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18 (アラン視点)
しおりを挟む俺は、5歳の時に知らない奴らに誘拐された。
両親に言われた言いつけを破って1人で町に行ってしまった時に、人攫いにあったのだ。奴らは俺の裕福そうな外見から、誘拐すれば金になると踏んだのだろう。
「いい子にしてな。」
泣いている俺に、そう言ってにやけていた男の顔は、今でも覚えている。
吐き気がするほど気色の悪い顔をしていた。
その後、俺は馬車に押し込まれどこかへ運ばれた。
しかしその途中、野盗に出くわしたのか馬車が止まり、監視の目が離れた隙に俺は逃げ出した。
ただがむしゃらに走って、走って走りまくった。そうして森をぬけた時、俺の体力は尽きかけていた。
そこを見つけてくれたのが、近くの村の外れに1人で住んでいる狩人だった。
どうやらここは俺のいた国では無いらしく、言葉が伝わらなかった。
毎日とても心細くて、お父様やお母様が恋しくて、ぐずぐず泣いていた。そんな俺を、狩人は根性強く慰めて、夜寝る時は寂しくないように一緒に寝てくれたのをよく覚えている。
寡黙で少々目つきの悪い男だったが、心根はとても優しかった。
そうして5年間、2人でのんびりと暮らしていた。
この頃にはだんだんとこの国の言葉を話せるようになり、簡単な会話ならできるようになっていた。
母国に帰りたいと説明出来るくらいにはこの国の語彙は覚えてきた頃で、それをいつ狩人に伝ようかとタイミングを計らっていた時のこと。
───転機は突然に訪れた。
それは、いつものように1人で近くの町へおつかいに行っていた時。
狩人に持たされたお金の入った小さなバッグを握りしめ、町を歩いていた時、ある男にふいに肩を掴まれた。
(また人攫いか……!?)
一瞬身構えるも、それは杞憂に終わった。
知らない男だったが、俺の顔を見て
「もしかして、アラン・グランベル様ですか……?」
と聞いてきたのだ。それも、俺の母国語で。
それからは一瞬だった。
そのままその男の馬車に詰め込まれ、長い時間をかけて自分の家に戻された。
馬車をおりた瞬間、お母様が泣きながら俺を抱きしめてきたのをよく覚えている。
「無事で良かった、また会えてよかった……!」
俺も久しぶりにお父様とお母様に会えて、2人に抱きしめられて、涙をぼろぼろとこぼした。
「俺も、もう、会えないかと思ってた……。」
また家族に再開して、家に戻って来れたことはとても嬉しかった。
ただ、狩人に最後に別れの挨拶を出来なかったことだけが少し心残りだった。
そのまま、2人に再開し、5年前までの日常が戻ってきた
───そう思っていたのに。
そこにはもう1人、見知らぬ「兄」がいた。
「はじめまして、アラン。僕の名前は、ノアって言います。」
そう自己紹介され、目の前に立つ子供を見つめる。
……兄?なんで急に? 僕がいない間に、そんなことが決まっていたなんて聞いてない。
「……兄、なんだ。」
自分の口から、少し棘のある口調で言葉が漏れた。
急に兄ができたと言われても、幼い俺は納得出来なかった。
お母様にどうして兄が出来たのかと尋ねても、いつも笑って誤魔化された。
「仲良くしてね」とだけ言われて。
でも、やはり俺は納得できなかった。 俺からすれば、あいつは俺の知らない間に家に入り込んだ他人でしか無かった。
「俺の家なのに、なんで知らない奴がいるんだよ……!」
幼かった僕は、ずっと怒っていた。
しかし、それもすぐに終わる。
兄がお茶会でお父様に怒られて以来、ほとんど部屋に籠って滅多に外に出てこなくなったのだ。
屋敷の中で名前を聞くことすら減っていった。
そして俺は成長し、15歳になった。 本来なら今年から学園に入学するはずだったが、誘拐のせいで勉強が遅れているために、一年遅れで入ることになった。
家庭教師を雇って一生懸命勉強したけれど、5年分を巻き返すのはさすがに難しかったのだ。
だが、少しだけ、そのことを残念にも思った。
もし15歳で学園に入学できていたら、ほとんど部屋から出てこないノア兄様と仲良くなるチャンスだったかもしれないから。一緒に同学年として学園に通えれば、その機会が増えると思ったのだ。
幼い頃はノア兄様に反発心しか抱いていなかったものの、成長した今では違う。
唯一の兄弟として、仲良くしてみたいという気持ちが大きかった。
だが、今更ノア兄様に喋りかけに行くのもなんだか憚れて、結局ほとんど喋らないまま、ノア兄様は学園へと行ってしまった。
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