国の安寧なんか祈っちゃって……ふっ、。笑わせないでくれる?ぶっ、ふふふ……。)
あん?なんか、頭に声が響くなぁ……なんだこれ。おいおい、まさか目の前の女神様が喋ってる、なんてことはない、よな?
(そうですよ、アルバート!わ、た、し、が!喋りかけているのですよ!)
「えぇぇぇぇぇぇ~!!!!」
なんだって!?こ、この女神像、生きてるのか!?意思疎通がはかれるぜ!
「おい、女神様。俺のことを、大賢者なんちゃらなんちゃら、なんて言ってたな。俺の事を知ってるのか!?」
(ええ、存じておりますよ、もう、忘れてしまったわけではないですよね?しかし、あなたは100年前に亡くなったはず、では……?)
うん?なんか今、不審な言葉が聞こえたけど、気のせいかな?気の所為だよね?嘘でしょ?俺が、もう、死んでるなんて、こと、ありえ、、
―――
「アルバート!」
必死の形相の男が、こちらに手を伸ばす。俺も、その手を掴もうと必死にもがくが、その指先に触れるだけで、あと一歩、触れることは叶わない。ああ、あと少し、なのにっっ、!
そう思った瞬間、背中からなにかにグサッと貫かれた。筋肉の引き攣れるような感覚に、うっと、息を止め、次の瞬間、口からごぼっと血の塊を吐き出してしまう。痛い、痛い、痛い!そう思ったのも数秒で、次第に視界がブレるはじめ、俺の意識はゆっくりとなくなった……。
―――
(アルバート!こっちを見なさい、アルバートっ!)
「っ、!ひゅっ、ひくっ、、かひゅ、」
息が苦しい。過呼吸を起こしているっぽい。
目から溢れた涙が、ぽろぽろ床にこぼれる。
ああ、今のが俺が死んだ時の記憶か?なんだ、女神の言う通りだな。俺、1回死んだんだ。じゃあ、なんで生きてる?俺、一体なんなんだ?
(アルバート!落ち着いて!息を、吸うだけではダメです、ゆっくり、吐き出してください、そう、ゆっくり、)
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
ああ、何とか苦しいのは収まった。
死んだ時の感覚など、二度と思い出したくないな。気持ちが悪い。
目元を、ゴシゴシと手の甲で拭くと、
(そんなに強く擦ってはダメです!あなたの綺麗なお顔が、傷ついてしまわれますよ!)
なんて女神に忠告され、俺、綺麗顔してんのか、ふーん、いいじゃん、なんて考えてしまった。
いや、それにしても、死ぬ直前、俺に手を差し伸べてきてくれたあの人物、あの人はとっても顔が整っていて、この世のものではないんじゃないか、ってくらいの色男だったなあ。あんだけ必死な顔をしていたのに、イケてるってどういうことなんだ、一体。
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