発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅴ 王都での生活(後編)

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ライとの二人だけの外出が嬉しい。毎日を伯爵邸内で過ごしていたウルイにとって、王にきて初のお出掛けだ。

 侍従も侍女もつけなくて良いのだろうか、と不安になった。しかし、もともとライはオアシスに単独調査に来るタイプだから良いらしい。

 美味しいものを食べさせたい、とライが張り切っている。そんなライを見ると、ウルイもウキウキした。

「ウルイ、こうして二人で出かけると出会った頃を思い出すね」
 馬車に揺られながら、ライが話しかけてくる。

「浮遊移動車じゃないんだ。馬車も使うんだな」
「もちろんだよ。むしろ近距離なら馬車の方が小回り利いていいからね。あ、浮遊移動車の方が良かったかな?」

「いや、どっちも僕はこれまで乗ったことが無いから楽しいよ」

「そっか。これからは伯爵邸の全てのモノはウルイのものでもある。好きに乗っていいし使って良い」
 ライの言葉に驚いて、ウルイは首をぶんぶんと横に振る。

「な、何言っているんだ。そんなこと出来ないって。僕はただの貧乏人で無教育の、奴隷以下の存在なんだから」

 いつもササラに言われている言葉が口から出た。言ってみると楽しかった気分がグンと落ちこむ。

 せっかく忘れていたのに。ウルイはため息をついて馬車の外を眺めた。

「ウルイ。こっち見て。ウルイは俺の番だ。自信を持っていい。ウルイほど優しく一生懸命で家族思いな者はいない。ウルイは俺が選んだ俺のオメガだ。ウルイの存在価値は俺の命以上だから」

 ライが席を立ちウルイに膝をついた。
 貴族が目下の者にむやみに膝をついてはいけない、とササラが言っていた。ウルイは驚いて慌てた。

「わかった! わかったから、席に戻って」
 必死で伝えるとライが微笑んで向かいの席に戻る。

 この様子を窓の外から見られていなかったかと心配になり、ウルイは冷汗をかいた。ライは貴族なのに驚く行動をする。

「ライはさぁ、ちょっと貴族らしくしてくれたら、僕が助かるよ」

 大きく深呼吸して伝えた。途端に「ブハッ」と吹き出して腹を抱えてライが笑う。

 真剣に注意してあげたのにバカにされたようで、ウルイの心に怒りの様な感情が沸き上がる。

「もう、もう、ライなんか知らないからな!」
 怒りに任せて精一杯言ったのに、さらにライが笑い転げた。

 ウルイは完全に頭にきてライを見ずに窓の外に目線を移した。もう話してやるものか、と態度で示した。

 しばらくして、笑いの落ち着いたライがウルイの隣に座ってくる。ウルイは思いっきりそっぽを向いた。

「ごめん。機嫌直して。ウルイと居ると俺は、貴族でもアルファでもなくただの『ライ』で居られる。すごく嬉しいよ」

 ライの言っている意味が理解できず、ウルイは眉間に皺を寄せる。

「ただのライって何? ライは伯爵でアルファだろ? 言っていることが、ハチャメチャだ」

「うん。ウルイはそれでいい。あぁ、神様に感謝したい。ウルイと番になれて幸せだ。俺は自分がアルファで良かったと心から思える」

 ライが何に感謝しているのか全く分からず、ウルイはため息をついた。ウルイはオメガになったことを感謝などできない。

 きっとウルイが無教養の貧乏人だから、ライの言葉が理解できないのだ。これ以上『分からない』と言うことが出来ず、静かに馬車に揺られた。

 少し心が痛かった。
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