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Main Story
王子様とホットココア
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ヒトシさんのうちに日頃から通いつめてるだけあって、ヒトシさんの家の中の変化には敏感に気がつく。
今日、いつものように戸棚からお菓子を取ろうとすると、お菓子の隣に見慣れないものを見つけた。
「……何よ、これ。……ココア?」
私はそれを手に取りながら、まじまじとそれを見つめた。市販のココアの粉だ。牛乳とかお湯と混ぜてココアをつくるやつね。ちなみに未開封。
そこまで考えて、やっぱりこんなものがここにあるのはおかしい、と思った。ヒトシさんは、私が置いていく甘いもの(お菓子とか、ジュースとか)には手を出さない。家にいるときは、大抵麦茶かブラックコーヒーを飲んでいる。(あんな苦いもの、よく飲めるといつも思う。)貰い物とかなら甘いものでも食べたり飲んだりしてるみたいだけど、自分から好んで食べたり飲んだりしてるところは見たことがない。だから、直接聞いた訳じゃないけど、ヒトシさんは、甘いものはあまり好きじゃないんだと思う。
だったら、なんでこんな甘いもの代表・ココアの粉なんかがここにあるの?
貰い物? でも、こんなココアの粉の袋なんか人に渡す人なんかいる? いないでしょ。
私は険しい顔のままうーん、と唸った。そして、嫌な考えが頭をよぎる。
──……女?
ヒトシさん、私がいるにも関わらず、この家に女連れ込もうとしてるわけ? じゃなかったら、自分が飲むわけでもないココアがここにあるわけないよね?
「……ヒトシさん、さいってー」
とにかく、ヒトシさんが帰ってきたら問いただしてやる。もし女がいようものなら、別れさせてやる。ヒトシさんは、私だけの王子様なんだから──!
すると、タイミングよく玄関が開いた。ヒトシさんは、買い物袋を手に下げ、私の姿を見るなり「あ、来てたのか」と言った。
「来てたのか、じゃないわよバカ!!」
「はぁ? いきなりどうした」
「これ! 何よ!」
私はヒトシさんの顔の前に、ココアの袋を突きつけた。ヒトシさんはキョトンとした顔で、それに目を向ける。
「……ココア」
「そうよ! ココアよ!!」
「ココアがどうしたんだ?」
「なんで! この家にココアがあるのよ! ヒトシさん飲まないでしょ!?」
私は畳み掛けるようにヒトシさんに言った。ヒトシさんはさっきと変わらないキョトン顔で、私の怒った顔とココアの袋を交互に見た。
「……え? だって、妃芽が飲むだろ?」
「え?」
ヒトシさんの予想外の返事に、今度は私が面食らった。
「この間天気予報で、週末は急に気温が下がるって言ってただろ? で、昨日買い物途中に目に入ったから、妃芽が温かいもん飲むかと思って……」
「は……」
開いた口が、塞がらない。
「で、冷蔵庫見たら肝心の牛乳が無かったから、さっき帰りに買ってきたんだけど」
ヒトシさんが指差す買い物袋からは、確かに牛乳パックが透けて見える。ヒトシさんは眉尻を下げながら、頬を掻いた。
「参ったな。飲まないのか?」
私はあんぐりと口を開けたまま、動けない。疑ってしまった自分が恥ずかしくて仕方なくなった。
バカ。私のバカ。女どころか、ヒトシさんてば、私のこと考えて──。
「の……っ、飲むわよ、バカーー!」
「何で怒ってるんだよ!?」
「怒ってないわよ、バカ! 飲むんだから、ヒトシさんも一緒に飲みなさいよ!!」
「何だよその理屈!?」
私は赤くなった頬を隠すように、ヒトシさんから袋を奪い取って、マグカップ二つに、牛乳を注いだ。
今日、いつものように戸棚からお菓子を取ろうとすると、お菓子の隣に見慣れないものを見つけた。
「……何よ、これ。……ココア?」
私はそれを手に取りながら、まじまじとそれを見つめた。市販のココアの粉だ。牛乳とかお湯と混ぜてココアをつくるやつね。ちなみに未開封。
そこまで考えて、やっぱりこんなものがここにあるのはおかしい、と思った。ヒトシさんは、私が置いていく甘いもの(お菓子とか、ジュースとか)には手を出さない。家にいるときは、大抵麦茶かブラックコーヒーを飲んでいる。(あんな苦いもの、よく飲めるといつも思う。)貰い物とかなら甘いものでも食べたり飲んだりしてるみたいだけど、自分から好んで食べたり飲んだりしてるところは見たことがない。だから、直接聞いた訳じゃないけど、ヒトシさんは、甘いものはあまり好きじゃないんだと思う。
だったら、なんでこんな甘いもの代表・ココアの粉なんかがここにあるの?
貰い物? でも、こんなココアの粉の袋なんか人に渡す人なんかいる? いないでしょ。
私は険しい顔のままうーん、と唸った。そして、嫌な考えが頭をよぎる。
──……女?
ヒトシさん、私がいるにも関わらず、この家に女連れ込もうとしてるわけ? じゃなかったら、自分が飲むわけでもないココアがここにあるわけないよね?
「……ヒトシさん、さいってー」
とにかく、ヒトシさんが帰ってきたら問いただしてやる。もし女がいようものなら、別れさせてやる。ヒトシさんは、私だけの王子様なんだから──!
すると、タイミングよく玄関が開いた。ヒトシさんは、買い物袋を手に下げ、私の姿を見るなり「あ、来てたのか」と言った。
「来てたのか、じゃないわよバカ!!」
「はぁ? いきなりどうした」
「これ! 何よ!」
私はヒトシさんの顔の前に、ココアの袋を突きつけた。ヒトシさんはキョトンとした顔で、それに目を向ける。
「……ココア」
「そうよ! ココアよ!!」
「ココアがどうしたんだ?」
「なんで! この家にココアがあるのよ! ヒトシさん飲まないでしょ!?」
私は畳み掛けるようにヒトシさんに言った。ヒトシさんはさっきと変わらないキョトン顔で、私の怒った顔とココアの袋を交互に見た。
「……え? だって、妃芽が飲むだろ?」
「え?」
ヒトシさんの予想外の返事に、今度は私が面食らった。
「この間天気予報で、週末は急に気温が下がるって言ってただろ? で、昨日買い物途中に目に入ったから、妃芽が温かいもん飲むかと思って……」
「は……」
開いた口が、塞がらない。
「で、冷蔵庫見たら肝心の牛乳が無かったから、さっき帰りに買ってきたんだけど」
ヒトシさんが指差す買い物袋からは、確かに牛乳パックが透けて見える。ヒトシさんは眉尻を下げながら、頬を掻いた。
「参ったな。飲まないのか?」
私はあんぐりと口を開けたまま、動けない。疑ってしまった自分が恥ずかしくて仕方なくなった。
バカ。私のバカ。女どころか、ヒトシさんてば、私のこと考えて──。
「の……っ、飲むわよ、バカーー!」
「何で怒ってるんだよ!?」
「怒ってないわよ、バカ! 飲むんだから、ヒトシさんも一緒に飲みなさいよ!!」
「何だよその理屈!?」
私は赤くなった頬を隠すように、ヒトシさんから袋を奪い取って、マグカップ二つに、牛乳を注いだ。
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