分身鳥の恋番

小池 月

文字の大きさ
54 / 57
Ⅲ章「飛べない鳥と猛禽鳥の愛番」

side:羽田 咲人⑫

 脩が妊娠した。現在四か月目。全身が打ち震える喜びと、全てのモノから守りたいと思う庇護欲。脩が心配で仕方がなくて行動一つ一つにハラハラする。

「危ない! ダメだ。少しの荷物も持ったらいけない! 階段なんて使ったらダメだ!」

「平気だよ」

「良いから、脩はお腹を守っていればいい」

大げさ、とソファーに座る脩。肩に乗るヤンバルクイナと囁き合うように笑っている。

 診察は石井医師がしてくれた。両性者の妊娠出産に関して担当してくれる。入院は怖いという脩に合わせて、臨月になったらもともと育った保護施設の部屋での出産予定。そこなら医療対応できる、と。

もし分身鳥がシマフクロウかヤンバルクイナだった場合は産後から国の保護施設に預ける。親元から離されてしまう。この世界の定めだから仕方ない。だから妊娠中に胎児に出来る限りの幸せを注ぎ込む。

脩を愛し、お腹の子供に愛を囁く。俺たちの分身鳥も寄り添うように脩のお腹を羽で撫でる。

「僕が産んだ子たちにも、愛を伝えてあげたかった。妊娠期、大切だったんだね」

寂しそうにお腹に手を置く脩。その手に俺の手を重ねる。

「あの時の事は、仕方ないよ。でも、きっと生まれた子は逞しく育っていると思う。今は目の前のこの子に集中しよう」

二人と二羽で脩のお腹の子に話しかける。例え離れても、君は独りじゃないよ。きっとどこかで大切な番鳥に出会えるよ。自分の人生を精一杯生き抜いてね。いつも幸せを願っているよ。脩と微笑み合い、そっと軽いキスを交わす。

この子の名前を脩と懸命に考える。もしかしたら親としてこの子に残せる唯一のプレゼントになるかもしれない。だからこそ、願いを込めて、愛を込めて。

どんな分身鳥を持つ子でも、幸せな人生を歩みますように。幸せを見つけ出せますように。


〈完〉
感想 3

あなたにおすすめの小説

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

響花学園

うなさん
BL
私の性癖しか満たさない。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

BL短編まとめ(異)

よしゆき
BL
短編のBLをまとめました。 冒頭にあらすじがあります。