高齢の日の思い出

おが

文字の大きさ
上 下
1 / 1

未来

しおりを挟む
「いらっしゃいませー。」
いつもの青年の声が聞こえる。
ふと目が合うと青年は軽くお辞儀をした。
私はなんだか嬉しくて、杖の感触を感じる前に笑みが溢れた。
誕生日に娘が送ってくれた服を着て、ブランドに似合わない歩みを進める。
いつもの席に慎重に座り、注文をする。
今日はオムライスを頼んだ。
また、青年と目が合う。
彼も笑っているようだった。
ここには度々訪れる。
店員さんが親切で食べてるものが本来の味以上に美味しく感じる。
誰かの目を気にしながら食事を取るなんていったい何年振りになるのだろうか。
知人は少なくなる一方で、増えることはなかった。
自分の番が近づいていることを悟りながら、青年は私のことを覚えていてくれるのだろうか?
なんて考えたりもする。
レジで青年はいつにも増した笑顔で、「またお待ちしています!」
また嬉しくなった。
震える手を挙げて、彼に答えた。
それ以来、彼に会うことは無かった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...