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Ⅲ章「飛べない鳥と猛禽鳥の愛番」
side:羽田 咲人⑫
脩が妊娠した。現在四か月目。全身が打ち震える喜びと、全てのモノから守りたいと思う庇護欲。脩が心配で仕方がなくて行動一つ一つにハラハラする。
「危ない! ダメだ。少しの荷物も持ったらいけない! 階段なんて使ったらダメだ!」
「平気だよ」
「良いから、脩はお腹を守っていればいい」
大げさ、とソファーに座る脩。肩に乗るヤンバルクイナと囁き合うように笑っている。
診察は石井医師がしてくれた。両性者の妊娠出産に関して担当してくれる。入院は怖いという脩に合わせて、臨月になったらもともと育った保護施設の部屋での出産予定。そこなら医療対応できる、と。
もし分身鳥がシマフクロウかヤンバルクイナだった場合は産後から国の保護施設に預ける。親元から離されてしまう。この世界の定めだから仕方ない。だから妊娠中に胎児に出来る限りの幸せを注ぎ込む。
脩を愛し、お腹の子供に愛を囁く。俺たちの分身鳥も寄り添うように脩のお腹を羽で撫でる。
「僕が産んだ子たちにも、愛を伝えてあげたかった。妊娠期、大切だったんだね」
寂しそうにお腹に手を置く脩。その手に俺の手を重ねる。
「あの時の事は、仕方ないよ。でも、きっと生まれた子は逞しく育っていると思う。今は目の前のこの子に集中しよう」
二人と二羽で脩のお腹の子に話しかける。例え離れても、君は独りじゃないよ。きっとどこかで大切な番鳥に出会えるよ。自分の人生を精一杯生き抜いてね。いつも幸せを願っているよ。脩と微笑み合い、そっと軽いキスを交わす。
この子の名前を脩と懸命に考える。もしかしたら親としてこの子に残せる唯一のプレゼントになるかもしれない。だからこそ、願いを込めて、愛を込めて。
どんな分身鳥を持つ子でも、幸せな人生を歩みますように。幸せを見つけ出せますように。
〈完〉
「危ない! ダメだ。少しの荷物も持ったらいけない! 階段なんて使ったらダメだ!」
「平気だよ」
「良いから、脩はお腹を守っていればいい」
大げさ、とソファーに座る脩。肩に乗るヤンバルクイナと囁き合うように笑っている。
診察は石井医師がしてくれた。両性者の妊娠出産に関して担当してくれる。入院は怖いという脩に合わせて、臨月になったらもともと育った保護施設の部屋での出産予定。そこなら医療対応できる、と。
もし分身鳥がシマフクロウかヤンバルクイナだった場合は産後から国の保護施設に預ける。親元から離されてしまう。この世界の定めだから仕方ない。だから妊娠中に胎児に出来る限りの幸せを注ぎ込む。
脩を愛し、お腹の子供に愛を囁く。俺たちの分身鳥も寄り添うように脩のお腹を羽で撫でる。
「僕が産んだ子たちにも、愛を伝えてあげたかった。妊娠期、大切だったんだね」
寂しそうにお腹に手を置く脩。その手に俺の手を重ねる。
「あの時の事は、仕方ないよ。でも、きっと生まれた子は逞しく育っていると思う。今は目の前のこの子に集中しよう」
二人と二羽で脩のお腹の子に話しかける。例え離れても、君は独りじゃないよ。きっとどこかで大切な番鳥に出会えるよ。自分の人生を精一杯生き抜いてね。いつも幸せを願っているよ。脩と微笑み合い、そっと軽いキスを交わす。
この子の名前を脩と懸命に考える。もしかしたら親としてこの子に残せる唯一のプレゼントになるかもしれない。だからこそ、願いを込めて、愛を込めて。
どんな分身鳥を持つ子でも、幸せな人生を歩みますように。幸せを見つけ出せますように。
〈完〉
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