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Ⅰ 恋愛天使のリカル
⑨
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そして、リカルは彩香の『視える』力をそっと消した。
地上の者は、空に住む者など視えない方が良い。彩香は地上にしか意識が向かないタイプの人間で良かった。天使の存在を意識して空を見上げたら、気が狂ってしまうかもしれない。
「あれ? 彩香……」
咲良の驚愕の声がする。
「咲良……」
彩香の驚きを隠せない様子が伝わってくる。
(頑張れよ。これは、あの夜の礼だからな)
リカルは優しく彩香に声をかけた。もう聞こえていないのだろうけれど。
その時、優しい風が吹いた。その風を感じるたびにリカルの頬が緩む。
「おせっかいだな」
リカルの隣にルルが降り立つ。
「ルル。見ていたのか」
「まぁな」
チラリとルルを見れば、赤い瞳が咲良と彩香を追っていた。
リカルも彩香と咲良を見守った。互いにバツが悪そうにしているが、立ち去ろうとした咲良を彩香が引き留める。
必死に話しかける彩香に応えるように、困惑顔の咲良が彩香について行く。
そのまま二人は喫茶店に入った。
きっと一時間もすれば二人が優しい雰囲気に変わるはずだ。そう信じてリカルは二人から目を離した。
「おい、男の方はどうした?」
ルルはまだ二人を見つめたままだ。
「あぁ、離婚だろうなぁ。だけどさ、あれは、ちょっと、な」
「見に行かないのか?」
「いやぁ、あまり見たくない」
リカルが切った恋愛の糸。こじれた毛玉はトシの方に行った。これも運だろう、とリカルは思った。
ルルには言えなかったが、リカルはトシの様子を一度だけ見て来ている。その時に毛玉がトシに付いていることを知ったのだ。
咲良に離婚を突きつけられ、さらに彩香と別れたトシは、新たな相手を作るために必死になっている。
その姿は、もともと女性に依存する性質なのだろうと感じるほどだった。
しかし、恋愛の糸が毛玉のトシには魅力が無い。もう誰とも繋がることが出来ないから。
トシは周囲から「セクハラ君」と呼ばれ始めていた。
「そうか。ま、どっちがどうなろうと、どうでもいいけどな」
彼らの行く末が気になって見に来ていたくせに、ルルはそんな事を言う。外面と内面の違いにリカルはクスっと笑いをこぼした。
「そうだな」
恋愛の『拗れ』を解消したリカルの元にキラキラと神の報酬が舞い降りる。
リカルはそれを赤いリボンに閉じ込める。しかし、体は真っ黒なままだ。もとの真っ白にはなれなかった。
許しはまだ得られないのだ。真っ黒なままの身体を見つめてリカルは肩を落とした。
それを見守っていたルルの瞳が悲しそうに揺れる。
「リカル、早く許しが得られるといいな」
そう言うルルだって、黒のままだ。
リカルとルルは空を見上げた。高い空を。
――いつかあちらに行けますように。
そう願いながら、後悔しても消えることが無い自分の罪を想い、胸が痛んだ。
地上の者は、空に住む者など視えない方が良い。彩香は地上にしか意識が向かないタイプの人間で良かった。天使の存在を意識して空を見上げたら、気が狂ってしまうかもしれない。
「あれ? 彩香……」
咲良の驚愕の声がする。
「咲良……」
彩香の驚きを隠せない様子が伝わってくる。
(頑張れよ。これは、あの夜の礼だからな)
リカルは優しく彩香に声をかけた。もう聞こえていないのだろうけれど。
その時、優しい風が吹いた。その風を感じるたびにリカルの頬が緩む。
「おせっかいだな」
リカルの隣にルルが降り立つ。
「ルル。見ていたのか」
「まぁな」
チラリとルルを見れば、赤い瞳が咲良と彩香を追っていた。
リカルも彩香と咲良を見守った。互いにバツが悪そうにしているが、立ち去ろうとした咲良を彩香が引き留める。
必死に話しかける彩香に応えるように、困惑顔の咲良が彩香について行く。
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「おい、男の方はどうした?」
ルルはまだ二人を見つめたままだ。
「あぁ、離婚だろうなぁ。だけどさ、あれは、ちょっと、な」
「見に行かないのか?」
「いやぁ、あまり見たくない」
リカルが切った恋愛の糸。こじれた毛玉はトシの方に行った。これも運だろう、とリカルは思った。
ルルには言えなかったが、リカルはトシの様子を一度だけ見て来ている。その時に毛玉がトシに付いていることを知ったのだ。
咲良に離婚を突きつけられ、さらに彩香と別れたトシは、新たな相手を作るために必死になっている。
その姿は、もともと女性に依存する性質なのだろうと感じるほどだった。
しかし、恋愛の糸が毛玉のトシには魅力が無い。もう誰とも繋がることが出来ないから。
トシは周囲から「セクハラ君」と呼ばれ始めていた。
「そうか。ま、どっちがどうなろうと、どうでもいいけどな」
彼らの行く末が気になって見に来ていたくせに、ルルはそんな事を言う。外面と内面の違いにリカルはクスっと笑いをこぼした。
「そうだな」
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「リカル、早く許しが得られるといいな」
そう言うルルだって、黒のままだ。
リカルとルルは空を見上げた。高い空を。
――いつかあちらに行けますように。
そう願いながら、後悔しても消えることが無い自分の罪を想い、胸が痛んだ。
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