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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>
⑧
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奴隷宿舎である倉庫のような広い小屋に寝転がり、ライは脱走手段を考えた。
一つの宿舎に百人ほどが収容されている。夜間監視員は数名だけ。他に奴隷宿舎が五棟ある。少し離れて監視塔と監視宿舎があり、食事場に家畜小屋と野菜畑がある。
これがこの労働奴隷収容所の敷地内全てだ。
ここを拠点として重労働者は、森へ木材の切り出しと国境沿いに作業に駆り出される。
対してウルイの担当する軽労働者は、敷地内の畑作業や宿舎清掃、食事場を担当する。軽労働者宿舎はライの重労働者宿舎と一番離れた宿舎だ。
連れ出すなら夜間の監視が少ない時間がいいだろう。
しかし、アドレア国内に行ったとして、オアシスまで辿り着かないと野垂れ死にする。アドレアに入れば砂漠地帯だ。国境から一番近いオアシスはウルイが住んでいたオアシス都市だ。
そこまでは浮遊移動車でも三十分以上かかる。馬やラクダなら二時間かかるだろう。とても自力では生還できない距離だ。
どうしたものかと悩んでいると、隣の寝床から「う~~」と唸る声が聞こえた。眠れていない様子が伝わってくる。
「どうしました?」
小声でライがたずねた。
「あぁ、すまない。どうにも腰が痛くて」
小声の返答が聞こえてくる。
「薬とかないのですか?」
「薬? 俺たちにか? いやいや、お前はおかしな奴だな」
少し笑われたが、聞いてみたい事のチャンスだと思った。
「痛みで動けない場合や、病気になったらどうするのですか?」
「は? そりゃ破棄処分だろ」
聞きなれない言葉に嫌な予感がした。
「破棄処分って、何ですか?」
「お前、どこの育ちだよ。あぁ、記憶喪失だったか。破棄って言ったら殺して捨てる、だろ。使えないモノは壊して破棄。常識だ」
「では、明日あなたが破棄処分と言われても平気なのですか?」
「ま、そうなったら仕方ないな。明日は腰が痛くても働けるよう願うだけだ」
う~~ん、と腰を伸ばして寝る体制に入る男性にそれ以上は質問できなかった。
この国の人たちの生きる基準がおかしい。この生き方を普通と思わせているガリイ国がおかしい。
ウルイが破棄処分などと言われたら、と考えて、恐怖に冷たい汗が流れた。
ウルイの熱と痛みが悪化しないように心から願った。
(早く脱走する準備をしなくてはいけない。ウルイの体調が急に悪くなることもある。何か手段を)
日中の作業中はそればかりを考えた。
ガリイ国は動力として機械を利用していない。人力や馬力を用いている。
脱走に使うなら木材運搬に使われている馬しかない。
ここの馬たちは労働力として馬力を重要視されていて走りは速くない。だが、持久力はある。脱走には十分だ。
もし馬を盗むとしたら、馬が暴れないように懐いてもらわなくてはいけない。連れ出すときに暴れられたら監視に見つかってしまう。
ライは木材を荷台から降ろすときに、馬たちに接触を試みた。
監視の目を盗み、馬をねぎらうように触りながらアルファの威圧を少し出す。それに反応してライに視線を向ければライに従う意思がある馬だ。
アルファの威圧に敵意を見せるならライとは相性が悪い。
(お願いだ。俺たちを助けて。アドレアまで一緒に行ってくれ)
そんな願いを込めて馬に触れた。どの馬も疲弊した様子を見せている。大切にされていないのは分かる。
(こんな重労働ばかりで疲れるよな。お前たちも辛いよな。一緒に俺たちの国へ行こう)
伝わるように目を見て語りかけた。ほとんどの馬が生気のない目を下に向けたが、一頭だけライと目を合わせた馬がいた。
「いい子だ」
小さく声をかければ『ブルル』と鼻を鳴らす。毛並みを撫でれば馬の瞳が和らぐ。古傷なのか左耳が切れている。
「おい! 邪魔だ! 馬から離れろ。移動する」
監視に声をかけられて馬から離れる。荷を下ろしたばかりの馬が鞭打たれて出発する。
(少しは馬の休憩もいれろよ!)
馬の扱いの悪さに腹がたった。いや、人の扱いも最悪だ。ガリイ国は好きになれない。
一つの宿舎に百人ほどが収容されている。夜間監視員は数名だけ。他に奴隷宿舎が五棟ある。少し離れて監視塔と監視宿舎があり、食事場に家畜小屋と野菜畑がある。
これがこの労働奴隷収容所の敷地内全てだ。
ここを拠点として重労働者は、森へ木材の切り出しと国境沿いに作業に駆り出される。
対してウルイの担当する軽労働者は、敷地内の畑作業や宿舎清掃、食事場を担当する。軽労働者宿舎はライの重労働者宿舎と一番離れた宿舎だ。
連れ出すなら夜間の監視が少ない時間がいいだろう。
しかし、アドレア国内に行ったとして、オアシスまで辿り着かないと野垂れ死にする。アドレアに入れば砂漠地帯だ。国境から一番近いオアシスはウルイが住んでいたオアシス都市だ。
そこまでは浮遊移動車でも三十分以上かかる。馬やラクダなら二時間かかるだろう。とても自力では生還できない距離だ。
どうしたものかと悩んでいると、隣の寝床から「う~~」と唸る声が聞こえた。眠れていない様子が伝わってくる。
「どうしました?」
小声でライがたずねた。
「あぁ、すまない。どうにも腰が痛くて」
小声の返答が聞こえてくる。
「薬とかないのですか?」
「薬? 俺たちにか? いやいや、お前はおかしな奴だな」
少し笑われたが、聞いてみたい事のチャンスだと思った。
「痛みで動けない場合や、病気になったらどうするのですか?」
「は? そりゃ破棄処分だろ」
聞きなれない言葉に嫌な予感がした。
「破棄処分って、何ですか?」
「お前、どこの育ちだよ。あぁ、記憶喪失だったか。破棄って言ったら殺して捨てる、だろ。使えないモノは壊して破棄。常識だ」
「では、明日あなたが破棄処分と言われても平気なのですか?」
「ま、そうなったら仕方ないな。明日は腰が痛くても働けるよう願うだけだ」
う~~ん、と腰を伸ばして寝る体制に入る男性にそれ以上は質問できなかった。
この国の人たちの生きる基準がおかしい。この生き方を普通と思わせているガリイ国がおかしい。
ウルイが破棄処分などと言われたら、と考えて、恐怖に冷たい汗が流れた。
ウルイの熱と痛みが悪化しないように心から願った。
(早く脱走する準備をしなくてはいけない。ウルイの体調が急に悪くなることもある。何か手段を)
日中の作業中はそればかりを考えた。
ガリイ国は動力として機械を利用していない。人力や馬力を用いている。
脱走に使うなら木材運搬に使われている馬しかない。
ここの馬たちは労働力として馬力を重要視されていて走りは速くない。だが、持久力はある。脱走には十分だ。
もし馬を盗むとしたら、馬が暴れないように懐いてもらわなくてはいけない。連れ出すときに暴れられたら監視に見つかってしまう。
ライは木材を荷台から降ろすときに、馬たちに接触を試みた。
監視の目を盗み、馬をねぎらうように触りながらアルファの威圧を少し出す。それに反応してライに視線を向ければライに従う意思がある馬だ。
アルファの威圧に敵意を見せるならライとは相性が悪い。
(お願いだ。俺たちを助けて。アドレアまで一緒に行ってくれ)
そんな願いを込めて馬に触れた。どの馬も疲弊した様子を見せている。大切にされていないのは分かる。
(こんな重労働ばかりで疲れるよな。お前たちも辛いよな。一緒に俺たちの国へ行こう)
伝わるように目を見て語りかけた。ほとんどの馬が生気のない目を下に向けたが、一頭だけライと目を合わせた馬がいた。
「いい子だ」
小さく声をかければ『ブルル』と鼻を鳴らす。毛並みを撫でれば馬の瞳が和らぐ。古傷なのか左耳が切れている。
「おい! 邪魔だ! 馬から離れろ。移動する」
監視に声をかけられて馬から離れる。荷を下ろしたばかりの馬が鞭打たれて出発する。
(少しは馬の休憩もいれろよ!)
馬の扱いの悪さに腹がたった。いや、人の扱いも最悪だ。ガリイ国は好きになれない。
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