発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅵ オアシスの変化

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「ウルイ、大丈夫? ちょっと、予想外だったよね」
 以前と同じ部屋に滞在が決まり、宿に着き次第室内に閉じこもった。人に会いたくなかった。

 ウルイは先ほどの家族の様子に衝撃を受けて、ただ呆然とした。静かにしばらく過ごしたかった。

 ウルイの心が落ち着くまでライは待ってくれた。

「どうしよう。何か、良くないことになっている気がする。家族や集落の皆が笑顔で食べることに困らない暮らしをしていると僕は思っていたんだ。でも、あれじゃ皆から嫌われる悪者だ。あんな、傲慢な父は知らないよ。あんなの、望んでない」

 苦しい胸の混乱をライに話した。話していて気がつく。
 あんな父や家族の変わり様を望んだワケでは無い。

 きっとウルイの家族は、オアシスで慎ましやかに幸せに笑って居るのだ、と勝手に思い込んでいた。あんな風に、ふんぞり返って偉そうになっていると思っていなかった。

 何故か悔しい気持ちがウルイに湧き上がっていた。
「うん。俺もウルイと同じだ。少しでもオアシスで楽に暮らせるよう手配したのだけど、方向がズレたのかも。ちゃんと把握できていなかった俺の責任だ。ウルイは気にしなくていい」

「いや、気にするって。父を変えたのは、きっと僕だ。僕がオメガになったからだ。あんなの嫌だよ。貧しくても助け合って、人を大切にしていた父さんに戻って欲しいよ」

 言いながら悲しくて涙が溢れた。

 ライは「ゴメン。ウルイのせいじゃない。全部、俺のせいだ」そう言ってウルイの肩を抱き続けた。

 気持ちが落ち込んでしまい夕方まで宿にこもっていた。途中訪室した人から夕食はウルイの家族の家に招待する、と伝えられた。夕刻過ぎにウルイの家族の家に行く返事をした。

「あ、そうだ。夕食前に『水色キッチン』に行かないか? ほら、懐かしい人たちに会えば元気が出るかもしれない」

 ライの言葉にウルイの心がドキリとする。水色キッチンの優しいオーナーや店員たちに会いたいと思った。あまりに変わっていた父や母を見てしまい、変わらずに穏やかなものを知りたかった。
 それを見たら気持ちが救われるような気がした。

「行きたい。水色キッチンに行こう」
 ウルイが顔を上げるとライが「もちろん」と返事をしてくれた。

 出迎えでオアシスの人たちの空気がぴりっとしていたから、目立たずに行くことにした。ライとウルイは平服を着て帽子で顔を隠した。

 ライを見ると黒のハット帽を深めに被っている。目元が見えないと怪しい人だ。ウルイは軽く微笑んで、自分の頭のキャスケット帽子を深めに被り直した。

 護衛は距離を置いてついてもらう事にして、こっそり二人で宿を出た。

 この宿は高級な一番街に位置している。水色キッチンのある三番街まで移動しなくてはいけない。夜の食事会に間に合うように早足で向かった。

「え? 嘘だ……」
 水色キッチンに到着して、ウルイは店の入り口で立ち尽くした。

 あんなに繁盛していた賑やかな店は閑散としていた。締め切られた店の入り口に『閉店』と書かれたプレートが付けてある。

「え? え?」
 意味が分からなくてウルイは驚きの声を隠せなかった。足元が震えそうなウルイの肩をライが抱き支えてくれた。
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