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Ⅵ 運命の人
③
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「ルカ、そろそろ起きられるか?」
優しい声に刺激されルカはぼんやり目を開ける。
「おはよう、ルカ」
大きな手で頭をナデナデされる。
そこにいる蓮を見てルカは急に恥ずかしくなる。昨日の蓮に甘えた自分を思い出すと顔が熱を持ってしまう。ルカからキスをした。それも思い出して心臓がバクバクと鳴りだす。ルカは布団を頭までかぶり顔を隠す。
「ほら、出ておいで」
布団をポンポン叩かれて、少し顔を出す。
「抱き上げるよ?」
返事をする間もなく布団ごと持ち上げられる。
「わ、ちょっと、歩ける! 歩くから!」
「いや、今日くらいは良いじゃないか」
表情があまり変わらない蓮の目元が微笑んでいる。嬉しいのだろう。
以前は蓮が無表情に見えていたが、感情が目元に出ることを知った。新たな発見に蓮が可愛く思える。今日くらい良いか、と大人しく抱っこされた。リビングソファーに運んでもらう。
「もう昼近くだ。昨日疲れたとはいえ、寝すぎると夜が寝られないからな」
「え? そんなに寝た? 長く寝られるときは川口さんの淹れてくれたカフェラテ飲んだ後くらいなのに。あ、川口さんのカフェラテは苦いんだよな」
「カフェラテが苦いのではないだろう。多分、睡眠剤でも入っていたのかも、な」
蓮の発言に驚く。睡眠剤? そんなのドラマの世界だ、と考えて怖くなる。
「マネージャーの動向を調べた。毎月睡眠剤の処方を受けている。以前、恋人に睡眠剤を利用しての犯罪ギリギリの事をしていたことも分かっている。ルカにそういう事をしていても、おかしくない」
「う、嘘だ……」
「ま、あいつのことなど今はどうでもいい。ルカ、体調が良ければ映画でも見ないか?」
「はぁ? 何で映画?」
「俺の夢だ。番のオメガを見つけ出して、毎日甘やかして、好きな映画を一緒に見て、これ以上ないくらいに俺で満たす事」
無表情、あ、いや、少し照れている様子の蓮を見る。こちらを見ないけれど、これ、照れているのだと思う。少し笑えてくる。
「蓮で満たすのかよ。もし、その番のオメガが逃げたらどうするつもり?」
「逃げたくないくらい、俺の傍に居たいって思えるくらい甘やかす。大切に宝物のように愛でる。毎日愛し合ってもいい。ルカの全身を嘗め回して過ごしてもいい」
おいおい。後半はなんなのだ。
「蓮の欲望はいってんじゃねーか」
聞いていてルカが照れてしまう。
「俺の事、捨てたくせに」
ついルカの口から一言が出る。
「捨てたと思われても仕方がない。あの日、高校生だった俺はほんのり感じた匂いに抗えなかった。運命を見つけたとピンときた。そして幼いお前を噛んでしまった。その時は運命の番を逃がしたくない一心だった。アルファのフェロモンを叩きつけるようにルカに流し込んだ。俺のモノになるように必死だった。お前の負担が大きいことなど考える余裕がなかった。そこを偶然父に見られた。俺は父に強制的にその場から離された。お前と離れたくなくて抵抗したけれど力ではかなわなかった。全て無かったことにしろ、と海外に強制的に留学させられてしまった。その後、お前がどうなったのか、どこに居るのか、誰なのか、まったく情報を得られず数年を過ごした。苦しい時間だった。とは言っても、番と離れるオメガの辛さに比べたら微々たるものだろうが」
ルカは自分の膝を抱えてソファーに小さくなる。蓮はルカが想像していた極悪犯罪アルファではないかもしれない。もしかして、もしかしたら蓮は憎むべき相手ではないのかもしれない。これまでの価値観が揺らぐ。どうしていいのか分からず震える身体を自分で抱き締める。
「つ、番になったかなんて、あの時はわからなかっただろう?」
「そうだな。発情もしていないオメガなのは分かっていた。だが、不思議と俺の番になっている確信だけは持っていた」
アルファという生き物が、蓮という人物が理解できなくて混乱する。
そっと首後ろの噛み跡を指でなぞる。不安になると噛み跡を触りたくなるのはオメガの本能だろうか。蓮がルカをそっと抱きしめる。そのまま蓮の膝の間にルカをおさめてしまう。
「よしよし。ルカは良いオメガだ。こうして俺の前に現れてくれた。ずっと匂いだけを頼りに探していて良かった。ちゃんと出会えた。これほど素敵に成長してくれて嬉しい。苦しませてゴメン。俺のルカだ。俺だけの、愛しいルカ」
優しい言葉を背後からかけられる。はっとする。身体の振動が伝わるほど密着しているから分かる。蓮、泣いている。慰めるべきなのか分からない。ルカはただ心の向くままに蓮の腕をポンポンと優しく撫でた。
蓮、嫌な奴じゃない。しばらく無言でそうしていた。ルカの心が柔らかい何かに満たされるようだった。
優しい声に刺激されルカはぼんやり目を開ける。
「おはよう、ルカ」
大きな手で頭をナデナデされる。
そこにいる蓮を見てルカは急に恥ずかしくなる。昨日の蓮に甘えた自分を思い出すと顔が熱を持ってしまう。ルカからキスをした。それも思い出して心臓がバクバクと鳴りだす。ルカは布団を頭までかぶり顔を隠す。
「ほら、出ておいで」
布団をポンポン叩かれて、少し顔を出す。
「抱き上げるよ?」
返事をする間もなく布団ごと持ち上げられる。
「わ、ちょっと、歩ける! 歩くから!」
「いや、今日くらいは良いじゃないか」
表情があまり変わらない蓮の目元が微笑んでいる。嬉しいのだろう。
以前は蓮が無表情に見えていたが、感情が目元に出ることを知った。新たな発見に蓮が可愛く思える。今日くらい良いか、と大人しく抱っこされた。リビングソファーに運んでもらう。
「もう昼近くだ。昨日疲れたとはいえ、寝すぎると夜が寝られないからな」
「え? そんなに寝た? 長く寝られるときは川口さんの淹れてくれたカフェラテ飲んだ後くらいなのに。あ、川口さんのカフェラテは苦いんだよな」
「カフェラテが苦いのではないだろう。多分、睡眠剤でも入っていたのかも、な」
蓮の発言に驚く。睡眠剤? そんなのドラマの世界だ、と考えて怖くなる。
「マネージャーの動向を調べた。毎月睡眠剤の処方を受けている。以前、恋人に睡眠剤を利用しての犯罪ギリギリの事をしていたことも分かっている。ルカにそういう事をしていても、おかしくない」
「う、嘘だ……」
「ま、あいつのことなど今はどうでもいい。ルカ、体調が良ければ映画でも見ないか?」
「はぁ? 何で映画?」
「俺の夢だ。番のオメガを見つけ出して、毎日甘やかして、好きな映画を一緒に見て、これ以上ないくらいに俺で満たす事」
無表情、あ、いや、少し照れている様子の蓮を見る。こちらを見ないけれど、これ、照れているのだと思う。少し笑えてくる。
「蓮で満たすのかよ。もし、その番のオメガが逃げたらどうするつもり?」
「逃げたくないくらい、俺の傍に居たいって思えるくらい甘やかす。大切に宝物のように愛でる。毎日愛し合ってもいい。ルカの全身を嘗め回して過ごしてもいい」
おいおい。後半はなんなのだ。
「蓮の欲望はいってんじゃねーか」
聞いていてルカが照れてしまう。
「俺の事、捨てたくせに」
ついルカの口から一言が出る。
「捨てたと思われても仕方がない。あの日、高校生だった俺はほんのり感じた匂いに抗えなかった。運命を見つけたとピンときた。そして幼いお前を噛んでしまった。その時は運命の番を逃がしたくない一心だった。アルファのフェロモンを叩きつけるようにルカに流し込んだ。俺のモノになるように必死だった。お前の負担が大きいことなど考える余裕がなかった。そこを偶然父に見られた。俺は父に強制的にその場から離された。お前と離れたくなくて抵抗したけれど力ではかなわなかった。全て無かったことにしろ、と海外に強制的に留学させられてしまった。その後、お前がどうなったのか、どこに居るのか、誰なのか、まったく情報を得られず数年を過ごした。苦しい時間だった。とは言っても、番と離れるオメガの辛さに比べたら微々たるものだろうが」
ルカは自分の膝を抱えてソファーに小さくなる。蓮はルカが想像していた極悪犯罪アルファではないかもしれない。もしかして、もしかしたら蓮は憎むべき相手ではないのかもしれない。これまでの価値観が揺らぐ。どうしていいのか分からず震える身体を自分で抱き締める。
「つ、番になったかなんて、あの時はわからなかっただろう?」
「そうだな。発情もしていないオメガなのは分かっていた。だが、不思議と俺の番になっている確信だけは持っていた」
アルファという生き物が、蓮という人物が理解できなくて混乱する。
そっと首後ろの噛み跡を指でなぞる。不安になると噛み跡を触りたくなるのはオメガの本能だろうか。蓮がルカをそっと抱きしめる。そのまま蓮の膝の間にルカをおさめてしまう。
「よしよし。ルカは良いオメガだ。こうして俺の前に現れてくれた。ずっと匂いだけを頼りに探していて良かった。ちゃんと出会えた。これほど素敵に成長してくれて嬉しい。苦しませてゴメン。俺のルカだ。俺だけの、愛しいルカ」
優しい言葉を背後からかけられる。はっとする。身体の振動が伝わるほど密着しているから分かる。蓮、泣いている。慰めるべきなのか分からない。ルカはただ心の向くままに蓮の腕をポンポンと優しく撫でた。
蓮、嫌な奴じゃない。しばらく無言でそうしていた。ルカの心が柔らかい何かに満たされるようだった。
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