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Ⅴ リバウンド対策☆
⑧
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翌日から凛太朗はクラスの中を観察し始めた。
酒井が好きな人は誰なのだろう。酒井は凛太朗以外の誰と接触しているのだろう。そんな事ばかりを考えている。
文化祭の準備は順調だった。
クラスの皆の一体感が出て、楽しくワイワイしている。凛太朗はその輪に自分が入っていることが信じられなかった。怖いと思っていた陽キャ女子も陽キャ男子も良い人たちに思えた。
皆の協力で教室内の装飾品の制作は終了した。凛太朗の小物準備もほぼ終了だ。
制作をするとゴミが多く出る。このゴミを明日に持ち越すのは当番が可哀そうだ。
凛太朗は校舎内にあるごみ収集ボックスに捨てに向かった。校庭の隅にあるゴミボックスはコンテナになっている。
ゴミをコンテナに入れて戻ろうとして凛太朗は足を止めた。そこに理香子がいた。
「風見君、ちょっと話したくてぇ」
「あ、えっと……」
「ね、酒井君は好きな人とかぁ、いるのかな?」
凛太朗は答えに困って下を向いた。
「あ、いいよぉ。聞けなかったんでしょ? 風見君には荷が重かったかぁ」
あはは、と理香子が悪気無く笑った。凛太朗はとても笑う気分では無かった。
「それはもう気にしないでぇ。あのさぁ、せっかくだから、ちょっと聞いてよぉ」
用事が済んだなら立ち去って欲しいと思ったが、凛太朗は断ることなど出来ずに頷いた。
「中庭通って戻ろ。ベンチで一休み出来るじゃん」
凛太朗は真っすぐ教室に戻りたかったが理香子に従った。
「あたしさぁ、酒井君ってよく分からなくて。分からないから知りたくなるし。こんなに落とせない男っていなくてぇ」
本当に困っているのか分からない口調の理香子をチラリと見た。
茶髪の髪が陽に透けてキラキラしている。くるんと上向きに整ったまつげが瞬きのたびにパサパサ動く。ひざ丈のスカートがヒラヒラ揺れている。わざと胸元のボタンを大きく開けている。じっと見てはいけないような自制心が働き、慌てて目を逸らした。
「どぉして上手く行かないのかなぁ」
呟くような一言を静かに聞いた。理香子を見れば、悲しそうな顔をしてため息をついている。
「好きって、こんなに苦しぃんだね」
凛太朗の心臓がズキリとした。理香子の言葉が心に突き刺さった。
「風見君、ここ座ろ」
中庭のベンチは誰も座っていなかった。勧められるままに凛太朗はベンチの一番端に座った。ふと聞きたいことが凛太朗に浮かんだ。
「あの、酒井の、どこが良いのかな」
「えぇ? 風見君は一緒に居て酒井君の良さが分からないのぉ?」
この一言にムッとした。
「分かるよ。それは僕が誰より知ってる」
言ったあとでハッとした。理香子は怒ると怖い。つい反論してしまった。
「そっかぁ。いいなぁ」
弱々しく答える態度が意外で理香子を見つめた。理香子はぼんやりと空を眺めていた。
「酒井が振り向いてくれなかったら、どうするの?」
「んーー、片想いでぇ、終わり」
グイっと理香子が伸びをした。
「苦しいのも切ないのも、恋なんだって初めて知ったんだぁ。恋ってさ、エッチがゴールじゃないんだね。酒井君を好きになって初めて知ったかな」
エッチ、と聞いて凛太朗は急に恥ずかしくなる。こんな大人話は理解不能だ。
「えっと、僕にはよく分からなくて、ごめんなさい」
「風見君さぁ、正直者なんだね。変に励ましもしなくて、聞き上手って感じぃ」
優しく笑う理香子は怖くなかった。
「うん、もぉちょっと、がんばろ」
理香子がスッと立ち上がった。先に戻るね、と去っていく姿を見送った。
凛太朗は「好きは苦しい」という言葉を何度も噛みしめた。
凛太朗だって胸が苦しい。酒井に彼女ができて、二人で歩く姿を想像すると息が止まりそうになる。想像しただけで吐き気がした。
――これは、もしかして、僕は酒井の事が、好きなのか?
そう考えると胸の奥がカーーっと熱くなった。途端に心臓が早鐘を打つ。
(え? まさか、まさか。僕は酒井に恋しているってこと?)
ありえないことに混乱する。凛太朗の心臓が自分のものでは無いと思うほどバクバクと鳴り響いていた。
「凛太朗!」
声がして振り返れば酒井が息を切らしていた。
「どうした? 調子でも悪くなったのか?」
凛太朗は焦った様子の酒井をじっと見上げた。
(僕が、酒井を、好き? そうだ。僕は酒井を、好きなんだ)
自覚すると急に恥ずかしさと変な汗が滲み出る。息が上がりそうなほど鼓動が速い。
反応できずにいる凛太朗の額を大きな手が覆った。急な接触に身体がビクンと跳ね上がる。
「熱は、ないか。凛太朗、どっか痛い?」
真剣な顔で心配をする酒井の目線にドキドキする。
これまでどうして平気だったのかと思うほど酒井との距離が近い事に気が付く。凛太朗の顔を覗き込む酒井の唇が目に入る。薄いピンクの唇だ。
この唇が、凛太朗の唇を貪ったのだ。あのときの熱い肌を思い出して耐えられないほど心拍が上昇するのを感じた。
「保健室に、行こう」
酒井の様子に慌てた。このままではお姫様抱っこでもされそうだと思った。
「大丈夫だって。あの、酒井こそどうした?」
「どうした、じゃないって。ゴミ出し行って戻らないし。こんなとこ、いつも来ないじゃんか」
その通りだ。凛太朗はいつも中庭など立ち寄らない。
「うん。何となく、かな」
歯切れの悪い凛太朗の様子に酒井は怪訝な顔をした。
「皆、片付け終わって帰ったから。俺たちも帰ろ」
凛太朗はコクリと頷いた。
ふと見れば酒井の首に汗が見えた。きっと凛太朗を探してくれたのだ。そう思うと心がホワッとした。また心臓がドキドキと存在を主張した。
酒井が好きな人は誰なのだろう。酒井は凛太朗以外の誰と接触しているのだろう。そんな事ばかりを考えている。
文化祭の準備は順調だった。
クラスの皆の一体感が出て、楽しくワイワイしている。凛太朗はその輪に自分が入っていることが信じられなかった。怖いと思っていた陽キャ女子も陽キャ男子も良い人たちに思えた。
皆の協力で教室内の装飾品の制作は終了した。凛太朗の小物準備もほぼ終了だ。
制作をするとゴミが多く出る。このゴミを明日に持ち越すのは当番が可哀そうだ。
凛太朗は校舎内にあるごみ収集ボックスに捨てに向かった。校庭の隅にあるゴミボックスはコンテナになっている。
ゴミをコンテナに入れて戻ろうとして凛太朗は足を止めた。そこに理香子がいた。
「風見君、ちょっと話したくてぇ」
「あ、えっと……」
「ね、酒井君は好きな人とかぁ、いるのかな?」
凛太朗は答えに困って下を向いた。
「あ、いいよぉ。聞けなかったんでしょ? 風見君には荷が重かったかぁ」
あはは、と理香子が悪気無く笑った。凛太朗はとても笑う気分では無かった。
「それはもう気にしないでぇ。あのさぁ、せっかくだから、ちょっと聞いてよぉ」
用事が済んだなら立ち去って欲しいと思ったが、凛太朗は断ることなど出来ずに頷いた。
「中庭通って戻ろ。ベンチで一休み出来るじゃん」
凛太朗は真っすぐ教室に戻りたかったが理香子に従った。
「あたしさぁ、酒井君ってよく分からなくて。分からないから知りたくなるし。こんなに落とせない男っていなくてぇ」
本当に困っているのか分からない口調の理香子をチラリと見た。
茶髪の髪が陽に透けてキラキラしている。くるんと上向きに整ったまつげが瞬きのたびにパサパサ動く。ひざ丈のスカートがヒラヒラ揺れている。わざと胸元のボタンを大きく開けている。じっと見てはいけないような自制心が働き、慌てて目を逸らした。
「どぉして上手く行かないのかなぁ」
呟くような一言を静かに聞いた。理香子を見れば、悲しそうな顔をしてため息をついている。
「好きって、こんなに苦しぃんだね」
凛太朗の心臓がズキリとした。理香子の言葉が心に突き刺さった。
「風見君、ここ座ろ」
中庭のベンチは誰も座っていなかった。勧められるままに凛太朗はベンチの一番端に座った。ふと聞きたいことが凛太朗に浮かんだ。
「あの、酒井の、どこが良いのかな」
「えぇ? 風見君は一緒に居て酒井君の良さが分からないのぉ?」
この一言にムッとした。
「分かるよ。それは僕が誰より知ってる」
言ったあとでハッとした。理香子は怒ると怖い。つい反論してしまった。
「そっかぁ。いいなぁ」
弱々しく答える態度が意外で理香子を見つめた。理香子はぼんやりと空を眺めていた。
「酒井が振り向いてくれなかったら、どうするの?」
「んーー、片想いでぇ、終わり」
グイっと理香子が伸びをした。
「苦しいのも切ないのも、恋なんだって初めて知ったんだぁ。恋ってさ、エッチがゴールじゃないんだね。酒井君を好きになって初めて知ったかな」
エッチ、と聞いて凛太朗は急に恥ずかしくなる。こんな大人話は理解不能だ。
「えっと、僕にはよく分からなくて、ごめんなさい」
「風見君さぁ、正直者なんだね。変に励ましもしなくて、聞き上手って感じぃ」
優しく笑う理香子は怖くなかった。
「うん、もぉちょっと、がんばろ」
理香子がスッと立ち上がった。先に戻るね、と去っていく姿を見送った。
凛太朗は「好きは苦しい」という言葉を何度も噛みしめた。
凛太朗だって胸が苦しい。酒井に彼女ができて、二人で歩く姿を想像すると息が止まりそうになる。想像しただけで吐き気がした。
――これは、もしかして、僕は酒井の事が、好きなのか?
そう考えると胸の奥がカーーっと熱くなった。途端に心臓が早鐘を打つ。
(え? まさか、まさか。僕は酒井に恋しているってこと?)
ありえないことに混乱する。凛太朗の心臓が自分のものでは無いと思うほどバクバクと鳴り響いていた。
「凛太朗!」
声がして振り返れば酒井が息を切らしていた。
「どうした? 調子でも悪くなったのか?」
凛太朗は焦った様子の酒井をじっと見上げた。
(僕が、酒井を、好き? そうだ。僕は酒井を、好きなんだ)
自覚すると急に恥ずかしさと変な汗が滲み出る。息が上がりそうなほど鼓動が速い。
反応できずにいる凛太朗の額を大きな手が覆った。急な接触に身体がビクンと跳ね上がる。
「熱は、ないか。凛太朗、どっか痛い?」
真剣な顔で心配をする酒井の目線にドキドキする。
これまでどうして平気だったのかと思うほど酒井との距離が近い事に気が付く。凛太朗の顔を覗き込む酒井の唇が目に入る。薄いピンクの唇だ。
この唇が、凛太朗の唇を貪ったのだ。あのときの熱い肌を思い出して耐えられないほど心拍が上昇するのを感じた。
「保健室に、行こう」
酒井の様子に慌てた。このままではお姫様抱っこでもされそうだと思った。
「大丈夫だって。あの、酒井こそどうした?」
「どうした、じゃないって。ゴミ出し行って戻らないし。こんなとこ、いつも来ないじゃんか」
その通りだ。凛太朗はいつも中庭など立ち寄らない。
「うん。何となく、かな」
歯切れの悪い凛太朗の様子に酒井は怪訝な顔をした。
「皆、片付け終わって帰ったから。俺たちも帰ろ」
凛太朗はコクリと頷いた。
ふと見れば酒井の首に汗が見えた。きっと凛太朗を探してくれたのだ。そう思うと心がホワッとした。また心臓がドキドキと存在を主張した。
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