発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>

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アルファは全てにおいて優れている。神の恵みを受ける者と言われている。

 だが、万能では無い。せいぜい人より少し頭が良いとか、身体能力が優れている程度だとライは思っている。

 それでもアドレア国が急速に発展したのは、『アルファ』と自覚した者たちが必死で努力した結果だ。

 人々の期待に応え、国を豊かにしたいという願いのもと、身を粉にして尽力したから豊かになったのだ。そのアルファたちの偉業と功績を知り、幼い頃のライは感動で身震いしたのを覚えている。

 そして、知能テストや身体能力の結果から「お前も『アルファ』なのだ」と言われた。先人たちに恥じないように、国のため人のために自分に何ができるか常に考えた。

 結果、ライが向いていたのは工学技術開発だった。どう開発すればいいのかがピンと思いつく。それを形にしていくのは時間を忘れるほど夢中になることだった。軍部では偵察機器と通信機器の開発が進んだ。

 情報通信機器は王都と遠く離れたオアシス都市部を繋ぐために役立つ。さらに偵察機として成功すればアドレアの周辺国の動向がわかり自国の防衛になる。情報は力となる。

 ライが所属する軍中枢部では、国内の各オアシス都市での試用運行をする段階まで計画が進んでいた。急ぐことでは無く、慎重に物事を進めていた。



 だが、隣国のガリイ国に小型偵察機を飛ばしていれば良かった。後悔ばかり考えてしまいライはため息をついた。

「そこ、図体のデカいの! もたもたするな! 早く運べ!」

 作業の手が一瞬止まったことで、土木作業の見張りをしている中太りの監視員から怒鳴られた。監視員は皆、ガリイ国独特の腰巻き付きの服を着ている。見せつけとばかりに地面に向けて男が鞭をしならせる。

 ビュンっと風の音にバチンと地面が叩かれる音。それだけで周囲の者が身体をビクッとさせる。皆、この鞭に嫌な記憶があるのだろうと思える反応だ。

「サボると鞭で打ち付けるぞ!」
 怒鳴り声に怖がる態度を見せて、ライは必死で働いているふりをした。

 ライの力なら倍以上働けるが、ここでは自分がアルファだとバレるワケにはいかない。アドレア国以外にはアルファが存在しない。『アルファ』はアドレアの国家秘密なのだ。

 だから周囲の奴隷に紛れて疲労困憊で働いているように装う。そうしながら奴隷たちの様子と監視員の観察に意識を向ける。まずは、この場所を知ることが重要だ。

(あぁ、ウルイ。無事で居て……)
 心の奥底で願いながら状況把握に全力を注いだ。



 あの日、オアシスの宿に戻ったらウルイが部屋に居なかった。慌てて周辺にいる護衛に確認したが、宿から外出した様子は無かった。

 おかしいと思い部屋に設置しておいた偵察機器の映像情報を確認すると、ウルイが連れ去られる様子が映っていた。すぐに宿の管理者に確認し、使われた浮遊移動車を追った。

 ウルイに何かあったら、と不安になり一秒でも無駄にしたくなかった。護衛を待たず、一人で浮遊移動車に乗りウルイが乗せられた車を追った。

 すると戻ってくる浮遊移動車と遭遇した。逃げようとする車を追いかけ停止させた。

 すぐさま乗車していた者を引きずり出した。中にウルイは居なかった。だが、車内にはウルイの匂いが残っていた。こいつらがウルイを攫ったと思うと怒りで殺してしまいそうだった。

「ウルイをどうした!」
 砂漠の砂に男を叩きつけて問いただした。冷静でなど居られなかった。

「あいつは、砂漠に捨てた! 俺たちのオアシスをぶち壊した罪だ! オアシスの罪人は犬ハイエナの餌食になるんだ!」
 叫ぶ男の声を聞きライは怒りで身体が震えた。

「ウルイが何かしたのか! お前たちはウルイの家族が憎いのだろう。ウルイに八つ当たりするな!」

 怒鳴り散らすと男どもは失神した。アルファの威圧が強烈に出てしまったのだと思った。だが、そんなこと気にして居られなかった。

 彼らを放置して、彼らの来た方向をたどった。ウルイを助ける事で頭がいっぱいになっていた。

 ――この時、一人で行動をした軽率さを心から後悔している。
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