発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>

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 ウルイに付き添い三日目。寝顔は愛らしいけれど、そろそろ目を覚まさないかなぁと考えていた。

 朝の診察に訪室した軍医から経過は順調だと言われて嬉しかった。

「鎮静剤投与を中止したので、二時間ほどで目が覚めます」
「え? ウルイが、目を覚ますのか!」

「はい。ただし、すぐにハッキリ覚醒するわけではありません。薬剤の効果が残っているうちは寝ぼけているような状態になります。覚醒をゆっくり待ってください」

「わかった。熱も引いて、ウルイの顔色が良くなっている。足の腫れも引いた。治療に感謝する」
 軍医たちはライに敬礼をして退出した。

(ウルイが、目覚める!)
 ライは嬉しくてウルイの手を握った。心がソワソワした。自然と頬が緩んだ。

 しばらく見守ると、規則正しかったウルイの呼吸が、徐々に浅く深く、と繰り返し、脱力していた手足がモゾモゾ動き始めた。

(もう目が覚めるかな。もう少しかな)
 そればかりを考えていた。期待で心臓がトクトク高鳴っていた。

「……ん~~」
 寝言のような声が聞こえて「ウルイ」と小さく呼んでみた。声に反応して少し動く表情をみると、その頬をツンツンしたくなった。

 触れたいけれど、自然と目覚めるまで待つべきだ、と反する考えが生じた。その葛藤に『うお~~!』と叫びたくなった。

 そんなライの気持ちを感じ取ったのか、ウルイのまつげがフワリと揺れた。瞼が動く。

 それは、ウルイの生命を感じる動きだった。まるで命の誕生を見守るような時間だった。
 黒真珠のように輝く瞳が見えた時、ライは感動で呼吸を忘れそうになった。

「……あれ? ライ?」
 数回瞬きをしてからウルイが掠れた声を出した。

「おはよう。あぁ! ウルイ、ウルイ!」
 堪えきれず寝ているウルイに抱き着いた。

「苦しい……」
「あぁ、ゴメン。つい嬉しくて」

「ここは、アドレア?」
 腕の力を弱めて寝たままのウルイの髪を優しく撫でた。

「アドレアだ。助かった。いや、助けてもらった、かな」
 ガリイ国から連れて来た馬や、ライを見つけてくれた副長を思い大きく一呼吸した。

「ウルイは五日ほど寝ていたよ。薬剤で寝かせて足の炎症の治療をした。今は炎症が治まってきたところだ。ただ、まだ治療するから、しばらく病院だよ」

「うん。ライが無事でよかった。助けてくれてありがとう」

 柔らかい微笑みがライの心を癒す。この顔を見るとウルイを守れたのだと実感する。

「ライ、一緒に寝よ。ライも疲れているだろ」

 半分寝ぼけているのだろう。掛け布団を上げてベッドに誘う仕草をウルイが見せる。こんな可愛いウルイに抗えるはずがない。すぐにライは布団に潜り込んだ。

「あぁ、ちょっと。ライ様!」
 周りの声が聞こえたが、知らんふりして掛け布団を頭からかぶった。

 温かい布団の中でウルイと額を合わせてフフっと笑い合った。満足したようにライにすり寄るウルイと二度寝することを決めた。

 ウルイの穏やかな呼吸を感じて幸せな時間だった。

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