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Ⅷ 寄り添って
④
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『人気モデルLUCaの誘拐監禁暴行事件! 犯人は元マネージャー』
『モデルLUCa、静養のため休養。暴行事件の後遺症は??』
新聞もネットニュースもテレビも一気にルカの報道で騒ぎ出した。当のルカは打撲程度の怪我ですんでいる。ただ、モデルという職業のため打撲痕が無くなるまでは休養を必要とする。精神的にもかなりきつい状態のため事件後は蓮のマンションにお世話になっている。
『本当にLUCaは可哀そうですよ。若いころからバース問題で苦しんで……』
普段は辛口のコメンテーターが憐れみの表情でルカの事を話している。かわいそう、か。ワイドショーをぼんやり眺めているとテレビ画面が急にオフになる。
「今は見ないほうが良い」
蓮がテレビのリモコンをテーブルに置く。その動きを目で追った。
「別に、俺は大丈夫だよ」
喋ると痛む頬に顔をしかめる。
「大丈夫なわけあるか。こんなに辛そうな顔をして『大丈夫』などと言わなくていい」
蓮の言葉に言い返したいのに何も言えずに蓮を見上げる。
「ほら、湿布をかえるから横になろう」
座っていたソファーに優しくルカを横たえる蓮。
「目を閉じて。見なくていい。ルカに触れているのは俺だ。怖くない」
毎回お決まりになった蓮の言葉。
そっと頬の湿布をはがして交換。着ている服をめくって身体の湿布とガーゼを交換。それほど痛いワケではない。ヒヤッとする程度。だけどルカはなぜか泣いてしまう。自分でなぜ泣いているのか理解できない。弱っている自分を蓮に見られたくなくて顔を隠す。
そんなルカを蓮は『よく頑張った』と褒めて撫でまわす。頭で理解できないルカの心が苦しい。涙だけが止まらなかった。
労わるように蓮が寄り添ってくれる時間を過ごした。ゆっくりとした時間。ルカには一か月にも一週間にも思えた。時間の感覚があやふやだった。
気が付くと顔の痛みが無かった。身体の痛みも消えている。涙は流れなくなっている。そっと服をめくってみれば青あざは消えていた。
「なぁ、ルカ。このままずっと俺の傍で生きて行くか? モデル、辞めてもいいから」
ルカの髪を撫でている蓮が唐突に言う。言われた意味が分からず蓮を見る。
「ルカはオメガである事に抵抗して生きて来ただろう。そうさせたのは俺だ。だからこそ今回のことは俺にも責任がある。ルカが成功したことで世の中のオメガは十分救われた。ルカは役割を果たしたと思う。もう、いいじゃないか。オメガとしての道を選んでも、いい」
蓮の言葉を頭の中で繰り返す。モデル、やめるのか? ルカの生きて来た道を? 心がざわざわする。
「何でそんなこと言うんだよ?」
「ルカが俺の知らないところで傷つく姿を、もう見たくない」
そっとルカの髪に顔を埋める蓮。モデルやめて蓮に囲われるってことかな。少し考えて首をかしげる。心の中で沸き上がる何かに灯がともる。
「いや。やめないよ。むしろ何があっても守り抜くくらいのアルファらしさを蓮が持て。蓮が楽な方に逃げるなよ。俺の番だろうが」
ルカの髪から顔を上げて驚き顔の蓮。少し見つめ合ってから蓮が笑い出す。
「……ぷはっ。ははは。ルカ、さすがルカだな!」
「なぁ、褒められている気がしない。バカにして」
口を開けて笑う蓮に軽くパンチを入れる。蓮の笑う顔を見たら心が明るくなった。蓮につられてルカも笑顔になる。笑うのが久しぶりだと思った。
「じゃ、復帰の会見でもするか?」
「う~~ん。会見とかしたことない」
「俺もルカと一緒に居るから。それならどうだ?」
以前の完璧な蓮の会見を思い出す。カッコイイ姿を思い出しルカの頬が緩む。
「うん。一緒にいてほしい」
「了解」
蓮がルカの手を取り愛おしそうに手の甲にキスをした。キザだな、と笑った。
『モデルLUCa、静養のため休養。暴行事件の後遺症は??』
新聞もネットニュースもテレビも一気にルカの報道で騒ぎ出した。当のルカは打撲程度の怪我ですんでいる。ただ、モデルという職業のため打撲痕が無くなるまでは休養を必要とする。精神的にもかなりきつい状態のため事件後は蓮のマンションにお世話になっている。
『本当にLUCaは可哀そうですよ。若いころからバース問題で苦しんで……』
普段は辛口のコメンテーターが憐れみの表情でルカの事を話している。かわいそう、か。ワイドショーをぼんやり眺めているとテレビ画面が急にオフになる。
「今は見ないほうが良い」
蓮がテレビのリモコンをテーブルに置く。その動きを目で追った。
「別に、俺は大丈夫だよ」
喋ると痛む頬に顔をしかめる。
「大丈夫なわけあるか。こんなに辛そうな顔をして『大丈夫』などと言わなくていい」
蓮の言葉に言い返したいのに何も言えずに蓮を見上げる。
「ほら、湿布をかえるから横になろう」
座っていたソファーに優しくルカを横たえる蓮。
「目を閉じて。見なくていい。ルカに触れているのは俺だ。怖くない」
毎回お決まりになった蓮の言葉。
そっと頬の湿布をはがして交換。着ている服をめくって身体の湿布とガーゼを交換。それほど痛いワケではない。ヒヤッとする程度。だけどルカはなぜか泣いてしまう。自分でなぜ泣いているのか理解できない。弱っている自分を蓮に見られたくなくて顔を隠す。
そんなルカを蓮は『よく頑張った』と褒めて撫でまわす。頭で理解できないルカの心が苦しい。涙だけが止まらなかった。
労わるように蓮が寄り添ってくれる時間を過ごした。ゆっくりとした時間。ルカには一か月にも一週間にも思えた。時間の感覚があやふやだった。
気が付くと顔の痛みが無かった。身体の痛みも消えている。涙は流れなくなっている。そっと服をめくってみれば青あざは消えていた。
「なぁ、ルカ。このままずっと俺の傍で生きて行くか? モデル、辞めてもいいから」
ルカの髪を撫でている蓮が唐突に言う。言われた意味が分からず蓮を見る。
「ルカはオメガである事に抵抗して生きて来ただろう。そうさせたのは俺だ。だからこそ今回のことは俺にも責任がある。ルカが成功したことで世の中のオメガは十分救われた。ルカは役割を果たしたと思う。もう、いいじゃないか。オメガとしての道を選んでも、いい」
蓮の言葉を頭の中で繰り返す。モデル、やめるのか? ルカの生きて来た道を? 心がざわざわする。
「何でそんなこと言うんだよ?」
「ルカが俺の知らないところで傷つく姿を、もう見たくない」
そっとルカの髪に顔を埋める蓮。モデルやめて蓮に囲われるってことかな。少し考えて首をかしげる。心の中で沸き上がる何かに灯がともる。
「いや。やめないよ。むしろ何があっても守り抜くくらいのアルファらしさを蓮が持て。蓮が楽な方に逃げるなよ。俺の番だろうが」
ルカの髪から顔を上げて驚き顔の蓮。少し見つめ合ってから蓮が笑い出す。
「……ぷはっ。ははは。ルカ、さすがルカだな!」
「なぁ、褒められている気がしない。バカにして」
口を開けて笑う蓮に軽くパンチを入れる。蓮の笑う顔を見たら心が明るくなった。蓮につられてルカも笑顔になる。笑うのが久しぶりだと思った。
「じゃ、復帰の会見でもするか?」
「う~~ん。会見とかしたことない」
「俺もルカと一緒に居るから。それならどうだ?」
以前の完璧な蓮の会見を思い出す。カッコイイ姿を思い出しルカの頬が緩む。
「うん。一緒にいてほしい」
「了解」
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