顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月

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Ⅴ 芸能スクープ

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『え~、ここで新たな情報です。神宮司コーポレーションが外部役員から神宮司蓮を退任させるようです』
『まぁ、これだけの報道が出てしまうと事実であれ虚偽であれ、神宮司コーポレーションの株価に影響しますしねぇ』
『そうですねぇ。蓮が役員辞職しても会社への影響力は変わらないでしょうね。持ち株が経営権を持つレベルですから』
ワンルームにワイドショーの声が流れる。つい見入ってしまう。

だまってテレビを消す川口さん。
「ルカ、あまり見ないほうが良い」

「蓮は、どうしていますか?」
「今は活動自粛しているよ。蓮の事務所からドラマの早期打ち切りと、休養に入る通知が発表された」

蓮のドラマを思い出す。人を魅了する演技力。演技中の独特な静かな時間。派手に演じることは誰もがやりがち。でも蓮は「静」の時間を大切にする。その時間で観る人が引き込まれる。一緒に仕事をしてみて仕事に対する真面目さは評価できると思っていた。蓮の俳優業だけをみれば現状を勿体ないと感じてしまう。

蓮は今回の報道に言い訳や説明をしていない。ルカの事務所からは『事実確認はできておりません』とだけコメントしている。

 テレビのワイドショーや週刊誌はどこから情報を得たのか、ルカが中学生の頃に暴行に会ったことや、抑制剤の副作用で高校に通えなかった事などを事細かに把握していた。それらが報道されてしまっている。

蓮が社会的悪にされていてルカが可哀そうな被害者という報道内容。ルカは被害者として憐れんで欲しいわけじゃない。必死に耐えて乗り越えてきたことなのに、ルカの傷を抉るような社会の状況が苦しい。ルカの問題を外野がどうこう言わないで欲しい。最近は報道内容が苦しくてため息をついて考え込むことが多い。気持ちは落ち込むし頭が痛い。

「温かいカフェラテでも作るよ」
ルカの空気を察して川口さんが声をかける。
「ありがとうございます」

ふと発情期で蓮が出してくれたカフェラテを思い出す。偶然だと思うがルカの好きな飲みものだった。川口さんから飲み物を受け取り口にする。

「川口さんのカフェラテは少し苦い味がします。コーヒーの豆かなぁ。蓮が淹れてくれたのは甘かった」
「は? ルカ、いつ蓮にカフェラテ作ってもらったの?」
急に怖い顔になる川口さんに驚く。

「え? あの、発情期の、時ですけど……」
「ダメだよ、ルカ。僕の作ったものだけ口にすればいい。ルカには番なんて必要ないんだよ……」
川口さんの言葉が頭に響く。何を言われているのか分からなくなる。

逆らえない眠気。川口さんが淹れてくれるカフェラテはいつも眠気を誘う。温かくて気持ちいい。そのまま安心できる眠りに身を任す。
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