発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅸ 王都への帰還

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 王都に戻る途中で、ウルイがいたところとは別のオアシス都市に立ち寄った。

 浮遊移動車は小部屋のようになっていて簡易ベッドもあるが、せっかくなら宿に泊まって戻ろうとライが提案してきた。

 来るときとは違って前後を軍用浮遊移動車が警護しての移動だが、皆が快く賛同してくれた。

「夕食は宿じゃなくて、ここのオアシスで人気のレストランを予約したよ」

 浮遊移動車に乗っていると活動量が減ってお腹が空かない。夕刻にオアシス入りして、まずはオアシス内の散策を楽しんだ。

 このオアシスは保護動物をオアシス内で飼育している。その自然公園には野生では生きるのに難しい動物がいる。小動物の愛らしさに癒される時間だった。

 大型肉食獣もいるらしいが、襲われた恐怖があるから小動物だけ見て回った。自然公園内を歩いて運動にもなった。

 トイレのためにライが席を外している間に、一緒に行動しているサードに声をかけてみた。

「あの、サードさん」
「はい、ウルイ様。何でしょう」

 サードは怖い顔をしているが話しかけると優しく目線を合わせてくれる。特にライがいない時はニコニコしてくれる。

「筋肉隆々になるには、どうしたら良いでしょうか」

 ニコニコ顔のサードが首を傾けて『ん?』と言わんばかりの顔をした。数回瞬きをしてサードの顔が真っすぐに戻った。

「失礼しました。ライ参謀をこれ以上逞しくするおつもりですか?」

「いえ、僕が、皆さんのようになりたくて」

 途端にブハっと吹きだす声が周りから聞こえて驚いた。いつの間にか身辺警護についていたライの部下たちが近くにいた。

 ウルイが振り向くと、「申しわけありません」と真顔に戻るが、頬がヒクヒクしている。

「ウルイ様は、逞しくなりたいのですか」
 サードが優しく聞いてくれる。

「はい。ライと並ぶ皆さんはカッコいいので、そうなりたくて」

 サードの頬が紅くなり口元を手で隠す。気分でも悪いのかと心配になった。「可愛い……」と後ろから声がした。再び振り返ると護衛兵も頬を染めていた。

「ウルイ様、そういったお褒めの言葉は嬉しいのですが、ライ参謀の前では控えていただけますか?」

 褒める言葉と聞いてウルイは首を傾けた。
 ウルイはサードを褒める言葉など使っていなかったはずだ。よく分からないけれど、一応コクリと頷いておいた。

 そうしているうちにライが戻ってきた。途端にサードは姿勢を正し、顔つきが怖い顔に戻った。

「見ていたぞ。サード、ウルイに近づいたな」
 ライが怖い顔をする。

「ほんの少し会話をしただけです」
 ウルイの頭の上で睨み合うような二人を交互に眺めた。ふと見れば、先ほど近くに居た身辺護衛たちは二メートルほど離れたいつもの位置に戻っていた。

「ライ、僕がサードさんに聞きたいことがあったから」

「そうなのか? ウルイ、聞きたいことは俺に聞けばいいからね」
 ライが微笑みながらウルイの腰に手を回してきた。ウルイはライを見上げた。

 ライは少し機嫌が悪くなると密着したがる。やはり顔つきが少し固い。こんな時、ウルイは黙ってライに従う。

 本当は人前で密着するのは恥ずかしいけれど我慢する。

 オアシス端にある自然公園から馬車に乗り、中心街に移動した。どこもオアシスは中心に行くほど華やかだ。

「ウルイ、ここで食事しよう」
 小さな店の前でライが馬車を止めた。馬車を降りて店の名前を見た瞬間にウルイの心臓がドキッとした。

「ライ、もしかして、ここって……」
 ライを見上げれば微笑みながらコクっと頷いてくれる。

 店の名前は『水色キッチン』だ。ウルイは嬉しくてライに抱き着いた。胸がいっぱいで恥ずかしいという思いは吹き飛んでいた。

「ライ! ありがとう! 大好きだ!」
「はぁ? は、はいぃ?」

 ライが素っ頓狂な声を上げていたが、水色キッチンのオーナーが店を開いていた喜びが大きすぎて、全く気に留めなかった。

 胸が高鳴っていて、自分が何を言ったのかも覚えていなかった。
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