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Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>
⑨
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食事の時間になりウルイを探した。混雑の中でもライはすぐにウルイが見つけられる。
「ウルイ! 調子は?」
そばに行き真っ先に顔を見た。食事のトレーを持ったまま、困ったようにウルイが微笑む。やはり顔色が悪い。
「外で食べるのは辛いかな?」
「いや、どこでも一緒だよ。中は席とれないよ」
ウルイの声が意外にもしっかりしていて安堵した。トレーの上のご飯は相変わらず代わり映えしないメニューだ。
もっと栄養のあるものを食べさせて休ませてあげたくて悔しくなる。
ウルイを誘導していつもの廃材の場所に行く。席に着くときにウルイの手に触れてみた。やはり熱が出ている。
「昨日より熱いね」
「そうかな。これくらいは平気だって。貧乏暮らししていた頃は、熱出ていようが働いたし」
「そっか。ウルイは頑張って生きてきたからな」
ウルイが深呼吸して空を見た。
「いや、頑張ったわけじゃない。普通だよ。ここの人たちを見て分かった。生まれた環境で人の幸福って変わる。僕はライと出会って、環境が変わるチャンスがもらえて良かった。色々あったけど、世界が広がったと思う。だけど、この人たちには抜け出すチャンスがない。この状況を受け入れるしかないから、頑張っているとか苦しいとか分からないんだ。やるしかないから、そうしているんだ。以前の僕も同じだ」
ウルイの言葉にライは愕然とした。
やるしかない状況で生きている人を、頑張っているとか、哀れだと考えた自分の狭量さが恥ずかしくなった。この状況をそんな風に見ているウルイがカッコイイと思えた。
「ウルイは、凄いな」
心からそう思えた。
「いや、ライの方がスゴイだろ」
小さな声で「アルファだし」と呟くウルイを抱き締めてキスしたいと思った。
だが、時間が限られている。この時間しかウルイと話せないから欲望をグッと抑える。
「ウルイの仕事の事だけれど、畑での作業と家畜も世話しているって言っていたよね」
「うん」
「畑にはニンジンや葉野菜はある?」
「あるよ」
「どのあたりに植えてある? 畑の周囲には見張りや侵入防止の柵とかあるのかな?」
「えっと、僕たちが寝る収容所宿舎があるだろ? その裏手にある畑の一番奥が葉野菜だよ。ニンジンとか根野菜が手前側。畑は宿舎三つ分くらいあって広い。侵入防止の柵はない。食材を盗まないように監視に見られている、かな」
「分かった。馬小屋はどのあたりかな?」
「畑を挟んで僕たちの収容所の反対側だよ。家畜小屋と並んでいる」
「そうか。左耳が切れている馬が居たら、どのあたりに繋がれているか覚えておいて。あとは、監視の宿舎は知っている?」
「うん。掃除番になると監視棟や宿舎の掃除に入るから分かる。監視の宿舎は家畜臭いのが来ないようにって離れているんだ。労働奴隷宿舎から真っすぐの青い木造の建物が監視の宿舎だよ」
ウルイの説明でここの敷地の全体像がつかめた。日中に敷地の建物と位置関係は把握していた。建物が何に使われているのか分かれば脱走ルートが確保できる。
「ありがとう。俺からの情報も言うよ。ここで働けない人は破棄処分される。使えなくなると殺して新たな奴隷を連れてくるシステムだ。だから、仕事を休むことや働けない姿を見せるのはダメだ。ウルイの傷の炎症が悪化すると高熱を起こす。今はギリギリ微熱止まりだよね。だから、早急にここを出ることを考えている。俺はウルイを連れて戻る。それまで、何とか耐えていて欲しい」
小さな声で早口で伝えた。ウルイはコクコクと頷いた。ウルイが無言で頷いている時は話を良く理解をしている証だ。
そんな小さな癖が愛らしくて心が温まる。もう少し話したいと思ったけれど。
『ピーー』
高い笛がなる。
「あ、戻らなきゃ」
ウルイが立ち上がった。だが、そのままフラリと倒れそうになる。驚いてすぐに支えた。
「ウルイ⁉」
支えてみてハッとした。体温が、高い。『しまった』という顔をウルイがした。
その顔を見て、ウルイが我慢していたのだと分かった。ウルイは困ったような微笑みを残して戻って行った。
呼び止めたかったが、戻りが遅くなるとウルイが罰を受ける。悔しさに唇を噛みしめた。
(早急に計画を練らなくては)
去っていくウルイを見守り、ギリギリの時間でライも宿舎に戻った。
「ウルイ! 調子は?」
そばに行き真っ先に顔を見た。食事のトレーを持ったまま、困ったようにウルイが微笑む。やはり顔色が悪い。
「外で食べるのは辛いかな?」
「いや、どこでも一緒だよ。中は席とれないよ」
ウルイの声が意外にもしっかりしていて安堵した。トレーの上のご飯は相変わらず代わり映えしないメニューだ。
もっと栄養のあるものを食べさせて休ませてあげたくて悔しくなる。
ウルイを誘導していつもの廃材の場所に行く。席に着くときにウルイの手に触れてみた。やはり熱が出ている。
「昨日より熱いね」
「そうかな。これくらいは平気だって。貧乏暮らししていた頃は、熱出ていようが働いたし」
「そっか。ウルイは頑張って生きてきたからな」
ウルイが深呼吸して空を見た。
「いや、頑張ったわけじゃない。普通だよ。ここの人たちを見て分かった。生まれた環境で人の幸福って変わる。僕はライと出会って、環境が変わるチャンスがもらえて良かった。色々あったけど、世界が広がったと思う。だけど、この人たちには抜け出すチャンスがない。この状況を受け入れるしかないから、頑張っているとか苦しいとか分からないんだ。やるしかないから、そうしているんだ。以前の僕も同じだ」
ウルイの言葉にライは愕然とした。
やるしかない状況で生きている人を、頑張っているとか、哀れだと考えた自分の狭量さが恥ずかしくなった。この状況をそんな風に見ているウルイがカッコイイと思えた。
「ウルイは、凄いな」
心からそう思えた。
「いや、ライの方がスゴイだろ」
小さな声で「アルファだし」と呟くウルイを抱き締めてキスしたいと思った。
だが、時間が限られている。この時間しかウルイと話せないから欲望をグッと抑える。
「ウルイの仕事の事だけれど、畑での作業と家畜も世話しているって言っていたよね」
「うん」
「畑にはニンジンや葉野菜はある?」
「あるよ」
「どのあたりに植えてある? 畑の周囲には見張りや侵入防止の柵とかあるのかな?」
「えっと、僕たちが寝る収容所宿舎があるだろ? その裏手にある畑の一番奥が葉野菜だよ。ニンジンとか根野菜が手前側。畑は宿舎三つ分くらいあって広い。侵入防止の柵はない。食材を盗まないように監視に見られている、かな」
「分かった。馬小屋はどのあたりかな?」
「畑を挟んで僕たちの収容所の反対側だよ。家畜小屋と並んでいる」
「そうか。左耳が切れている馬が居たら、どのあたりに繋がれているか覚えておいて。あとは、監視の宿舎は知っている?」
「うん。掃除番になると監視棟や宿舎の掃除に入るから分かる。監視の宿舎は家畜臭いのが来ないようにって離れているんだ。労働奴隷宿舎から真っすぐの青い木造の建物が監視の宿舎だよ」
ウルイの説明でここの敷地の全体像がつかめた。日中に敷地の建物と位置関係は把握していた。建物が何に使われているのか分かれば脱走ルートが確保できる。
「ありがとう。俺からの情報も言うよ。ここで働けない人は破棄処分される。使えなくなると殺して新たな奴隷を連れてくるシステムだ。だから、仕事を休むことや働けない姿を見せるのはダメだ。ウルイの傷の炎症が悪化すると高熱を起こす。今はギリギリ微熱止まりだよね。だから、早急にここを出ることを考えている。俺はウルイを連れて戻る。それまで、何とか耐えていて欲しい」
小さな声で早口で伝えた。ウルイはコクコクと頷いた。ウルイが無言で頷いている時は話を良く理解をしている証だ。
そんな小さな癖が愛らしくて心が温まる。もう少し話したいと思ったけれど。
『ピーー』
高い笛がなる。
「あ、戻らなきゃ」
ウルイが立ち上がった。だが、そのままフラリと倒れそうになる。驚いてすぐに支えた。
「ウルイ⁉」
支えてみてハッとした。体温が、高い。『しまった』という顔をウルイがした。
その顔を見て、ウルイが我慢していたのだと分かった。ウルイは困ったような微笑みを残して戻って行った。
呼び止めたかったが、戻りが遅くなるとウルイが罰を受ける。悔しさに唇を噛みしめた。
(早急に計画を練らなくては)
去っていくウルイを見守り、ギリギリの時間でライも宿舎に戻った。
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