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Ⅷ 変わるべきは……<Sideライ>
⑩
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寝室に戻ると、ドアを開けた音に反応してウルイが「う~~」と声を上げて覚醒した。
「すまない。起こしたかな?」
「ぁ、ライ。ごめん。なんか疲れちゃって寝ちゃった」
「いいんだ。今は体力が落ちているから疲れやすい。そんな時期に外出したから仕方ないよ」
欠伸をしながらウルイが起き上る。
「お腹空いたぁ。昼は過ぎた?」
「二時だよ。昼食はとっておいてあるから」
「ちょっと横になるだけのつもりが三時間爆睡だ。ガリイ国じゃ、疲れたから昼寝、なんてしたら鞭が飛んでくるよな」
軽く笑うウルイの言葉に反応してしまう。聞き捨て鳴らない言葉だ。
「えっと、ウルイはどこか鞭打たれたのかな?」
「僕はされていないよ。だけど、何回か他の人が打たれていた。助けてあげることができなくて苦しかったけど」
ウルイが鞭打ちされていなくて安堵した。
だけどウルイの気持ちは分かる。助けたいけれど手を出せない辛さは、ライにも分かるから。
「ウルイ、ガリイ国のことはガリイ国自体が考えなくてはいけない事でもある。どこかで救いがあるはずだ。俺たちが見たのは最悪の部分かもしれない」
「確かに、そうかも知れないけど」
「ウルイ、今は考えなくていいんだ。それより食事にしようよ」
タイミング良くウルイのお腹が「ぐ~~」と鳴る。
「すごく沢山食べたい気分、かな」
照れ隠しのように言うウルイを抱き上げた。「わぁ。降ろせ」そう言うウルイを抱き運んだ。
好きに触れる幸せを噛みしめて「ふはは」と笑った。諦めたようにウルイが「ライは少し貴族らしくして欲しい……」と呟いた。
その懐かしさが嬉しくて声を出して笑った。
食べたいと思えることは回復の傾向だ。身体が欲しているときは出来るだけ食べて欲しい。肉も魚も野菜もデザートも山ほど宿の者に用意してもらった。
「多すぎるって」
そう笑うウルイと食事をした。沢山の食べものに手を伸ばし口に運ぶウルイを見ると嬉しくてたまらなかった。
ついでにライも山盛り食べた。アドレアに戻れたことで安堵したのか食欲がすごい。どこまでも食べられる気がしてしまう。
思い返せばガリイ国では普段の半分以下の食事だった。必死だったから空腹感は二の次になっていた気がする。あんな量でよく足りていたと今更ながらに思う。
「ライ、お昼ご飯は食べられなかったのか?」
「ん? 軽く食べたよ。執務していたから簡単につまめるモノだけれどね」
「あんまり食べるから、昼抜きにしたのかと思った」
「ガリイ国で食べられなかった分を取り返しているんだ」
肉を片手に言えばウルイが笑った。
「肉が似合い過ぎだ。あ、そう言えば、父さんたちは、結局どうなるのかな」
ふと思い出したような顔をするウルイの頭をポンポンしてみた。
「大丈夫だよ。反省して立ち直ってくれるはずだ。ウルイはこのオアシスは温かい場所だと思わない?」
「温かいと思う。そりゃ、貧乏とか言われたし優しいばかりじゃないけれど、それも全部含めて人が生き生きする場所だ。人が生きる場所だなって思う、かな」
「うん。本当にウルイは真っすぐだ。その通りだよ。そんなオアシスだからこそ、ウルイの家族がやり直せるかもしれない。ここはウルイ達の生きてきた場所だし、これからも生きる場所だ」
「大丈夫、かな」
「無理なら王都に呼べばいい。今回の事でオアシスに王都からの監視が付く。少し、見守ろう。ウルイも自分の家族の力を信じてごらん」
ウルイはコクリと頷いた。
「落ち着いたら、どこか行きたい?」
ライの声掛けにウルイが少し考えている。時間はまだ午後の三時だ。疲れない程度の外出ならいいだろう。
「ライと出会った、湖に行きたい。今の時間だと、ちょうど水色キッチンに行くために通っていた。変わりはないか見たい」
「俺が初めてウルイの全裸を見た場所だ」
「は、はぁ? な、なんて言い方するんだ!」
頬を染めるウルイに「ごめん、ごめん」と謝り、ソファーに誘う。
「食事は片付けしなくて良い?」
「後から頼むからいいよ。数日はだらけて過ごそうよ」
食事テーブルに並ぶ果物皿からブドウをいくつかとりグラスに放り込む。
「は? ちょっと、それは、行儀が悪い気がする……」
ソファーに座ったウルイが驚き顔でライの様子を見ていた。
「俺たち以外、誰もいないから良いんだ」
ニカっと笑い、ウルイの隣に座った。
「すまない。起こしたかな?」
「ぁ、ライ。ごめん。なんか疲れちゃって寝ちゃった」
「いいんだ。今は体力が落ちているから疲れやすい。そんな時期に外出したから仕方ないよ」
欠伸をしながらウルイが起き上る。
「お腹空いたぁ。昼は過ぎた?」
「二時だよ。昼食はとっておいてあるから」
「ちょっと横になるだけのつもりが三時間爆睡だ。ガリイ国じゃ、疲れたから昼寝、なんてしたら鞭が飛んでくるよな」
軽く笑うウルイの言葉に反応してしまう。聞き捨て鳴らない言葉だ。
「えっと、ウルイはどこか鞭打たれたのかな?」
「僕はされていないよ。だけど、何回か他の人が打たれていた。助けてあげることができなくて苦しかったけど」
ウルイが鞭打ちされていなくて安堵した。
だけどウルイの気持ちは分かる。助けたいけれど手を出せない辛さは、ライにも分かるから。
「ウルイ、ガリイ国のことはガリイ国自体が考えなくてはいけない事でもある。どこかで救いがあるはずだ。俺たちが見たのは最悪の部分かもしれない」
「確かに、そうかも知れないけど」
「ウルイ、今は考えなくていいんだ。それより食事にしようよ」
タイミング良くウルイのお腹が「ぐ~~」と鳴る。
「すごく沢山食べたい気分、かな」
照れ隠しのように言うウルイを抱き上げた。「わぁ。降ろせ」そう言うウルイを抱き運んだ。
好きに触れる幸せを噛みしめて「ふはは」と笑った。諦めたようにウルイが「ライは少し貴族らしくして欲しい……」と呟いた。
その懐かしさが嬉しくて声を出して笑った。
食べたいと思えることは回復の傾向だ。身体が欲しているときは出来るだけ食べて欲しい。肉も魚も野菜もデザートも山ほど宿の者に用意してもらった。
「多すぎるって」
そう笑うウルイと食事をした。沢山の食べものに手を伸ばし口に運ぶウルイを見ると嬉しくてたまらなかった。
ついでにライも山盛り食べた。アドレアに戻れたことで安堵したのか食欲がすごい。どこまでも食べられる気がしてしまう。
思い返せばガリイ国では普段の半分以下の食事だった。必死だったから空腹感は二の次になっていた気がする。あんな量でよく足りていたと今更ながらに思う。
「ライ、お昼ご飯は食べられなかったのか?」
「ん? 軽く食べたよ。執務していたから簡単につまめるモノだけれどね」
「あんまり食べるから、昼抜きにしたのかと思った」
「ガリイ国で食べられなかった分を取り返しているんだ」
肉を片手に言えばウルイが笑った。
「肉が似合い過ぎだ。あ、そう言えば、父さんたちは、結局どうなるのかな」
ふと思い出したような顔をするウルイの頭をポンポンしてみた。
「大丈夫だよ。反省して立ち直ってくれるはずだ。ウルイはこのオアシスは温かい場所だと思わない?」
「温かいと思う。そりゃ、貧乏とか言われたし優しいばかりじゃないけれど、それも全部含めて人が生き生きする場所だ。人が生きる場所だなって思う、かな」
「うん。本当にウルイは真っすぐだ。その通りだよ。そんなオアシスだからこそ、ウルイの家族がやり直せるかもしれない。ここはウルイ達の生きてきた場所だし、これからも生きる場所だ」
「大丈夫、かな」
「無理なら王都に呼べばいい。今回の事でオアシスに王都からの監視が付く。少し、見守ろう。ウルイも自分の家族の力を信じてごらん」
ウルイはコクリと頷いた。
「落ち着いたら、どこか行きたい?」
ライの声掛けにウルイが少し考えている。時間はまだ午後の三時だ。疲れない程度の外出ならいいだろう。
「ライと出会った、湖に行きたい。今の時間だと、ちょうど水色キッチンに行くために通っていた。変わりはないか見たい」
「俺が初めてウルイの全裸を見た場所だ」
「は、はぁ? な、なんて言い方するんだ!」
頬を染めるウルイに「ごめん、ごめん」と謝り、ソファーに誘う。
「食事は片付けしなくて良い?」
「後から頼むからいいよ。数日はだらけて過ごそうよ」
食事テーブルに並ぶ果物皿からブドウをいくつかとりグラスに放り込む。
「は? ちょっと、それは、行儀が悪い気がする……」
ソファーに座ったウルイが驚き顔でライの様子を見ていた。
「俺たち以外、誰もいないから良いんだ」
ニカっと笑い、ウルイの隣に座った。
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