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8 家族団欒の中で
しおりを挟む「うん、これで契約は完了だ」
ジェイドは俺の名前を書き記した二枚の契約書をまとめて丸めて蜜蝋のようなもので封をする。
「でもこの状態だとただ契約が結ばれただけなんだよね。このままじゃ君は契約により獲得したチカラを使うことができない。だからね……」
ジェイドは封をした契約書を正面に持ってくる。
「『創造神ジェイドの名において望み給う、我がチカラを縁とし、これを契約の証としミヤマリンに授ける!』」
ジェイドがそう力強く言い放つと、その手に持っていた契約書が粉雪のような粒子と化す。そしてそれは真っ直ぐに俺へと向かって来た。
俺は思わず避けようと体を動かそうとしたが、まるで石像になったかのように微動だにしなかった。
モタモタとしているうちに白い粒子は俺の身体に突き刺さる。だが痛みはない。それどころか身体が中からジンワリと温まるような心地良い感覚だった。
やがて白い粒子は俺の身体に全て入った。
その様子を見てジェイドは満足気に大きく頷いた。
「よし、これで本当に終わりだ。これで君はチカラを問題なく使えるようになった」
「あ、ありがとうございます」
目の前で起きた不可思議な現象に目を白黒させながらも何とかお礼を告げる。
「でもね、チカラが使えるからと言って使いこなせるとは限らない。時間も迫って来ていることだし、戻ったらすぐ練習したりなんだりしてみることだね」
「はい、分かりました」
(ジェイドさんのいう通りだな)
確かにチカラを使うと使いこなせるの違いはある。俺の身近なもので例えるなら、ゲームの操作方法だろう。どんなに取扱説明書とかを読み漁っても、実際に触れて見なければ使い勝手も難しさも分からない。
俺はジェイドの言う通りに戻ったら直ぐに試してみることにした。
「それじゃ、用も終わったしそろそろお別れだ。もう一度念の為に伝えておくよ? 次の君の命日は今日を含めて3日後だ。分かったね?」
「はい、バッチリ頭に入ってます!」
「うん、いい返事だ! それじゃあ目を瞑ってくれるかな? ちょっと眠くなると思うけど、目が覚めたら元の場所にいるはずだ」
「分かりました」
俺は言われた通りに目を瞑った。すると不思議なことに急速に眠くなって来た。
俺はその睡魔に抗うことなく意識を闇に落とした。
「必ず、生き延びてくれ……————」
ジェイドは燐の消えた空間に、そぅっと呟いた。
☆
「……ちょっと、どうしたのねぇ!?」
誰かが俺の身体を揺すっている。そこに間近から心配をする女性の声が聞こえる。
「ねぇ、大丈夫? しっかりしなさいよっ!」
だんだん意識が明瞭になりハッキリと声が聞き取れる。
(これは、アーリィの声だっけか?)
いや、間違いない、この声はアーリィだ。どうやらアーリィが俺の身体を揺すっているようだ。
(ってマジかよ! 今俺は女の子に身体を揺さぶられてるのか!)
男子必見の夢……それは可愛い女の子に起こしてもらうこと。それが今まさに現在、俺が体感しているッ!
(まさか実現するなんて……!)
感動のあまり涙が溢れそうだ。しかし俺はそれをグッとこらえ
「え、え? 涙? 何で涙なんか……」
きれていなかったようだ。確かに俺の頰に涙の伝う感触が確かめられた。
「っ、もしかして辛いこととかあったのかしら……。きっと嫌な夢とか見てるんだわ…!」
それを見たアーリィは完全にあさっての方向へと誤解してしまっていた。これはマズイなと流石に思った俺は誤解を解こうとすぐさま身体を起こそうとするが、
「私にはこれくらいしかできないけど……、よし…よし…」
さわさわとアーリィの滑らかな感触の女性特有の手が、俺の頭を優しく撫で始める。
(ッッッ!? いきなりなにしてるんだこいつ!)
突然の出来事に動かそうとしていた身体が静止する。
(子供扱いかよ……)
アーリィにされるがままに身を委ねているオレ。頭を撫でられる機会など今までに無い体験だった。だが流石に羞恥心が勝り、狸寝入りを悟られないようにゆっくりと瞼を上げた。
「…ん、あれ? アーリィ? なにしてるの?」
「え……?」
アーリィは、俺が直ぐに起きるとは思わなかったのかボウっとこちらの顔をまじまじと見た後、視界に入る俺の頭に触れていた自分の手を見つける。
「わわわ、な、なんでも無いわよ! ちょっとここに何かついてたからねっ、気になったから取ってあげたのよっ!」
そう言ってアーリィは俺の頭の上に置いていた手を慌てて退けた。俺はその時ここぞとばかりに素早く起き上がる。
「アーリィ何してるの、ご飯食べようよ」
「あ、うんそうね」
アーリィもその場から立ち上がり食卓へと向かう。
俺は元から座っていた場所へと腰を下ろした。
「じゃあ私はみんなを呼んでくるわね!」
そう言ってアーリィは早足で階段を上って言った。
俺はアーリィの背中が見えなくなるまで見送った後、目の前の料理に視線を移す。どれも元の世界では見たことのない食材が随所に使われているようだ。思わず味見したい衝動に駆られるがグッと堪える。
料理を睨むこと数分、階段から何者かが降りてくる騒がしい足音が聞こえる。そしてやがて足音の主たちの姿が見えてくる。
最初に降りて来たのはリラだった。リラは俺と打ち解けたからなのかこちらを視認するなりトテテテと駆け寄って来た。
「リンさーん!」
「うおっと、やあリラちゃん」
駆け寄って来たリラの頭を優しく撫でてやる。
「ふふふ、くすぐったいです」
ニヨニヨしながら俺に頭を撫でられるリラ。
(ん~可愛いッ! 最高だなこの時間!)
俺が最高のひと時を味わっていると次に降りて来たのはアイーシャだった。
「あら、リン君さっきぶり」
「あ、え、とアイーシャさん? こちらこそ」
「あらもう名前覚えてくれてたの? 嬉しいわねぇ」
朗らかに笑うリラのお母さん。その笑顔を見るとついこちらも頰が緩んでしまう。
アイーシャさんは恐らくいつもの定位置であろう場所に腰を落ち着けた。
すると図ったかのように最後の人物が降りてくる。
「……! おおリン君か、そういえば私が家に招待したんだったな」
恐らく俺のことを少し前まで完全に記憶に埋もれさせていたのだろう反応をするリラのお父さん。
「ええ、はは、お邪魔してますグリアスさん」
「なに、私が呼んだのだから構わないさ、ゆっくりするといい」
そういってグリアスはアイーシャの隣に着席した。
「よし、みんな揃ったわね! ってリラ、あなたも早く座りなさい?」
「うん、分かったー!」
小さい子特有のハイテンションな返事をして、リラは俺の隣に座った。
そして再度皆が着席したのを確認したアーリィは自分も席に着いた。
「それじゃ食べましょ!」
「ああ、頂こう」
「えへへ食べる~」
「そうね」
口々にそれぞれがそう言って食事に手をつけ始めるなかで、俺も食事を頂く為に日本人ならば誰でも知ってる馴染みの言葉を呟いた。
「いただきます」
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