完全犯罪

おが

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完全犯罪

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「犯人はあなただ。」
青年が指を指して言う。
その指先が私の方を向いていた。
「私が犯人だって…?私は昨日犯人に襲われて足を刺されたんだぞ?今もこちらの学生さんに何とか車椅子に乗せてもらってやっと動ける状態だ。それなのに、3階で寝ていた館のご主人を殺すなんてできないじゃないか。」
私は用意していた様なセリフを、それとなく声に出した。
昨日この屋敷の主人を殺したのは私だ。
この青年は全てを知っているようだ。
「それに館の主人を襲った凶器も、私を刺した凶器も見つかっていない。私がやったという証拠も何一つ見つかっていないじゃないか。」
などど、推理小説の探偵が円滑に話を進めるための布石を着実に打っているようであった。
周囲の人達も青年の話を信じきれていないようだ。
しかし、青年は私の全てのトリックのタネを数学の問題を解く時のように証明していく。ここにはもちろん私がそのタネを巻いたことがわかる証拠まで完璧に示していく。
徐々に聴衆の目が私に集まっているのを感じた。老婦人の戸惑う様子、若くて乱暴そうな男の怒りを含んだ瞳、怪我をした私に親身に世話をしてくれた女子学生の怯えた表情。
小学生の時の、作文の発表とはまた違う、これまでに体験したことの無い視線の集まり方だ。
私は私と青年のやり取りが、人の視線を集めたことに興奮していた。
それは、屋敷の主人を殺した達成感をも凌駕していた感情だった。
青年の謎解きが全て終わると、私はまるで全て諦めたかのように私の中にある暗い過去を語り始める。
私と青年のやり取りに振り回されていた、聴衆は素直に私の話を聞き、同情を買うことが出来たようだ。
その後数時間ほどして、サイレンの音が近づいてくる。警官がやってくるまでの時間がもしかすると一番苦痛であったかもしれない。
私は手錠をかけられ、パトカーに乗り込む。申し訳なさそうに、そっと後部座席に乗り込んだ。
これで私の仕事は終わった。
無事報酬の1億は別れた妻と、病気の娘の所に届いている頃だろう。
車が走り出す前に窓の外に目を向けた。そこにはRPGゲームをクリアしたあとのような、青年の笑顔が私に向けられていた。
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