用済みになった貴族の養子の子が本当の愛を知るまで

チョココロネ

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「レ、レオン君……どうしてここに……」

心臓が早鐘を打つ。
一番会ってはいけない人に、一番悪いタイミングで会ってしまった。 

レオン君は、僕たちが持っている旅行用の鞄と、外出着に身を包んだ姿をじろりと舐めるように見た。

「どうして、か。……テルノから聞いたんだよ。『ノア君が急に高熱を出して、アラン君と実家に帰るらしい』ってな」

レオン君が一歩、また一歩と近づいてくる。
その金色の瞳は、怒りとも呆れともつかない暗い光を宿していた。

「……ただ、おかしいと思ったんだ。ノアは、……その、実家で酷い仕打ちを受けていたわけだろう?それなのに、わざわざ実家に帰るなんておかしいと思ったんだ。なにか隠しているんじゃいかと勘ぐって裏口で張っていたら、案の定……ってところだ。」

レオン君は僕の目の前まで来ると、いきなり僕の額に自分の手をペタリと当てた。 ひんやりとした彼の手のひらが、僕の熱い肌に触れる。

「……熱なんてねぇな。顔色は悪いが、それは後ろめたいことがある顔だ」

「っ……!」

図星を突かれ、僕は言葉を失った。 
レオン君はうっすらと笑みを浮かべ、僕から手を離すと、今度はアランを鋭く睨みつけた。

「アラン。お前、ノアに何を吹き込んだ? 病人と偽って、どこへ連れ出すつもりだ。」

「……兄様は本当に体調が悪いんだ。俺たちは実家の別邸で静養する。お前には関係ないだろ、アーヴェント」

アランが僕を背に隠し、レオン君を牽制する。 しかし、レオン君はその程度の嘘には動じない。

「関係ない、だと? ……ふざけるな」

ダンッ!!

レオン君が、僕たちの横にある校舎の壁を拳で殴りつけた。その音に、僕はびくりと肩を震わせる。

「関係ないわけあるか! 
……ノア。お前、最近おかしいぞ。アランとコソコソ隠し事をして、今度は嘘をついて夜逃げ同然の真似か? 俺が何も気づいていないとでも思ったか?」

レオン君は今度はアランを無視して、僕の肩をガシッと掴んだ。
その力は痛いほど強くて、思わず僕は顔を顰める。

「お前らの家が……グランベル家が何に関わっているか。俺が知らないとでも?」

「えっ……」

───時が止まった気がした。 
レオン君は、知っているの? お父様が裏稼業をしていることを。僕の、ペンダントのことを。人身売買のパーティのことを。

「……レオン、貴様」

アランが殺気立った声を出した瞬間、レオン君は僕の手を掴んだまま、アランを睨み返した。

「とぼけるな。俺の家も馬鹿じゃない。お前らの親父がきな臭い動きをしていることくらい、とっくに掴んでいる」

レオン君の顔が、苦渋に満ちたものに歪む。

「……親父からは、『グランベル家の子を探って秘密を暴き、ボロが出るまで泳がせておけ』と言われていたんだ。……だがな……」

レオン君は僕を強く引き寄せ、抱きすくめるようにして耳元で叫んだ。

「お前が危ない目に遭うのを、もうこれ以上黙って見ていらないんだよ!こんな夜更けにコソコソと二人だけで……一体、今度は何をするつもりなんだよ!?
……本当は、父からの命令だって黙ってようと思ってた。お前らを探るように指示されていた事。
……でも、もう放っておけないんだよ!これ以上俺を振り回さないでくれ……ノア!」

その怒鳴り声には、純粋な怒りだけでなく、深い焦燥と恐怖が混ざっていた。 

レオン君は、父に僕らを探るように言われていたのか。

───ああ、だからか。
僕の心の中で、すとんと腑に落ちた。

入学したての頃から、やけに僕のことを見ているなとは思っていたんだ。
今だって、どうして僕なんかと仲良くしてくれるんだろうとはずっと思っていたけど。ようやく、謎が解けた。

……全部、指示されてたからだったんだ。


───そう思った時、なぜか心の奥がズキっと痛んだ気がした。


「レオン君……ごめん、なさい……。」

「謝るくらいなら、全部話せ。……お前らがどこへ行こうとしているのか。何をしようとしているのか」

レオン君は僕を離さない。その瞳は、「もう逃がさない」と告げているように見えた。

アランは唇を噛み締め、僕とレオン君を交互に見ている。

───もう、隠し通せない。 
ここでレオン君を拒絶すれば、僕たちは物理的に止められるだろう。

アランは短くため息をつくと、諦めたように肩をすくめ、そして鋭い目でレオン君を見据えた。

「……話す。だが、条件がある。俺たちに協力しろ、レオン・アーヴェント」



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