発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>

⑪※

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 手に持ったグラスから、ブドウを一粒ウルイの口に入れる。自分の口にも放り入れた。
 ウルイの肩に腕を回し、ブドウが飲みこまれる様子を見守った。

 ウルイの口がモグモグ動いてコクリと喉が動く。その動きに色っぽさを感じて腰がジンと熱を持つ。

(俺のも、喉まで入れて、欲しい)
 変な欲望が沸き上がり、慌てて欲望に蓋をする。

(ダメだ! ウルイは病み上がりだ。俺よ、落ち着け)
 フルフルと首を振り、自分の口に三粒ブドウを放り込んだ。

「口がいっぱいだ」
 ウルイがライの顔に手を伸ばして膨らんだ頬を触る。頬をなぞる動きが艶めかしい。

 指の動きを追いかけてぺろりと指を舐めてみた。驚いたように逃げようとするウルイの指を、口に含んで嘗め回した。慌てる動きの指を舌で追いかけた。

「んっ」
 ウルイが出した声を聞いてライのペニスが完全に起ち上ってしまった。性欲が抑えられない自分に苦笑した。これ以上はダメだ。

 ウルイの指を解放して微笑みかける。
「少し、時間潰していて。トイレにでも行ってくるよ」

 ウルイの視線がライの股間に行くのが分かった。ウルイに申し訳なくて何も言えない。

「僕が、するよ」
 席を立とうとしたがウルイに腕を掴まれる。

「僕は、ライのオメガだし。そういう役割は、僕だと思うから」
 役割、と聞いてライの胸がざわつく。何か違和感がある。

「いや、今のウルイに負担はかけられないから」

「大丈夫だよ。そのためのオメガだろ?」
 どこかライの気持ちと噛み合っていない気がする。変な不安感が押し寄せる。

 そんなライに構わずウルイがライの股間に手を伸ばす。先ほどライが舐めた愛らしい指が、ライのペニスを優しく撫でた。

 その存在にビクリと驚いた様子を見せた手が、覚悟を決めたように形に沿って触れてくる。

「僕はライに何も返せない。助けてもらってばかりだから、せめて、これは……」

「いいから!」

 ペニスは刺激に熱を持ったが、ライは何故か泣きたいような気持ちになった。

 グイっとウルイを引きはがす。ウルイが驚いた瞳をライに向けた。

 見る間にウルイが泣きそうになる。何か伝えなくてはいけないのに、思い浮かばずに変な汗が出た。

「ごめん、なさい」
 下を向いたウルイが小さな声を漏らした。震える声を聞いて、必死でかける言葉を探した。

「いや、違う。違うんだ。ほら、ウルイは、えっと、病み上がり、だから。性的な事はダメだって軍医が言っていて……」

 やっと思いついた言葉が言い訳じみていると自分で思った。焦りが隠せなかった。

 少しして顔を上げたウルイは優しい笑顔だった。

「そうだ。僕は、病み上がりだった、ね」

 その悲しそうな笑顔を見て泣きたくなった。悲しませるつもりは無かった。

 ライのペニスはすでに力を無くしていた。


 夕刻前にオアシス外れの湖に行った。水辺で休むガゼルをウルイと見守った。ウルイは何も言わなかった。ライも何を話していいのか分からなかった。

 夕焼けの砂漠を見つめて「寒くなる前に戻ろう」と声をかけた。

「ここで出会わなければ、僕はオメガじゃなかったね」

 呟くようなウルイの一言が聞こえた。

 ライはウルイを後ろから抱きしめて伝えた。

「俺のオメガはウルイだけだ」
 ライの気持がウルイに届くように願った。


 オアシスには一週間滞在した。その間にライは市場調査を行った。さほど市場が荒んでいなくて安心した。

 オアシスの長に戻った副長と立て直しについて計画を練った。副長の意見を聞くうちに、この長に任せておけば大丈夫だと確信を持てた。

 ウルイの父は鉱物採掘事業で働くことになった。鉱物の物流管理を一部任せることにした。ウルイ一家は長の家に監視付きで住み込みとなった。

 ウルイの妹は教育機関に通うこととし、ウルイの母は使用人として長の家で働く。

 同じ集落に居た老夫婦は長の知り合いの家に住み込み労働することとなった。

 中年兄弟は鉱物採掘現場の機械操作の現場仕事に着くことになった。それぞれにオアシスの一員として生きる道を切り開いてくれるだろう。

 そして、ライがガリイ国から駆けて来た方角を辿り、連れて来た馬の骨を拾った。

 多分このあたりだと思う場所に、馬の骨があった。多少腐敗肉がついていて、おそらくあの馬の骨で間違いないと思えた。

 丁寧に骨を集め、オアシスの湖の傍に骨を埋めた。ここに墓を建てるよう長に依頼した。

 助けてくれた馬の経緯を話すと皆が泣いた。馬の雄姿に敬意を表し『ブレイブ』と名付けた。

「ブレイブの墓が出来たら花を添えに来よう」
 ライの提案にウルイはコクリと頷いた。


 ガリイ国を脱出してから半月が過ぎた。
 ウルイの体力は戻ったが心の距離が出来てしまったように感じている。どうにかしたいのに上手く修正出来なくて苦しかった。

 そんな気持ちを誤魔化すようにウルイに服や宝石、お菓子などをプレゼントした。買い与えることでライの心が少し救われた。

 ウルイは全てを「ありがとう」と受け取ってくれた。その困ったようなウルイの笑顔がライの心に積み重なった。

 明日は王都に向けて出発する。やっと王都に戻れる。
 ライは小さな喜びを噛みしめた。

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