発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>

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 ライの発情期周期は三か月だ。次の発情期が来るまで二か月ほど。
 それまでにガリイ国を脱しないと大変な事になる。この場で発情したら間違いなく殺される。ウルイも殺されるだろう。
 そのことを想像してライは大きく身震いした。

 ライたち重労働者の作業は国境に壁を作る事だ。
 ガリイ国は急速に発展したアドレア国に恐怖心を抱いている。いつかガリイ国に攻め込むのではないか、と危機感を持ったようだ。

 そこで、アドレアとの国境を高い壁で隔てる策を立てた。その労働のためにライたちは集められている。

(こんな丸太の様な原始的な壁など意味がないだろう。この地盤は砂混じりだ。壁を立てても朽ちるか倒れる。長持ちしない。それを理解しているのだろうか)
 この作業の無意味さにライの口からため息が漏れる。

 近くの森から木を切り出し木材に形成する。乾燥させて馬や人力で木材を運び、指定された場所に二メートル以上の高さで壁として立てる。

 だがこの程度の柵など、アドレアの軍用浮遊移動車で衝突したら一瞬で倒れそうだ。思わず笑みがこぼれてしまう。

 少し考えれば無駄な事をしていると分かりそうなのに、この国には進言する人が誰もいないのだろうか。ガリイ国は文明が百年以上前のままだ。

 アドレアとの国境からガリイ国側には森林が広がる。こちらからアドレアを見ると不思議になる。
 なぜアドレア国側は砂漠なのだろう。ガリイ側との違いは何だろう。木材の柵を作りながらアドレア国を見つめた。

「おい、手を止めるんじゃない。監視の鞭がくるだろうが」
 ともに作業する中年男性に注意された。

「すみません。少し気になって。この柵は役に立つのでしょうか」
 ガリイ国の人がどう思うか聞いてみたくて質問してみた。

「役に立つかなんか知るもんか。国王様や貴族様が決めたことなら従う。やれって言われたことをすればいいんだ。それだけだ」

 男性が『当然のことを聞くな』とでも言いたそうに答えた。

 それを聞いてこの国がなぜ発展しないかが分かった気がした。

 皆、目の前のことが正しいのか考えていない。いや、考えることを放棄するように教え込まれているのかもしれない。

「そう、ですね」
 感情を込めずに返事をして作業を進めた。

 ライは、この場に居るすべての者が哀れに思えた。



「ウルイ、調子は?」
 夕食の混雑の中でウルイを見つけて声をかけた。

「ライ。お疲れさま。僕の方は大丈夫だよ」
 安堵したようにウルイが微笑んでくれる。この顔を見るだけで癒される。今日もウルイが元気で良かったと思える。

「食事もらった? 外で食べよう」
「うん」

 毎日ほぼ同じメニューの食事をトレーに乗せてウルイと外に向かった。お決まりの廃材に座る。

「ウルイ、今日は何の作業?」
「僕は農作業だよ。ライと違って軽作業だから大丈夫」
 軽く微笑むウルイを見ると、抱き締めたくて腕が震えた。

 うなじにキスをしたい欲望が沸き上がる。だが、深呼吸して気持ちを落ち着ける。ウルイに伸びていきそうな腕を必死でなだめた。

 あまり密着していると目立ってしまい逃げる時に不利になる。分かっているから触れたい気持ちをグッと堪える。

 それでも少しだけウルイの体温を感じたくて、周囲に見えないようにウルイの手に触れた。ウルイがビクっと反応してすぐに手を引っ込めた。

 その不自然な動きと、手に残るウルイの体温に違和感が生じる。

 これは、きっと間違いではない。心配になってウルイの顔を見ると、困ったように下を向く。

「ウルイ、熱がある? 体調、良くないよね」

 こちらを見ないままウルイがコクリと頷く。
 ライの心臓が不安でドクドクと鳴り出した。
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