用済みになった貴族の養子の子が本当の愛を知るまで

チョココロネ

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24 (レオン・アーヴェント視点)

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──────その後、ノアの痛々しい背中の傷を見つけ、手当てをしているうちに、彼は眠ってしまった。

傷の痛みや熱でどれだけしんどかっただろうに、それを隠して平気なふりをしていたのだと思うと、胸の奥がきしむように痛む。
そして──ノアにこんな酷い傷をつけた人間がいるのだという事実に、抑えきれない怒りが湧き上がった。

背中の傷跡を、静かに見つめる。
これは鞭で叩かれた痕に間違いない。
ノアは使用人にやられたと言って、命令した者の名前は頑なに言おうとしなかったが……ほぼ、ノアの親と見て間違いないだろう。

そう考えると───ノアは、あの家で虐げられている。そう判断するほかない。

思えばノアは、いつも怯えるように人と話していた。
誰にでも作ったような笑顔を浮かべ、敬語で距離を置き、壁を作って。
今では俺たちには敬語は外してくれたけど、他のクラスメイトと話す時は必ず敬語だ。
それに、人の視線に過剰に敏感で、他人に頼ることを極端に怖がっている。
初めて俺が直接声をかけ、軽く触れた時も、ノアは錯乱してパニックを起こしていた。
ノアのトラウマは、きっとこの辺りと深く関わっている。

「……居場所、ないんだな、お前。」

ぽつりとこぼした自分の声が、妙に寂しく響いた。

家にも学校にも、彼にとっての安心できる場所はずっとなかったのかもしれない。
最初の頃は、悪口を言われてもやり返さず、悪口を言ってくる奴らにすら普通に接するノアに、苛立ちを覚えていた。
プライドはないのか、情けない奴だ、と。
でも今は違う。
彼はただ、生きるために必死だったのだとわかる。


──どんな理由があれ、もうノアを放ってはおけない。
たとえ、彼が監視対象で俺の家と対立する立場にあったとしても。

彼が悲しむ姿を、もう二度と見たくなかった。


くまのぬいぐるみを抱きしめ、静かに眠るノアの横顔を見る。
普段より幼く見えるのは、気のせいじゃないだろう。
きっと、このクマだけが彼の味方だったのかもしれない。
ずっと、ひとりで戦ってきたのかもしれない。
最初は調査のために近づいただけだったのに。こんな気持ちになるなんて、思いもしなかった。

ノアの泣き顔が頭から離れない。
守ってやりたい。
その衝動が、どうしようもなく止まらなかった。



──ノア・グランベル。
お前はいったい、どこまで俺を振り回す気なんだ。







「ごめんね、風邪伝染るかもだし、申し訳ないから帰っていいよ……。」

放課後、再度テルノと一緒にノアの部屋を訪ねると、ベッドの上でクマのぬいぐるみを抱きしめたノアが、弱々しくそう言った。
テルノはその姿を見るや否や、「可愛いの供給過多……!」と小声で騒ぎ出す。

──正直、ノアがクマを抱いていると可愛さが倍増するのは否定しないが。

熱のせいで潤んだ瞳で見つめられると、なんだか胸の奥がざわつく。

さっき手当てしていた時も、思わず「可愛い」と口をついて出てしまったくらいだ。
──ノアに聞かれていなかったのは、不幸中の幸いだが。

「もう、帰るわけないでしょ! 僕もレオン君も、ノア君のこと心配なんだよ。
お粥作るから、ノア君は寝てていいよ。」

「う、うん……ごめん……」

申し訳なさそうに縮こまるノアに、テルノはふわりと微笑んで言う。

「ねえノア君。こういう時は、ごめんじゃなくて“ありがとう”でいいんだよ。
僕は好きでお粥を作りたいんだから、謝る必要なんてないの。」

「…………あ、ありがとう、テルノ。」

「うん、どういたしまして。」

ノアはただでさえ熱で真っ赤な頬をもっと赤くして、照れたように笑った。そして腕の中にいるくまをぎゅっと抱きしめる。
その様子に、テルノはまた奇妙な声を上げていた。

───ふと考える。
こんなふうに利害関係なく、互いに助け合える仲間なんて、いつぶりだろう。

俺の周りにはいつも、アーヴェント家という家柄だけを見て近づいてくる奴らばかりだった。
そういう連中は決まって、ノアのことを平民だと見下して馬鹿にする。
家柄を抜けば、自分なんてどうでもいい存在で、価値のない人間だと思わされてきたから……。
ノアがそういう奴らにすら普通に接するのが、昔は気に食わなかった。

でも、ノアもテルノも、あいつらとはまったく違う。
ちゃんと人の心を持っていて、相手そのものを見て話してくれる。

俺自身、気を張らずにのびのびと自分を出せたのは本当に久しぶりだ。



───そう思って、俺も心の中で、2人にそっと「ありがとう」と感謝した。



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