発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

文字の大きさ
52 / 80
Ⅶ ガリイ国の奴隷<Sideライ>

しおりを挟む
 食事の時間になりウルイを探した。混雑の中でもライはすぐにウルイが見つけられる。

「ウルイ! 調子は?」

 そばに行き真っ先に顔を見た。食事のトレーを持ったまま、困ったようにウルイが微笑む。やはり顔色が悪い。

「外で食べるのは辛いかな?」
「いや、どこでも一緒だよ。中は席とれないよ」

 ウルイの声が意外にもしっかりしていて安堵した。トレーの上のご飯は相変わらず代わり映えしないメニューだ。

 もっと栄養のあるものを食べさせて休ませてあげたくて悔しくなる。

 ウルイを誘導していつもの廃材の場所に行く。席に着くときにウルイの手に触れてみた。やはり熱が出ている。

「昨日より熱いね」
「そうかな。これくらいは平気だって。貧乏暮らししていた頃は、熱出ていようが働いたし」

「そっか。ウルイは頑張って生きてきたからな」
 ウルイが深呼吸して空を見た。

「いや、頑張ったわけじゃない。普通だよ。ここの人たちを見て分かった。生まれた環境で人の幸福って変わる。僕はライと出会って、環境が変わるチャンスがもらえて良かった。色々あったけど、世界が広がったと思う。だけど、この人たちには抜け出すチャンスがない。この状況を受け入れるしかないから、頑張っているとか苦しいとか分からないんだ。やるしかないから、そうしているんだ。以前の僕も同じだ」

 ウルイの言葉にライは愕然とした。

 やるしかない状況で生きている人を、頑張っているとか、哀れだと考えた自分の狭量さが恥ずかしくなった。この状況をそんな風に見ているウルイがカッコイイと思えた。

「ウルイは、凄いな」
 心からそう思えた。

「いや、ライの方がスゴイだろ」
 小さな声で「アルファだし」と呟くウルイを抱き締めてキスしたいと思った。

 だが、時間が限られている。この時間しかウルイと話せないから欲望をグッと抑える。

「ウルイの仕事の事だけれど、畑での作業と家畜も世話しているって言っていたよね」
「うん」

「畑にはニンジンや葉野菜はある?」
「あるよ」

「どのあたりに植えてある? 畑の周囲には見張りや侵入防止の柵とかあるのかな?」

「えっと、僕たちが寝る収容所宿舎があるだろ? その裏手にある畑の一番奥が葉野菜だよ。ニンジンとか根野菜が手前側。畑は宿舎三つ分くらいあって広い。侵入防止の柵はない。食材を盗まないように監視に見られている、かな」

「分かった。馬小屋はどのあたりかな?」
「畑を挟んで僕たちの収容所の反対側だよ。家畜小屋と並んでいる」

「そうか。左耳が切れている馬が居たら、どのあたりに繋がれているか覚えておいて。あとは、監視の宿舎は知っている?」

「うん。掃除番になると監視棟や宿舎の掃除に入るから分かる。監視の宿舎は家畜臭いのが来ないようにって離れているんだ。労働奴隷宿舎から真っすぐの青い木造の建物が監視の宿舎だよ」

 ウルイの説明でここの敷地の全体像がつかめた。日中に敷地の建物と位置関係は把握していた。建物が何に使われているのか分かれば脱走ルートが確保できる。

「ありがとう。俺からの情報も言うよ。ここで働けない人は破棄処分される。使えなくなると殺して新たな奴隷を連れてくるシステムだ。だから、仕事を休むことや働けない姿を見せるのはダメだ。ウルイの傷の炎症が悪化すると高熱を起こす。今はギリギリ微熱止まりだよね。だから、早急にここを出ることを考えている。俺はウルイを連れて戻る。それまで、何とか耐えていて欲しい」

 小さな声で早口で伝えた。ウルイはコクコクと頷いた。ウルイが無言で頷いている時は話を良く理解をしている証だ。

 そんな小さな癖が愛らしくて心が温まる。もう少し話したいと思ったけれど。

『ピーー』
 高い笛がなる。

「あ、戻らなきゃ」
 ウルイが立ち上がった。だが、そのままフラリと倒れそうになる。驚いてすぐに支えた。

「ウルイ⁉」
 支えてみてハッとした。体温が、高い。『しまった』という顔をウルイがした。

 その顔を見て、ウルイが我慢していたのだと分かった。ウルイは困ったような微笑みを残して戻って行った。

 呼び止めたかったが、戻りが遅くなるとウルイが罰を受ける。悔しさに唇を噛みしめた。

(早急に計画を練らなくては)
 去っていくウルイを見守り、ギリギリの時間でライも宿舎に戻った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

運命を知らないアルファ

riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。 運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!? オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。 コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ 久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。 パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。 オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

【完結済】「理想の恋人 〜タイムリープしたので、全財産貢いだダメ猫と別れます

かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中
BL
30歳の警察官、オメガの貴弘(たかひろ )は、猫獣人の不実な恋人・アルファの猫井司(ねこいつかさ)に裏切られたショックで家出をした矢先、埼玉山中の交通事故で事故死してしまう。 ところが、気付けば猫井と出会う前に時間が戻っていた。 今度の人生では猫井に振り回されるのをやめようと決心するが……。 本編「理想の結婚 俺、犬とお見合いします」のスピンオフです。 全く話が繋がっていないので、単体で問題なく読めます。 (本編のコミカライズにつきましては、日頃より有難うございます)

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

処理中です...