トゲだらけの心と癒しのストリートピアノ

小池 月

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晃の恋心②※<SIDE:タカギ アキラ(コウ)>

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「手は大丈夫?」
「うん。連続して弾いてないし、今日だけで二個もピアノ弾けた。すごく嬉しい」
演奏し終わり紅潮した顔。楽しさが潤から溢れている。潤は天才だよ。

「じゃ、少し休むためにホテルとったから向かおう」
「え? 今から?」
「うん。サプライズプレゼント」
驚きながらも素直についてきてくれる。

 高級ホテルのスイートルーム。部屋の代金が、と気にする潤に「今日は泊ろう。プレゼントだから」と伝える。夏休みとはいえ平日だから金額的には大丈夫、と。じゃ、せっかくだから楽しもう! と部屋を探検する。

「ジャグジー風呂だ! コウ、入ってみよう」
景色が一望できるように一面がガラス張りの露天風な風呂。天空風呂みたいだ。

「一緒に?」
「男同士だろ? 暑くて汗かいたし、夕焼けが綺麗だ」

抵抗なく服を脱ぐ潤。細いけれどガリガリじゃない。男性にしては柔らかいライン。白い肌。裸になると背筋を伸ばした姿勢の良さが際立つ。ドキドキして目が離せない。特にスッと伸びる首の美しさ。

「先に入るよ」
こちらを見て、ジャグジーに向かう。そのときに見えた前。しなやかな足の付け根の黒い茂み。思ったより普通サイズのモノ。勝手にささやかだろうと想像していた自分に笑えた。

潤の全身が、動きが色っぽく見える。陰毛以外の体毛が薄い。つるりとした肌。長い指。潤がシャワーをしている隙に服を脱ぎ、起き上がってしまっているコウのモノが見られないように、かけ湯をしてジャグジー風呂に入る。下からの気泡とジャグジーで湯の中がはっきり見えないのが救いだ。

「入れて~~」
丸い円形の風呂に入ってくる潤。近くでモロに見えてしまう潤の裸体。濡れた肌が光っている。直視出来ない。心臓が躍る。

「はぁ~気持ちいい~~」と目を閉じる潤。

横に座るのか! 鎖骨や少し触れる生々しい肌の感触に半起ちしていたコウのペニスがグンと起ちあがる。ヤバい。これは完全にヤバい。出来るだけ外を見てコウは気持ちを落ち着かせる。

「なぁ、コウはなんでピアノ弾かなかったの? もったいないじゃん。せっかく来たのに」
「俺はいい。俺、潤のピアノ聴ければいい。俺の音を鳴らしたら、綺麗な潤の音楽が汚れてしまう」

「え? 汚れるって、そんな風に思っていたの? ピアノの音を聴くと、どうやって生きて来たのか、どんな気分なのか何となく見えるよ。人の生き方や性格は優劣が付けられないだろ? それと音楽は同じだと思う。だから僕はコウのピアノも聴きたいけどな。コウのピアノ、僕のと似ていたし。できたら、その、またコウと連弾、したいし」

最後は少し照れながら話す潤。心臓がどきりとした。潤の音に似ていたのは、憧れていたから。コウは後ろめたくて一緒に弾けないだけだ。だけどコウの音を聞いてまた連弾したいと潤に言ってもらえた。嬉しくて裸なのも忘れて抱きしめていた。抱きしめてみて、あまりの心地よさに身体を密着させる。直接触れる肌の温度。心が高鳴る。

「あ、あの……コウ」
気が付いたら膝の上に潤を乗せて腕の中に閉じ込めていた。

コウの起立が潤に触れている。自然と腰をすり寄せるようにしていた。触れ合っている潤のペニスも起ち上っている。向かい合わせでコウが抱きしめているから隠しようがないのだろう。困っている潤の赤い顔。

「潤、抜き合いっこ、しよ?」
「えぇ? そんなの、するの? 友達同士で?」

「仲がいいとヤルこともある。男の生理現象だし」
「本当、に?」

動揺している潤の手をコウの肩に掴まらせる。コウに比べて三分の二サイズの潤の起立。互いのモノをコウの手で一緒に包み込む。

「あぁ!」
ぎゅっと握り、しごくと堪えきれない様子で潤の声が上がる。コウの顔のすぐ前で潤が目をつむって口を震わせて快感の呼吸を漏らしている。恥ずかしそうな紅潮した顔やポタポタ落ちる水滴。可愛くてもっと見たくて先端をくるくる撫でて割れ目を指で刺激した。

「あぁ! だめ、そこ、やめ、やめて!」
悲鳴のような可愛い声とカクカク動く腰。コウに擦り付ける動き。太ももに力が入っている。いやらしさに鼻血が噴き出そうだ。

「イっていいよ」
手の動きを早まると「ん~!」と全身に力を込めて湯の中に吐精する。気持ちよさそうな顔。汗が垂れる顎。荒い呼吸に動く薄い上半身。最高に興奮する。コウが手の動きを再開すると、小さな悲鳴。

「まって、今、出したから、もう、出たから!」
「俺がまだ。もう少し付き合って」
涙目でコウを見る潤。心臓が射貫かれる。すごい色気だ。自然と潤の口にキスをしていた。何か言おうとして開けた唇の隙間に舌をねじ込む。

「ぅぐ~~」
潤の声が発せられずに喉で消えていく。気持ちいい。夢中で口を貪り一気にしごき上げて吐精。コウが達する時、潤も二回目の絶頂を迎えていた。身体がビクビク跳ねていて、そのままコウにもたれかかって倒れ込む。

「潤!?」
「あ~~、うぅ、目が、回る……」
しまった。湯の中で二回出させてしまった。のぼせるのも仕方ない。

「ごめん! すぐ出よう!」
力の抜けた潤を抱き上げて風呂を出る。バスローブのままで、ソファーに座らせ水分を飲ませる。

「びっくりした……。男友達って、すごい付き合いがあるんだね……」
「あ、いや、普通キスはしない、かな。ゴメン。ちょっと暴走して」
「そうだよね。ノーカウントにしよ」

頭にぬれタオルを乗せてぐったりしたままの潤。言葉がグサリと刺さった。もう一度水分を取らせ、ソファーに潤を横にする。髪の水分を拭き上げているうちに、潤がスース―寝息を立てる。

今日は疲れたよね。身体が冷えないように掛物をして、頭を撫でる。潤はもともと幼い顔をしているけれど、こうして寝ていると高校生のよう。二十歳超えているとは思えなくて笑いがこみ上げる。

コウとのキスはノーカウントか。さっきの言葉を思い出しコウの心がズンと沈む。そっとピンクの唇を指先で触る。刺激に吐息が少し深くなる。何度かフニフニ触って潤に触れるだけのキスをした。胸が熱くなる。

(潤、大好きだ)
コウの身体を駆け巡るその思いに心臓がキュンと鳴った。


 翌週の東京旅行も楽しく過ごせた。東京の旅行は一泊で帰ったが、夜に何となくベッドで抜き合いっこをした。湯の中よりリアルに見えてしまうお互いの起立。恥ずかしそうに顔を赤くする潤が愛おしい。潤のピンクの起立を舐めたい衝動を抑えるのが大変だった。
 最高の夏休みだった。


 旅行後から夕食の時に必ず水族館で買ったマグカップを使う。シャチとペンギンが並ぶ幸せ。

夏休みから潤の部屋に泊まることがある。三日から四日に一度、抜き合いっこをする。恥ずかしそうだった潤が快感に任せて腰を動かすようになった。コウのも触って「コウ、気持ちいい?」って聞くようになった。うるんだ瞳と紅潮した顔にキスしたくて堪らない欲望がコウを支配していた。このまま、罪を隠したまま恋人になれるかもしれない。コウに淡い期待が芽生えていた。



 だけど、九月のある日。コウの目の前が真っ暗に塗り替わった。

 『高木晃』のことが、潤にバレた。

 心臓が氷つくような震えがコウの全身を駆け抜けた。



 怖くて潤に連絡できない。その日、夕方にいつもなら来るラインがこなかった。恐る恐る潤の部屋に足を向ける。部屋の外に、透明のビニール袋に入れられてシャチのマグカップとコウが使っていた食器類が出されていた。コウの部屋着もまとめて出されている。

潤の完全な拒絶の姿勢。苦しさと悲しみに涙がボタボタこぼれた。コウの身体の中心が割れそうなほど痛かった。
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