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Ⅱ 貴族アルファが来る
①
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父と畑で衝突した次の日、母からとんでもない提案をされた。驚きで、ウルイの冷や汗が止まらなくなっている。
「いやいや、無理があるって。本当に無理だよ。僕は男だから、ね」
母に言い聞かせるように、ゆっくり話した。
「でも、万が一ってことがあるじゃない? もし成功したらオメガになれるのよ? ウルイがオメガになったら、母さんたちは胸を張ってオアシスに入れるわよね?」
オメガは誰でもなれると知った母が、名案を思いついたかのようにウルイに迫っている。つまり、ウルイにオメガになれ、と言うのだ。
「母さん、オメガは上級家庭が選ばれるらしいよ。僕じゃ相手にならないから」
真剣な顔の母が怖い。
「母さんの言う通りかもな。それもありかも、しれん。今は男性同士の結婚もありふれている。もしウルイがオメガに選ばれたらオアシスの奴らを見返すチャンスになる。よし! ウルイ、何とか容姿を整えなさい。服を新しく買うといい」
父まで母に賛同する。
「絶対、無理でしょ。それより少しでも生活のためにお金使うべきだって。あ、そうだ。仕事に早く来いって言われているから。もう行くよ」
「待ちなさい!」
父と母から逃げるようにウルイはオアシスに向かって走った。ウルイの心は張り裂けそうだった。
父と母はずるい。本当はこんな暮らし嫌だとわかっているのに、抜け出すための努力をしない。すべてをウルイの肩に乗せてくる。
(もう嫌だ! 何がオメガだ! もっと現実を見ろよ!)
そんなやるせない気持ちでウルイは走った。
しばらく走って、オアシス外れの湖にウルイは腰を下ろした。
ここは自然動物用に作られた人工湖だ。野生動物が集まるから、オアシスの人々は怖がって近くに来ない。
湖周囲は自然の緑地となっていて気持ちが良い。ウルイの秘密の場所だ。今日はガゼルが数頭、水を飲んでいる。
わずかな木陰に座り込み、そのガゼルに見入った。仲間か家族のように寄り添うガゼルたち。
五十メートルほど先には華やかなオアシス街が広がる。ウルイは大きくため息をついた。
(僕も野生動物なら良かったな)
小石をポチャンと湖面に投げ入れた。ガゼルがびくりと耳を立たせてウルイを見てくる。
「あぁ。ごめん。驚かせたね」
少し距離があるけれど声をかけてみた。
『別にいいよ』
ガゼルからそんな声が聞こえて来そうだった。ウルイが微笑むと、ガゼルは興味なさそうに湖に視線を戻した。
「君たちは、いいな。自分で生きる力を持っていて羨ましい。僕も仲間に入れてほしい」
ウルイの呟きはガゼルに無視される。
苦笑いをして、ウルイはごろりと草の上に寝転がった。
仕事の時間まで三時間以上ある。父と母の迫力に負けて早く家を出すぎた。
おかげで食事を食べ損ねた。ウルイの家は節約のため食事は一日二回にしている。ウルイは仕事前の昼食と仕事後に夕食、と決めていたのに。
仕事前の一回を食べないのは辛いなぁ、と腹をさすった。
「いやいや、無理があるって。本当に無理だよ。僕は男だから、ね」
母に言い聞かせるように、ゆっくり話した。
「でも、万が一ってことがあるじゃない? もし成功したらオメガになれるのよ? ウルイがオメガになったら、母さんたちは胸を張ってオアシスに入れるわよね?」
オメガは誰でもなれると知った母が、名案を思いついたかのようにウルイに迫っている。つまり、ウルイにオメガになれ、と言うのだ。
「母さん、オメガは上級家庭が選ばれるらしいよ。僕じゃ相手にならないから」
真剣な顔の母が怖い。
「母さんの言う通りかもな。それもありかも、しれん。今は男性同士の結婚もありふれている。もしウルイがオメガに選ばれたらオアシスの奴らを見返すチャンスになる。よし! ウルイ、何とか容姿を整えなさい。服を新しく買うといい」
父まで母に賛同する。
「絶対、無理でしょ。それより少しでも生活のためにお金使うべきだって。あ、そうだ。仕事に早く来いって言われているから。もう行くよ」
「待ちなさい!」
父と母から逃げるようにウルイはオアシスに向かって走った。ウルイの心は張り裂けそうだった。
父と母はずるい。本当はこんな暮らし嫌だとわかっているのに、抜け出すための努力をしない。すべてをウルイの肩に乗せてくる。
(もう嫌だ! 何がオメガだ! もっと現実を見ろよ!)
そんなやるせない気持ちでウルイは走った。
しばらく走って、オアシス外れの湖にウルイは腰を下ろした。
ここは自然動物用に作られた人工湖だ。野生動物が集まるから、オアシスの人々は怖がって近くに来ない。
湖周囲は自然の緑地となっていて気持ちが良い。ウルイの秘密の場所だ。今日はガゼルが数頭、水を飲んでいる。
わずかな木陰に座り込み、そのガゼルに見入った。仲間か家族のように寄り添うガゼルたち。
五十メートルほど先には華やかなオアシス街が広がる。ウルイは大きくため息をついた。
(僕も野生動物なら良かったな)
小石をポチャンと湖面に投げ入れた。ガゼルがびくりと耳を立たせてウルイを見てくる。
「あぁ。ごめん。驚かせたね」
少し距離があるけれど声をかけてみた。
『別にいいよ』
ガゼルからそんな声が聞こえて来そうだった。ウルイが微笑むと、ガゼルは興味なさそうに湖に視線を戻した。
「君たちは、いいな。自分で生きる力を持っていて羨ましい。僕も仲間に入れてほしい」
ウルイの呟きはガゼルに無視される。
苦笑いをして、ウルイはごろりと草の上に寝転がった。
仕事の時間まで三時間以上ある。父と母の迫力に負けて早く家を出すぎた。
おかげで食事を食べ損ねた。ウルイの家は節約のため食事は一日二回にしている。ウルイは仕事前の昼食と仕事後に夕食、と決めていたのに。
仕事前の一回を食べないのは辛いなぁ、と腹をさすった。
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